その10 少女の真相
――焚き火の火が小さくなり消えると、アカリ苔の薄っすらとした青白い光が河原を照らす。川は静かに流れ、魚の跳ねて水面を叩く音が、遠くからでもよく聞こえた。
千馬は目をつむり、ゆっくりと鼻から空気を吸い込み、静かに吐き出す。
「ここは落ち着けて、良いところだね」
「ん。だが樹海の河原はどこもこんな感じだな」
「……そうだったんだろうね。俺はいつも先を急いでいたから、景色を見る余裕を忘れていた……」
千馬は、両膝を抱え、下を向いたままのティサリーを気にかけ、打ち解けようと話しかける。
「ティサリーもここが好き?」
「……わからない」
そう言うとティサリーは、肩の白い鱗をさすりながら、目だけを動かし、一瞬だけ千馬を見る。
「ん。この場所が好きだから留まっているのでなければ、他の人間達と一緒に上流に移らず、ここに住み続けているのは何故だ?」
ティサリーは顔を上げ、何かを言いかけたが、また抱える膝の中に顔をうずめる。
「……言えば、私の事を怖がって、嫌いになる……」
すぐに千馬が口を開く。
「今日初めて会って、まだ少ししか話していないけど、ティサリーが優しい良い子だって分かったし、嫌いになんかなるわけがないよ。それに、俺に怖い物なんてないからね」
ティサリーは頷き、顔を半分だけ上げ、少し沈黙したあと、重い口を開いた。
「……ここにいるのは、私が……怨獣だから……」
「えんじゅう? 何それ?」
千馬はダモとティサリーの顔を交互に見る
「ん? 知らんな。怨獣という言葉自体、聞いたこともない」
ダモは小さく頭を傾け、ティサリーの顔を見つめる。
「……人間の姿とは違うし、擬獣は私を怨んでて……私だけを狙って襲ってくるから……。怨獣は化物だからって……周りに、皆いなくなって……」
言葉を詰まらせ、ティサリーは目から溢れてくる涙を腕で擦る。
「ん。そういう事だったのか。ならば話は早い、ティサリーは怨獣なんてものではなく白八だ。正確には白金葉だな。」
ティサリーは初めて聞く言葉に戸惑い、また何か悪いことが起こるのかと身構えるが、それでも自分が何者なのかを知っておきたいと決意を固め、顔を上げ、前を向く。
煌々と輝く金色の瞳が涙に濡れ、より輝きを増していた。




