壱ツ
何よりも大切なもの。
それは、父から受け継いだこの店を、守り繋げていくことだった。
結局、自分が可愛いだけなのだろうことはわかっている。
代々続いてきた店であるから、私の代でなくなってしまうのが、怖くて堪らないのだ。
これらの努力も全部、必死の自己防衛であるのだった。
当初こそ素直にやってはいたもので、気付いてはいなかったけれど、正当な手段を取っていては、正々堂々と闘っていては、今の時代でやってはいけない。
大きく変革を起こす必要があった。
それに気付き始めた頃には、自身の醜さにも気付き始めてしまっていた。
だれにも覚られてはいけない。
本当ならば、自分でさえも知ってしまいたくなかった気持ちを、押し隠して笑顔を浮かべていた。
ほとんどの人は騙せていることだろうが、たった一人、私のことを疑っている人がいることにも、すぐに気付いていた。
見ていてくれるのは嬉しいことだが、なんとも迷惑な話である。
一番、知られたくない人が、勘付いてしまおうとしている。
汚れた世界など見ないでもらいたい、ピュアな私の弟だ。
「優しくて頑張り屋さんなお前が無理してしまわないように、しっかり監視させておくからね。そして、兄がきっと、そんなことをしなくたって、お前が無理をする必要のないようしてあげるから」
放っておくと、すぐに頑張ってしまう弟なので、釘を刺しておく。
弟に、無理をしてほしくない気持ちもあった。
しかし主としてあったのは、私を見ないでほしいという、弟の心配とはかけ離れた場所にある想いなのであった。
根底に根付いて私を動かそうとする。必死で押さえつけているけれど、覗き込まれたら簡単に見えてしまう場所にまで来ている。
見ないで。見ないで。私を見ないで。
見られたくなくて、必死で取り繕った。
完璧な私を演じて、余裕な笑みを浮かべた。余裕だと思えば、余裕だった。
騙そう騙そうと思ううちに、騙そうと思うところさえ無意識になり、騙すという目的を達せられてしまっていたのだろうか。
それはなんとも虚しいことなのであった。




