表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
2/3

第2話 電波干渉は計画的に(なお失敗)

ご覧いただきありがとうございます!


本作は全3話構成の短編SF×ラブコメです。


第2話は、ヒロインとの“通信的すれ違い”がピークを迎えます。


温泉、恋のチャット改変、そして空に現れる“何か”──

 それからというもの、俺の目には、電波が見えるようになった。

 (誰もそんなスーパーパワーほしがらねぇだろ…)


 空間に浮かぶパケット。赤くちかちかしたやつはイラつき。

 青くゆらゆらしたのは寂しさ。

 暗号化された通信はノイズまみれだけど、感情だけは透けて見える。

 そして──たまにある平文で送られた文章は、“まんま”読めてしまう。


 ──というわけで。


「ノブ男、ぼーっとしてると、配膳ロボに味噌汁ぶちまけられるよ!」


 JCT本社・社員食堂。俺はスープの湯気の中で、天使の声に叩き起こされた。


「ユウちゃん……」


 佐藤ユウ 俺の同期

 頭がよくて、真面目で強がり、そしてなにより……かわいい。

 法人契約でしか接続できない女。


 ……でもパケットには、猫が掃除機に吸われる動画みたいな電波がピコピコ流れてる。(だがそこがいい)


「ノブ男、2日もシールドルームに閉じ込められてたんだよ?

 なのに翌日出社って、ほんとすごいよ……」


 彼女はため息をついて、ちょっとだけ笑った。


「まあ、JCTの社訓だもんね。

 “接続は信頼、遮断は裏切り。”──」


 まるで呪文みたいに、それを口にして、ユウは背を向けて歩き出した。

 俺は、ただスープを見つめていた。


 ……背中を見送ってる間に、海苔が完全に沈んだ。

 ああ、もう、人生ってそういうもんだよな。


 ──そこへ現れたのが、Nordtelノルドテルの男。

 俺の恋敵にして、外資系の犬──


「ノブ男さん、復帰したんですね! いやー、噂になってましたよ、閉じ込められてルーター食べたって」


「……いや、あれは事故だし、事故だし、事故だからな?」


「で、ところで──ユウちゃん、いません? あの子、めっちゃ可愛いですよね~。

 そうだ、今度ご飯に誘っちゃおっと♪」


 チッ……こいつ、俺のユウちゃんに……


 タクミのスマートグラスから、チャットメッセージのパケットが飛んでいくのが見える。


「なんかユウさんとご飯行ったら、絶対楽しいだろうなーって思ってた。

今度、前に言ってたスペイン料理の店、予定合わせよう☺️」


 ……いやいやいやいや、誰が行かすかァ!!!


「パケット、破壊。」


 バチバチバチ……

 俺は指先で空間をなぞり、電波をずらす。

 干渉、分断、改ざん。バイナリごとぶっ壊す。


 ──通信改変、完了。


 昼休みが終わった頃、俺はゆっくり立ち上がって、

 ユウのいる実験室へと向かった。


 廊下を歩く足取りが、なぜかちょっと軽い。 ……いや、勝者の足取りってやつかもしれない。


「……ノブ男、ここって電波悪いよね?全然つながらないよ~

 外まで出るの面倒だな~」


 俺はニヤリと笑い、拳に力をこめた。


 周囲の空気がわずかに震える。

 電波強度、増幅──いけッ……!


「あれ?急に電波の通りよくなった。

 なんかノブ男が近くにいると、いつも電波よくなるんだよね~」


 心の中でガッツポーズする俺。

 やったぞ俺……これは、勝利のWi-Fiだ……!


 そのとき、ユウの端末にチャットが届いた。タクミからだ。


「な……前……ス……定……☺️?」


 ──バグった。


 おそらく、俺がパケットにノイズ突っ込んだせいで、文意が分解されたんだ。

 結果として──


「なますて?」


 と、音読したユウが吹き出した。


 俺もつられて、くっくっ……と笑ってしまう。


 だがそのとき、ユウの目がピクリと動いた。


「……今、私のメッセージ……見たの?」


 その瞳は冷たかった。


「サイテー。」


 ぐはっ……

 通信社会の信頼を、個人的欲望で裏切ってしまった──!!

 ユウはそれ以上なにも言わず、天井を見上げ、ふと呟いた。


(……ナマステってなんだろう……)


 ピコン

 タクミのグラスに返信が届く。


「“ナマステ”って、“あなたの心の平和”って意味だったんだね

 ……私、ヨガ始めた覚えないけど?」


 ユウの心のWi-Fiのピクトが1本減った。


***


 ……うん、詰んだ。

 いや、詰ませたのは俺なんだけど。通信社会における恋のパケットは繊細すぎる。


 とほほ……こんな日はWi-Fi温泉にでも入って、癒されるか……。


 注)Wi-Fi温泉とはWi-Fiがつながりやすく、人の少ない場所。

 ノブ男が感情パケットに振り回されることなく、「いま、ここ」を体感できる、

 いわばWi-Fi界のヨガスタジオである。


「……はぁ。いいWi-Fiだぁ……」


 俺が心の平和にに立っている傍ら、

 渋谷では交差点、誰もがスマホ片手にうずくまっていた。


 SNSが、心を食い荒らしている

 ──なにかが、おかしい。

 

 ザザ……ザザザザ……ッ!


 ──そのときだった。


 俺の視界に、真っ赤な電波ノイズが突然流れ込んできた。


 バチバチと電子の火花が弾けるようなノイズが、空間を引き裂く。

 

「え、ちょっ……なにこのバズ量……!」


 視界が埋まる。タイムラインが加熱していく。

 怒り、不安、絶望、怒号。


 SNSに接続された全端末から、強すぎる感情パケットが世界を汚染していく。


「──“トーキョー上空に未確認飛行体”?」

「“謎の通信圧で脳に異常”って……」

「“地球がうるさすぎて攻撃されてる”ってどういうこと!?」


 ──バズの中心にあったのは、宇宙からの電波。

 感情のノイズを追って来た、AI種族のエイリアンだった。

最後まで読んでくださりありがとうございます!


「ナマステ」は伏線でも暗号でもなく、ただの事故です。


いよいよ次回、物語はクライマックスへ。

YouTubeと宇宙人と、だいすきの話。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ