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夏(仮)  作者: ふゆか
接近
20/38

未定

次の日、バイトを終えると山田の家へ向かった。


途中コンビニに立ち寄り風邪の時に欲しくなる物に頭を巡らす。なかなか‘これ’という物がなく、とりあえずマルボロを買った。


山田の住むアパートに着くと、山田の部屋の電気がついているのが見えた。


「起きてんじゃん。」


何だか嬉しくなった。自転車から跳ねる様に降り山田の部屋のインターフォンを押す。


扉が開くと、そこに居たのはせつこだった。


「竹ちゃん。」


突然の訪問に随分と驚いた様子のせつこ。


「突然すいません。山ちゃん大丈夫ですか?」


ひろゆきの問いに一瞬目を反らし


「大丈夫だけど、今寝てて…」


「そうですか。」


「ごめんね。また遊びに来てね。」


扉が閉まると、孤独感に包まれた。


(また一人か)


そんな事を考えながら再び自転車に股がる。


この日もいつものファミレスに向かった。


すっかり常連となったこの店。いつもの窓際のテーブルに陣取りマンガを広げる。山田のために買ったマルボロの封を開け火をつける。マンガの登場人物の台詞を読んでいくが内容が全くと言って良い程頭に入ってこない。


(一人は退屈だ…)


「熱っ。」


知らない間にタバコが灰に変わっていた。


何をしても面白くない。ひろゆきは眠る事にした。三人掛けの椅子はひろゆきの身長には少し足りない。足を投げ出し、横になり眠りについた。


どれくらい眠ったのだろうか。目を覚ますと外はまだ真っ暗。


(体が重いー。)


起き上がる気にならず天井を見つめる。そのまま机の上のタバコを右手で探す。なかなか見つからず仕方なく体を起こすと、


「こら。」


「何で?」


あかりがマルボロを握りながら怒りに満ちた目でこちらを見ている。


「何でじゃないよ。何してんの?」


「関係ないじゃん。」


結局連絡する事が出来ず仕舞いだったあかりとの突然の再開。状況が違えば嬉しかったのだろう。しかし、気まづさと恥ずかしさでいっぱいだった。


ひろゆきは立ち上がるとレジへ向かった。


「ちょっと。」


追いすがるあかりを無視し会計を済ませる。


「待ってって。」


あかりがひろゆきの手を掴んだ。


(小さいな。)


不意にそう思った。


「話し聞いて。」


静かな夜。あかりの声が響く。


「別に話す事ないし。」


ポケットから自転車の鍵を取り出そうと探していると


「これでしょ。」


いたずらっぽくあかりが揺らす。


「あっ。返せよ。」


「ダメ。話ししてくれたら返す。」


暫くそんなやり取りを繰り返し、ひろゆきが諦めると二人で店内に戻った。


「禁煙席で。」


「ちょっと。喫煙席…」


あかりが人質の鍵をちらつかせる。


初めて入る禁煙席は同じ店内とは思えない程空気が澄んでいる。


テーブルの向かいのあかりはメニューを開き注文する物を物色している。店内の時計に目をやるとまだ午前一時を回ったところだった。


(今ここを出ても行くとこないしな…)


逃げ出す機会を伺っていたが観念した。


「これにしよ。」


あかりがチョコレートパフェを人差し指で叩く。


「ひろは?」


「俺はいらない。」


ポケットからタバコを取り出す。今回は‘いつも’のメンソール。口に咥えふとあかりを見ると『禁煙席』と書かれた札を指差した。


「もう。何個持ってんの?」


呆れた様にため息混じりに言う。


「せっかく久々にひろの姿見たと思ったらこんななっててびっくりだよ。」


「うるさいなあ。」


ここは、ひろゆきにとって自由な場所だった。誰にも文句を言われず、やりたいことをやり、思いのままに過ごせるー。まさかここでこんなにも窮屈な思いをするとは夢にも思ってなかった。


「で、話しって何?」



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