買ってしまった…
「…なぁ平塚。今から金稼ぎに行けると思うか…?」
城を出ると夕日が目にまぶしかった。これから暗くなるこの世界に外灯という概念はない。―――一部の場所を除いては。だが、そこでこいつが働くことは無理だろう。俺はそう思って松田に言ってやった。
「無理だな。今日は宿に泊まろうか。え~とどこかな?…何してるんだ行くぞ?」
「おぉっ!マジか!ありがたいっ!」
立ち尽くしていた松田に声を掛けると何故か喜んだ…何をそんなにありがたがっているんだ?
「いや~俺は野宿かと思ってよ~なんせ無一文だからな!」
「…無一文?お前さっき金貰ったの忘れたのか?」
やべ、頭殴りすぎたか?
だが俺の心配など余所に松田は不思議なものを見る目で俺を見て来た。
「?あれはお前の金だろ?」
何を当然のことを…と言った風に言ってくる松田。…こういうところ嫌いじゃないんだよな。
「半分やるよ。どうせあぶく銭だしな。」
「…そう言ってくれるなら借りておくよ。後で白金200枚にして返す。」
「多すぎだろ…」
苦笑しながらも金貨100枚が入った袋を二つ渡しておく。そして俺たちは宿を探し始めた。
「…何か選択肢に出てないか?安宿に行くとか…」
道が分からないので松田に訊いてみる。すると何やら考え込んでいた。
「…松田?」
「…今凄い考えているんだが…宿に泊まると奴隷幼女を買うって…どっちが…いや流石に好意から貸して貰ってる金で…」
凄いアホなことで悩んでいた。…まぁここは俺が折れてやるか。代わりに魔法について教えてもらおう。
「見るだけ見てみればいいんじゃないか?」
俺の提案に目から鱗が落ちたような顔をする松田。こいつ…やっぱり肝心なところが抜けてるんだよな…
そんなことを思いながら俺たちは松田の選択肢に従って動いていた。
「…ここか…?」
「…みたいなんだが…」
松田の選択肢に付いて来た結果、俺たちは悪臭が立ち込め、道にものが散乱している、薄汚い恰好をした人々が大勢いる通りに出た。これを見ればここがスラムであることは容易に想像できる。
「…まぁ俺らが持っている金で買えるって位だからそんなもんか。」
俺は妙な所に納得する。
「…とりあえず中に入ろう。」
松田に促されて中に入ると劣悪な環境檻の中に入ったで人々とガラの悪そうな男や悪趣味な金持ちの格好をした男がいた。
檻の中の人々は顔を伏せたままで、中にいた男たちは俺たちを一瞬見てそして顔を逸らした。
「…なぁ…」
俺が周りの人間の観察をしていると松田が俺に声を掛けて来た。一体なんだろうか。松田の方を見ると彼は一心に何かを見ていた。
「…あの子…おかしくないか…?」
松田の指す方向にはこの場には似つかわしくない小綺麗な美少女がいた。そして俺はその美しさに思わず唾を飲んだ。
流れるような銀色の髪、射抜くような鋭い琥珀色の目、それらが愛らしい顔立ちにギャップとしてマッチしている。
体はここでの暮らしで痩せているのだろうが女の子らしい小柄な体型で庇護欲を駆り立てる。
…っていかんいかん。今は若返ってるとはいえ元30代。こんな少女相手にこんな気持ちを抱いたとなれば松田と同類ではないか…
「お気に召しましたかな?」
「ぅぉ…ええまぁ少し気になったので。」
思ったより気をとられていたみたいでかなり近くに男が接近していたのに気付かなかった。その所為で微かに声を漏らす。
嫌な感じに太った男はニタニタ笑いながら揉み手をして俺に言ってきた。
「あちらは悪魔族の少女でございます。人の言葉を解さないのでお値段の方は勉強させていただいてますよ。…勿論処女でございます。」
「…因みにいくらだ?」
あくまで興味があっただけだ。悪魔族の少女が可愛いとかそんなんじゃない。あくまで興味が…やべぇテンパりすぎてなんてつまらないことを言ってたんだ俺…
俺が妙なことを考えていると店側の人は何か考えてから言った。
「相場では白金20ですが…こちら初めてのお客様で、言語教育も済ませていないので…奴隷手続含めて白金18でどうですかな?」
…安いのか高いのかわからん…だが「幸運補正」がついてるんだし…安い感じはする…ってはっ!買う気になってた!いかんいかん…俺は犯罪者じゃ…
「オイ親父こいつそんなに安いのかよ。」
ガラの悪い男が俺に話しかけてきた人物に半ば怒鳴っているのではないかと思える口調で声を掛けてきた。店側の人物は少し困り気味で言葉を返す。
「えぇ。…ですが新規顧客の方ですから。お得意様のヴォルガ様の方にも少し割り引かせてもらいますが…白金19ほどに…」
「へぇ。それでいいぜ。」
「待った!俺が先に交渉をされてたんだから順番は守ってもらおうか!」
やっちまったー!あぁ…もう…今月金20枚で過ごすことになる…宿代いくらだろ…
「ありがとうございます!ヴォルガ様の方には別の奴隷を安くさせていただきますね!」
満面の笑みを浮かべる奴隷商。ヴォルガの方も別に不満げな顔はしていない。こうなることを見越していたのだろう…嵌められたっ!…まぁ?でも?買って損はしてないだろうし?いいけどね?
「…お前買ったのか…」
おっと松田を忘れていた。松田は俺が買った美少女の横にいる子供たちの檻の中の一人の幼女をじっと見ていたようだ。
「…俺も買っていいか…?」
おまわりさんこっちです!と叫びたいところだったが今それをすれば俺も捕まる。…と思っていたが何やら真面目な表情だ。
「…どうした?」
「…ちょっとな。詳しくは後で説明する。おっさん。この子はいくらだ?」
松田は幼女ひゃっほい!とか言ってそうな場面なのにあまり嬉しくなさそうに奴隷商を呼んだ。
「こちらですか…呪い持ちですし、かなり幼いですから…白金2枚といったところですかね。」
「そうか。」
結果俺たちは揃って奴隷を買うことになった。
「では、契約となりますが…お客様方は他に奴隷をお持ちですかな?初めての場合ですと説明をさせていただきますが…」
「いや、いい。」
知識として知っているからな。奴隷のどこかに契約の証としてアクセサリをつける。それに主人となる方が血をつけるか魔力を流すかで契約完了っと。
「…慣れてますねぇ。これからは是非当商会をご贔屓に…」
サクサク進めて魔力を流していると何かたくさん奴隷契約をしてきたと思われているみたいだ。…まぁ別にいいけどね。
『ちっ…この魔力じゃ…逃げれないなぁ…』
『…まぁ…何か悪いな。』
悪魔少女の悔しげな声が聞こえて来たので俺は何か居たたまれなくなって声を返した。すると悪魔少女は目を見開いた。
『あれ…?私の言葉分かるんだ…へぇ…魔力は人間だったから…おにーさん【悪魔憑き】?』
『それが何なのかは知らんが一応人間だ。…というか今言葉変わってるのか…』
全然気づかなかったおそらく宝玉の恩恵だろうな~っと。
「悪魔語を理解できるのですか!なるほど…貴族の方のお忍びですかな?おっと分っておりますとも。違いますよね。」
何か分かった顔してるけど別に貴族とかじゃないからね。まぁ話が進むからそれでいいけど。
そんなこんなで松田も貴族とか思われたりしたが手続きはあっさりと片付いた。




