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異世界不本意戦争記  作者: 枯木人
立身編
8/102

自己紹介だけど…

 店を出てスラムの通りに出ると何か柄の悪い男たちに囲まれた。ラッキー!臨時収入か?全く…幸運補正様様だな!


「へっへっへ…痛い目見たくなかったら大人しくそこの女と金を出しな…」


 男たちは拳を鳴らしたり刃物を出したりして俺たちを威嚇してくる。…拳鳴らしたからって強いってわけでもないし、刃物持ってる手は握りが甘いし…俺からしてみると弱いですよ!って言ってるのと変わらないんだが…

 まぁいい。あんまり金持ってないから身包み剥ごう。あー…あれだ、たまには人の痛みを知れって意味でやるわけで、俺は盗賊と言うわけじゃな…来たな!


「ビビって声も…ゴギュッ」

「あぁゴメンね。刃物持って近付いて来るんだから斬られるかと思ってやっちゃった。」

『…なんて言ってるか分かんないけどもの凄い悪人の顔してるね…悪魔でも引くよ…』


 悪魔少女が俺を見て引き気味に言ってきた。失敬な。


「てめぇ!」


 お、拳鳴らしてたやつが来たが…遅いってば。それに足元がおぼついてないし…酔ってんのかな?ほれ。


「うおっ…」


 軽く足払いをかけてやると簡単にこけやがった。俺は追撃でそいつの背中を踏み抜く。…ふぅ。古仙式使うまでもないな。…あ、逃げようとしてるな。重心が下がってるのが分かるぞ…?


「待ちなよ…」

『怖っ!』


 悪魔少女うるさい。…俺今なるべく爽やかな顔だったと思うんだが…あ、逃げてる奴らが俺の顔見て絶望的な表情浮かべてる…あれ?おかしいな。


『悪魔も真っ青ね~』


 身包み剥ぎ終った俺は幼女とあまり明るくない顔で喋るという松田らしくない松田に声を掛けた。


「…ちょっと休憩していかないか?話もあるだろうしな。」


 臨時収入も入ったことだしな。



















 俺が選んだ店はスラムから出た所のしばらく進んだ場所。そこにある喫茶店のような場所だ。軽く腹も減っていたことだし飯も頼む。


「…さて、話を聞こうか。」

『ね~私にもわかるように喋ってよ~』

『俺的に言葉を分けてるつもりはないんだけどな…』

『…これ疲れるんだけど仕方ないか…【翻訳魔法】』


 悪魔少女がそう言うと彼女の耳と口に淡い光が纏われて吸収されていった。


「…伝わる?」


 悪魔少女は鈴を転がすような声で前にいる二人に確認を取る。そして二人は頷いた。


「じゃあ松田。お前さっきからどうしてそんな状態なんだ?いつものお前なら幼女ヒャッハー!とか言っててもおかしくないのに…」


 俺はまず気になっていたことを尋ねる。すると松田は隣に座っている幼女の肩に手を置いた。くっ…通報したい…


「…まずこの子は今幻術をかけている状態なんだが…平塚。見てわかるか?」


 松田がそう言ってくるので俺はじっとその子を見てみる。…言われてみれば何か顔付近と…頭の上に違和感が…


「…うん。分かるみたいだな…そう。この子は人間じゃない。ラパノールって言う絶滅したと言われる獣人だ…」


 重苦しい雰囲気で言うけど…何でお前知ってんの?それ必須の知識外だからインプットされてないよね?…え?もしかして俺だけ知らないとか…?


「ラパノール?」


 あ、隣の悪魔少女の反応からしてこの世界の住人でも知らないみたいだ。…何で知ってるんだよ!


「あぁ…大昔に強力な魔力を操ったのにもかかわらずその愛くるしい見た目から人間の奴隷となるように大量に捕まえられて絶滅したと言われる…」


 だから何でお前が知ってるんだよ!


「…それが何であんなところに?」

「…そこからは儂が説明しようかの…」


 悪魔少女の言葉に松田の横にいた幼女が口を開いた…って儂?


「儂等は森に隠れ里を作りひっそりと生きのびておったのじゃ。しかしそこにもの、人間が開発をしに来始めたのじゃ。気付いた時にはかなり接近しておっての。里ごとかくれるには時間が足りず、儂等は一計を案じたのじゃ。」


 …この話こんな所でやっていいのか?


「家畜の一匹に里の皆で魔力付与を行い、里ごと壊滅させる…と。そして逃げ遅れた役として儂が残り、人に連れて行かれ、説明する。…人は原因が不明だと調査し始めるからの。それで人間に化けて来たんじゃが…来た人間が悪くての。この様じゃ。」


 …大変だったんだろうな。


「そして秋坊に変装を見破られてここに至るってことじゃな。」


 …秋坊?秋坊って…いや、松田か?…確かに秋彦あきひこって名前だったと思うが…


「なぁ平塚。…俺的にロリババアの定義に関してはまだはっきりしてないんだが…どうすればいいと思う…?」


 …何を言ってるんだ?


「秋坊。もう遮音結界は解いたから大声出すでないぞ?」


 あ、結界張ってたんだ。


「…坊呼ばわりはちょっと…でもお兄ちゃんは…無理があるよな…」

「そうじゃな…あと200年早く生まれておればぎりぎりお兄ちゃんでも問題ないかのぅ…」


 あぁ…そう言うこと…


「へぇ~何か大変だったみたいね~ところでご主人?私即効で買ってもらったのはいいけどまだ自己紹介すらしてないんだけど?」

「あぁ…そう言えばそうだったな。」

「どうすれば…幼女というものはまだ発展途上にあることをコンプレックスに思いながらも健気に成長を夢見るものでその青い果実がもつ無限の未来に思いを馳せることによってロリータというものは―<中略>―いやしかしこの姿自体でも…」


 つまりこいつはこの人のバックグラウンドに気を使ったんじゃなくて自身のアイデンティティが崩壊しかかっててこんな状態だったわけか。くっだらねぇ。


「…あー…自己紹介するか。まず俺は平塚 治樹はるき17歳だ。今は城に仕えてることになるな。よろしく。」


 確か17歳のころの体に設定されてるはず。簡単だけどこれでいいか。…で、隣でアイデンティティが崩壊してる奴の紹介は…俺がやっとくか。


「で、こいつは松田 秋彦。同じく17で城に仕えている。…ロリコンっていう不治の病に侵されてる変態だけど根は良い奴だから大目に見てくれ。」

「なら次は儂じゃの。儂はピオニエ・ファム。189歳じゃ。不老じゃから若く見えると思うが一応村長をしておった。よろしく頼むぞ。」


 …189か~…こりゃどうしようもないな。逆にここまで来られると清々しさを感じるね。


「で!私ね!ディアーブル・デシュ2歳!…じゃなくて、16歳!ディアって呼んで!」

「ちょっと待て、2歳と16歳をどうやったら間違えれるんだ。」

「素が出たんじゃろ。…何、悪魔族は1歳過ぎれば200歳まで殆ど変らんからのぅ。年齢位ならいくらでも詐欺できるじゃろ。」


 …あんたが言うな。とは流石に言わないよ?


「あんたが言うな!」

「言いやがったし…で、ディア。…どっちが本当の年齢だ?」


 事と次第によっちゃあ大変なことになる…


「う~…本当のこと言っても檻に帰さないでよ?」

「流石にそこまで鬼じゃない。」

「さっきの見てるとそう思えないから…」


 不安げにしているディア。やばい滅茶苦茶可愛い。もう全部どうでもいい。


「…2歳。」

「ん?」

「ホントは2歳!奴隷商には大人って見栄張ったけど2歳よ!」


 お巡りさん俺です。




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