二人で走らぬ理由
草木ドライブインで昼食の後、駐車場に行き屯する。
赤城大沼湖畔のJAF公道レースと筑波サーキットの他、群サイの走行会まで加わって、三条神流のレーススケジュールはかなり過密になった。
「私達は止まる事は殆どない。」
と、恵令奈は冷たい目で、三条神流に罵声を飛ばした奴等を見ながら言った。
「あいつらは、ただ騒音まき散らして、やたら燻るクセしてスピードの出ないオンボロ列車。そのクセして、特急を名乗ってイキり散らす。高い料金ふんだくってね。どこかの「スワルウォオーーーーー!!!あかぎ」のように。」
松田彩香も鼻で笑った後、三条神流の手を握る。罵声を飛ばした奴等に見せ付けるように。
「カンナは違う。カンナは本当の特急列車や新幹線。そうね、ミニ新幹線こと、E3系が一番近いかな。あいつらが走る場所も走るけど、あいつらが走れない場所にも行ける。それは、在来線も走り、新幹線も走るミニ新幹線の姿にも見える。」
と、松田彩香は言う。
「でもさ、ミニ新幹線の在来線区間の線路幅、新幹線規格。まぁ秋田新幹線は3線軌条でもあるから、あながち間違いではないかな?」
と、加賀美。
「銭湯行くっしょ?」
と、玲愛が聞く
「ええ。上の湯に。行くならちょっと乗り合わせにしないとまずい。」
「私が送り迎えする。」
加賀美が言った。だが、三条神流はまた不満を露わにする。
「俺、アヤと二人で行きたい。」
と、溜息交じり。
「ダメ。」
松田彩香は一蹴する。
「今のカンナでは、また奴等に変な噂流される。私と二人きりでデートしたいなら、結果を出せ。」
松田彩香は、なぜ三条神流と二人でデートしないかと言う理由を言った。
三条神流は「分かったよ。」と言った。
まだ、何の話か分からぬ話をしている奴等を尻目に、松田彩香、三条神流含む6台の隊列は、草木ドライブインを出発する。
一応、ナガト達や、霧降、ラモット、マイノータには手を振ったのだが、その他、罵声を飛ばした奴等は「ふん」と言う反応をしている。
「相手にするな。」
と、松田彩香が吐き捨てる。
「花輪で撮影してからって思ったけど、やっていたらまた奴等に出くわす。桐生まで行って、咲や恵令奈達を待つ。」
「その間は―。」
「ええ。二人で居られる。」
本当は、松田彩香が一番、三条神流と二人でデートしたいのだ。
だが、自分だけではなく、三条神流も変な目で見てくる奴等が居る以上、それが出来ない。だから、人目に付きにくい深夜から早朝に、人目に付きにくいラブホに三条神流を連れ込み、レイプするしかないのだ。
わたらせ渓谷鐡道の沿線を走り、大間々で加賀美、日菜子、恵令奈、玲愛が一旦別れ、短い三条神流と松田彩香の二人きりの時間だ。
渡良瀬川に沿って走り、桐生の町はずれの水道山へ向かう。
水道山は、吾妻山の登山口で、標高200mの水道山公園からは、桐生の町を見降ろせる他、向かいの茶臼山、そして遠くに東京スカイツリーも見える。
自販機でお茶を買って、それを飲みながら、二人でそんな景色を眺める。
「私だって、カンナと二人で居たい。」
と、松田彩香が本音を漏らした。
「でもね、あいつらの存在がある以上、それが出来ない。」
「仮に、俺が結果残したとしても、あいつらは余計に恨めしく思うかもしれねえよ。」
「それでも、何もしていないよりは全然いい。だから―。」
「分かった。ただ、俺はお前をレイプするような度胸は無い。恐いから。」
「カンナは、根が優しいからね。」
と、松田彩香は僅かに微笑んだ。




