第3話 だいすき、はアナログで。~ルーター食った男、世界を救う~
ご覧いただきありがとうございます。
本作、ついに完結です。
電波の奔流とともに、恋と地球の運命が交錯します。
おなじみの必殺ポーズで、世界を救う準備はできましたか?
そのとき、スマホが震えた。
「……着信、JCT……?」
受話ボタンを押すと、電子音声が響いた。
『至急出社。地球がピンチ。』
──全力でチャリを漕いだ。なぜか電車が止まっていたので。
息を切らして本社ビルにたどり着くと、オペレーションルームにはすでにユウがいた。
「……来たね、ノブ男」
モニターには、空を覆うような巨大な宇宙船が映っていた。
「これ……本物……?」
「うん、本物。で、たぶん──敵。」
その瞬間、宇宙船から赤い光が放たれ始めた。
そしてそれに呼応するように、地上の感情パケットが増大する。
俺の頭に、無数の感情パケットが流れ込んでくる。
怒り、悲しみ、恐怖、絶望、罵詈雑言、愚痴、ハッシュタグ。
世界中のSNS、スマート家電、監視カメラ、個人チャット……
全ての“感情”が、俺の脳に入ってきて──
「……あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
バタン。
俺はその場で倒れた。
──目が覚めたとき、ユウがいた。
「ノブ男……起きた? 大丈夫?」
その声に安心しかけたところで、頭の中に通信が割り込んだ。
『コチラ、AIコロニースペースシップ
チキュウハカイビーム チャージ50% 1ジカンゴニハッシャスル』
──地球、終わった。
「もうおわりだぁ……」
俺は情けなく呟いて、ちょっとおしっこ漏らした。
「……何してんのよ、ノブ男!」
「ユウ……俺……ルーター、食べて……だから通信、見えるようになって……でも何もできない……」
「えっ……ノブ男、頭が……」
ユウはふと目を細め、深く同情するような視線を投げかけた。
「ごめん……ユウちゃん、ほんとは……メッセージわざと覗いたんじゃない
……俺パケットが見える……あの船の通信も……
……あと1時間後に地球爆破するっぽい……
……俺、ただの……ルーター食ったバカだっただけかも……」
パァン!!
ユウのビンタが炸裂した。
「しっかりしなさい! 私たちが止まらないと、社会は崩壊するの!
“接続は信頼、遮断は裏切り”でしょ!? なら、今こそ接続しなさいよ!」
その瞬間、モニターの宇宙船が震えた。
「……え?」
俺が発している微弱なWi-Fi波に、反応してる──?
「……もしかして……俺……やれるかも……?
ユウちゃん俺……やってみる!」
「ノブ男!?」
ビルの外に飛び出した。
空には、巨大な母船。
赤色のレーザーが円形に輝き、じわりじわりと大きくなっていく
──おうおうおう、やってくれてんな?
赤いレーザーだぁ? デカけりゃ勝ちだと思ってんのかよ。
そんなに俺たちがうるさいかよ
俺は、鋭い眼光でやつらをにらみつける。
「お前たちにとって、俺たちの文化はノイズかもしれない……
だがな、胸を張って言えることがある。
──俺たちの文化は、クソだ。でも、愛すべきクソだ。」
俺は、深く息を吸った──
腰を落とし、辺りのデータを一転に集める──手のひらを重ね、脇腹の横で円を描くように構える。
「これが……」
バリバリ……バリバリ……
青白い光がどんどん大きくなっていく。
「人類の知性の──全てだあああああ!!」
──YouTube全アーカイブ展開。
背後に広がる膨大なデータストリーム。
猫ミーム、ASMR、5時間の無言動画、マインクラフト実況、陰謀論まとめ、爆速レシピ、深夜の独り言、急に踊り出す短尺ショート。
電波が光となって収束し、不可視の奔流として宇宙へ向けて発射される。
場面転換:エイリアンAIの視点
「……キョウリョクナ デンパ ヲ ジュシンチュウ……」
「分析中……ネコハ……神?」
「……ASMR……インボウロン……CULTURE……OVERLOAD……」
AIの情報処理領域が過負荷。自己崩壊プロトコル起動。
──そして、宇宙船は消滅した。
再び地上。
ビルの前を通りがかった一般市民、タカシ(32・会社員)は、立ち止まる。
そこには、奇声を上げ、両手を突き出しながら空に向かってなぜか、昔見たアニメの技っぽい構えで叫ぶ男がいた。
「…………やべぇやつがいる……」
タカシはそっと視線を逸らした。
光線は、誰にも見えていなかった。
***
その日の夜。
オペレーションルームで、俺は一人、使い古されたノートをめくっていた。
紙は、すでに湿気と汗でふにゃふにゃになっている。
「……あれ? なんか挟まって──」
一枚の小さな紙切れ。
折りたたまれていたその中には、走り書きの文字があった。
ノブ男へ
だいじな事だからもう、手紙にするね
いちばん大事な時に、私、
すごくひどいこと言っちゃったね。
きみのおかげで、みんな救われたんだよ。ありがとう。
──ユウの字だった。
そのアナログ通信は、ノイズもフィルターもなく、
いちばん強い通信だった。
そっと目を閉じると、頭の中に、あの言葉がまた浮かんできた。
「ナマステ☺️」
──この星のIQ、たぶん5。
最後まで読んでいただき、本当にありがとうございます!
この作品は「ルーターを食べる」というアホなアイデアから始まりました。
最後までお付き合いいただいてありがとうございます。
手紙は、縦読みで”だいすき”になっています。
コメント・評価・ブクマなど、もしよければ一言でも残してもらえると嬉しいです!
#だいすきはアナログで。




