表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夏(仮)  作者: ふゆか
転落へ
10/38

未定

施設に戻ると、たかしとまさやがニコニコー。いや、ニヤニヤしながらひろゆきの元にやってきた。


「気にするな。人生は長い。」


ひろゆきの肩に腕を回してたかしが言った。


「サッカーどころじゃないね。」


まさやが満面の笑みで言う。


(コイツら。)

直ぐに察しがついた。


「名前書き忘れるとか…」


たかしが笑う。


「僕はそんなひろが大好きだ。」


まさやが半分笑いながらそう言った。


「お前ら。」


そう言うと、ひろゆきはまさやに襲いかかった。


何故か昔から得意な四の字固めで締め上げる。


「あー。ギブ、ギブ。」


もがきながらひろゆきの足を‘タップ’するが緩めない。


「たかしだって。」


こんな二人の姿を見ながら大笑いするたかし。


「ひろ、そのへんにしとけって。」


諭す様に言うたかしを睨みながら


「次はお前だ。」


と、今度はたかしに襲いかかった。


「やめろって。」


あかりとの楽しい一時から、現実に引き戻されていたが、少し気持ちが楽になった。


こんな友達を持つ自分が幸せだと改めて思った。


食事を済ませ部屋でゴロゴロしているとたかしがやって来た。


「今日、遅かったな。」


「ああ…」


「あかりと会った」と言いかけてやめた。


「落ち込み過ぎて失踪したかと思ったわ。」


「だれが補習くらいで。」


強がってはいるが本当は失踪してしまいたい位落ち込んでいる。


「でも、1ヶ月はでかいな。」


「1ヶ月?」


「補習期間。」


知らないの?という顔でひろゆきを見るたかし。


「それマジ?」


「マジ、マジ。」


これは嘘ではない。たかしの雰囲気から察した。


「マジかよ…」


この高校で、1ヶ月部活を抜けるのはあまりに大きすぎる。特に夏休みは皆サッカー漬けの毎日を送ると言うのに。

ただでさえ実力的には下の方のひろゆきには絶望的な事実だった。


「とりあえず、補習しっかりな。何かあれば手伝うからさ。」


親指を立ててそう言うたかしを見て、

(こいつは本当に男前だな)

と思った。




夏休みに入り、補習漬けの毎日が始まった。

結局期末テストの結果は赤点3つ。無記名がどうとか言う問題ではなかった。


補習は学年の‘劣等生’が一同に集まる。と、言ってもひろゆきを含めて8人だけ。自分が情けなくなった。


補習は1日4コマある。毎回小テストがあり、8月のお盆前に最後のテストが行われる。都市伝説かどうかは分からないが、そのテストをクリア出来なければ留年確定という噂を聞いた。それが本当だとしたら、正に崖っぷちだ。


授業中、窓の外では部活で汗を流す生徒達が見える。もちろんサッカー部も。

こうしている間にもどんどん離されていく。

そんな焦りと恐怖が心の中を渦巻く。


「竹田。」


「はい。」


不意に呼ばれ声が裏返る。静まり返る教室。経験したことはないが、お通夜みたいだなと思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ