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その9 呪われた体

 ――あの日、得体のしれない化物に食い殺されたはずの俺は、上半身が裸の状態で光る石の前で目覚めた。


 周囲を見渡し、着ていたはずのシャツと上着が、所々が破れている状態で散乱しているのを発見する。起き上がろうと地面に手を着くと、小さな段差に触れた。見るとそれは足跡のようで、間違いなく化物が存在することを証明していたが、その後に化物はどこを探しても見つからず、二度と現れることはなかった……。


 ――それから一年間、根っこの洞窟を拠点に生活をしながら、体に起こった異変と、この樹海の事を少しづつ理解しゆく。


 周辺の探索を開始してから三日が経つ頃、いつまでたっても食欲が湧かず、何も食べずに動き続けられていることに不安を抱く。


 最初は生活の環境が急変したため、ストレスで食欲が湧かないのだとばかり思っていたが、どうもそういった様子ではなく、十日が過ぎても体は問題なく動き、むしろ以前より精力的に動くことが出来た。


 それよりも驚いたことは、体は痛みや疲労がなく、どんな大ケガをしても出血すらせず、すぐに直ってしまうことだった。正確に言えば痛覚はあるにはあるが、痛みを感じるような衝撃を受けた瞬間に、脳への信号が遮断されている感じがした。


 腕をつねった場合に、皮膚に触れた瞬間は指や腕に伝わる感触はこれまでと変わらなかったが、ねじって痛みを感じそうになると腕の方の感触はなくなり、指の方は粘土をこねているような感覚になった。


 それと体は痛みを遮断するだけでなく、回復力がとても強くなっており、少しの切り傷では皮膚が裂けると同時に回復して、傷自体を見ることすら出来ずにふさがっていた。


 痛みもなく、怪我もできない、その上腹が減らないだけでなく、どんなに動き回っても疲労することもない。これが山で遭難した場合ならば、十分を通り過ぎ、補って余りある安心感なのだが、常軌を逸したこの樹海では、それですら心もとなく感じていた。


 それならばと思い立ち、想定外の緊急事態に備え、自分の体の限界を知っておこうと過激な実験をするようになる。

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