未定
どうでもいい会話を重ね、笑い合っているとあかりが急に真顔でひろゆきに問いかけた。
「学校行かなくていいの?」
「何?急にどうしたの?」
あまりに急な真面目な話しに苦笑いを浮かべた。
「なんか勿体ないなと思って。」
ため息混じりにそう言うとコーヒーを一口飲み窓の外を眺めるあかり。ひろゆきも釣られて外を眺める。窓の外ではスーツを来た大人や、仕事中とおぼしき車が行き交う。
「時々ね。世間から置いていかれてる気がするの。」
「そうかな?」
そうはいったもののあかりの言葉を聞き少し不安になった。
「私の将来ってどうなるのかな?」
ひろゆきも少し前に山田に同じ事を聞いていた。その時の「今が楽しければ…」と言う言葉は今は少し違う気がした。
「あかりは学校どうしたの?」
ずっと気になっていたがなかなか聞けなかった事だった。
「うち、お金なくってさ。」
明るく言うあかりだが、その笑顔が作り笑顔だと言うことは直ぐに分かった。「そっか」と天を仰ぐひろゆき。返す言葉が見つからず、あかりを直視出来なかった。
「そうなの。本当は辞めたくなかったんだけど、仕方なくってさ。だから、余計にひろって勿体ないなと思ってさ。」
そう言われると、あかりに無いものを自分が見せびらかしているようで申し訳なくなった。
施設から親元へ帰って行った子ども達は皆、なに不自由なく幸せに暮らしているのだと思っていた。弟のかずきもー。ただ、現実はそうではないのだと気づかされた。施設の子ども達は元々は何かしら理由があり親元を離れ暮らさざるをえなくなったのだ。その‘理由’が解決された親が迎えに来るとは限らないのだ。
「ごめんね。変な話しして。」
あかりの笑顔を見る度に胸が締め付けられる。
ふと携帯電話を開くと16時を回っていた。二人ともバイトの時間が迫っている。
「もうこんな時間。」
携帯電話の画面を見せながら言うと、あかりが携帯電話をそっと閉じた。
「今日は何か行きたくないな。」
何故だか分からないが一緒に居てあげなければと思ったひろゆきはバイト先に電話をしていた。
「竹田です。」
「お疲れ。どうした?」
「今日は休みます。」
「えっ、いきなり困る…」
店長が追いすがるのを遮り電話を切った。その姿をあかりは困惑した様子で見ていた。
「どうしたの?」
その問いかけで我に返る。
「あっ。いや…」
先走ってしまった事に気づき恥ずかしくなった。すると、あかりも携帯電話を取り出し電話をかけ始めた。
「もしもし、伊藤です。急で申し訳ないんですけど、今日休みたいんですけど。…はい。すいません。」
電話を切ったあかりが片目を瞑る。
「ひろがそこまで言うなら仕方ないから一緒に居てあげる。」
「俺は何も…。」
あかりは一体どういう気持ちでこういう思わせ振りな事をするのかー。心のうちが分かればどんなに楽かー。それでもこの楽しい時間をいつまでも続けるにはそこには触れてはいけない。触れなければいつまでもこの関係が続けられる。そう考え胸の奥に複雑な思いを閉じ込めた。




