第2話 運命の相手が男で勇者が距離バグなんだが
男は迷いなく答えた。
「探していた。
やっと会えたな」
「は?」
「運命の相手」
「いや、男はありえんから。
悪いが、俺はノーマルだ。帰ってくれ」
「そんなこと言うな」
男は即答した。
「一応言っておくが、俺もノーマルだ」
「なら、何故BL展開なんだ」
「そこまでは知らん」
「神様が決めたんだろう。
何かのバグなのかもしれんな」
男は少し笑った。
「……認めるな」
「本当は、俺を待っていたんだろう?」
「待ってない」
「照れるな」
「照れてない。通報するぞ」
「俺はガイアス=ヴァルド。勇者だ」
名乗りながら、男は一歩近づいた。
「ずっと探していた。
夢にまで見た。お前のことを」
「いや、夢に出てきても困る」
「逃げる。
そして王子みたいな顔。
お前しかいないだろう。魔物占いそのものだ」
「なんだよそれ」
「それより、お前の方が王子みたいな顔してるだろ」
「そうでもないが。照れるな」
「お前が照れるのかよ」
「ずっと探していた。
夢にまで見た。お前のことを」
「いや、夢に出てきても困る」
「お前が呼んでくれたんだろう?
感謝する」
距離が、また縮まる。
「で、お前の名前は?」
「レイン=アルヴェル。魔術師だ」
「何?」
勇者の目がわずかに見開く。
「レイン=アルヴェルだと?
聞いたことがあるぞ」
嫌な予感がした。
「BL魔法使いだろう」
「違う。
天才魔術師だ」
……帰ってくれないタイプだ、こいつ。
「いや、運命の人はどうでもいいからさ――
いや、よくないな。
女の子の運命の人がいいんだ。
だから俺は恋愛攻略で忙しい」
「BLなのにか?」
「だから違う」
「お前こそBLなのか?」
「違う。俺は運命の人がいいだけだ」
「そう言われても困る」
勇者は一歩近づいた。
「とりあえず運命なんだから、仲良くしよう。
さあ、握手だ」
差し出された手が近い。近すぎる。
「……なんか気持ち悪くないか?」
「大丈夫だ。
トイレの後は必ず手を洗っている。清潔だ」
「それなら一安心だな」
「だろう」
――会話が成立している気がするのが一番怖い。
俺はそっと距離を取った。
一歩。
もう一歩。
近い。
「離れろ」
「なぜだ?」
「近いからだ」
「運命の距離だ」
意味がわからない。
「俺はな、普通の恋がしたいんだ」
「知っている」
「知ってるのかよ」
「だから来た」
「来るな」
勇者は真顔だった。
冗談じゃない顔だ。
本気の顔だ。
まずい。
こいつ、本当に俺を運命だと思っている。
「なあ」
「何だ」
「帰らないのか?」
「帰らない」
即答だった。
理由くらい考えてから言え。
「勇者って忙しいんじゃないのか」
「忙しい」
「じゃあ帰れ」
「だが運命の方が優先だ」
優先順位どうなってるんだ。
「魔王とかいるだろ」
「いた」
「いた?」
「もう討伐した」
「は?」
勇者は首を傾げた。
「騒がしかったから斬った」
沈黙。
「……理由それだけ?」
「それだけだ」
――世界ってそんな軽い感じで救われるのか。
「結構楽しく話していたんだが、あまりにも騒がしくてな。
どうにも納得いかなかった。
だから、斬った」
「理由が近所迷惑の苦情レベルなんだが?」
「静かになった」
「そりゃなるだろ」
「じゃあ、何でモンスターとかいるの?」
「あれはきっと、背負ってるものを解放するためだ」
「それにモンスターは悪いやつばかりじゃない。
いいやつもいる。」
「森の仲間たちはいいやつが多いんだ。
鬼ごっこもできるしな」
「鬼ごっこ?」
「ああ。最高だぞ」
「健康的だ」
「それにいいやつが多い。
アイテムくれるしな」
「アイテム……」
沈黙。
「待て」
「何だ」
「ストーカーと似てないか?」
「ああ」
「モンスターはストーカーしない」
「だから、大丈夫だ。多分」
「多分かよ」
「変な奴もいるけどな」
「それに恋愛相談だってしてくれるんだ」
「誰が?」
「スライムに決まってるだろう」
「スライム!?」
――俺の恋路、前途多難すぎるだろ。
第2話読んでいただきありがとうございます。
勇者が登場しましたが、たぶん思っていた勇者とは違うと思います。
作者も書いていて「これでいいのか?」と思いながら、そのまま進めました。
一応言っておきますが、二人ともノーマルです。
ただ世界の方がバグっている可能性があります。
あと、魔王はもういません。
理由はご覧の通りです。
そしてなぜかスライムが恋愛相談に乗ってくれる世界です。
この先どうなるのか、作者も少し楽しみです。
次回もよろしくお願いします。




