東方防衛戦5
そいつは、無数の魔物たちの中、静かに佇んでいた。
線の細い男で、頭髪は無く代わりに角が一本。
紫色の肌を持ち、筋肉質の身体はハーフパンツ以外着ていない。背中からは一対の羽が生え、今はそれを折り畳んだ状態で瞳を閉じている。
純粋なる魔族。
そこに居ると気付いた瞬間、得も知れない冷や汗が吹き出る。
アレはヤバい。
さすがに元魔王である増渕やたった一人敵陣突破している聖程ではないだろうが、ほぼ最強クラスの敵だ。おそらく、いや、確実に、今のあたしじゃ勝てるかどうかわからない。
かなりレベルアップしたわけだが、それでも目の前の化け物に勝てるかどうかは微妙だ。
けど、ここに居るメンツでアレと戦えるのはあたしだけだろう。
ったく。こんなことなら薬藻にこ、告白くらいすれば……い、いや、あんな奴別に何とも思ってないし。ただちょっと死んだって思って悲しかっただけだし。
そもそもフィエスなんとかってなんだよ? 見た目どう見ても悪役だし、キモいし……優しいし。
……じゃなくてっ。今は目の前の敵だ。敵。
どうにか不意を突いて倒せないだろうか?
いや、こういうヤツはあたしの接近にもう気付いてると見た方がいいはずだ。
あたしは切れかけていたサンダーブレードを掛けなおす。
近づいてきたリザードマンを叩き斬り、周囲が麻痺したのを確認し、その場で大きく息を吸い込む。
心を落ちつけるように深く息を吐き、気合いを入れた。
敵を掻き分け現れたハイオークに突撃し、地を蹴って顔面に蹴りを叩き込む。
そのままハイオークの顔を足場に飛び上がり、目的の魔族へとエクセルカリバーを振り下ろす。
思わず声が出そうになるが、必死に押し殺しての渾身の一撃だ。
それを……魔族は片手で受け止める。
さすがにこれには驚いた。
いや、違う。片手で掴んでいるが剣に触れていない。
おそらくバリアか何かで防いだようだ。
「これは驚いた。この私に気付きますか」
目を開き、あたしに視線を向ける魔族。縦縞の瞳があたしを捕獲する。
「ハッ、違和感がハンパなかったぜ。テメェの格好は目立つンだよ!」
憎まれ口を叩きながら大地に降り立つ。
しかし剣を持たれたままなので、あたしの至近距離に魔族が立っている状況。
この状況、かなり危険じゃね?
肉弾戦が得意な奴だったら大ダメージを受けかねない。
「アンタがこの軍団の指揮官か何かだろ?」
「はい。その通りです。マヨネーズ魔王国軍第四奇襲隊指揮官・ハルマス・ハートポルト・ハードゲイと申します」
自己紹介に、あたしは思わず気勢を殺がれた。
だって名前が可哀想過ぎるだろ。その気があるならともかく一般魔族なのにハード……ヤバい、同情しそうだ。
「それで、私に気付いたあなたは何者ですか?」
「言いたかないが……こういうのって名乗りあげねーと締まらねぇよな?」
強敵との戦いで名乗り合うのは少年漫画のお約束だ。
あたしは結構そういうのが好きなので漫画に関しては結構見てる。
一対一とか燃えるよな。あ、でも自分でやンのは勘弁してほしかったンだけど。
勇者として召喚されちまった以上は、お約束に則ってやってやるか。
「あたしはシホウ・テヅカ。この世界で勇者やる事になったンだ。よろしくな」
「ほぅ。これは素晴らしい。勇者の息子であるマシュマロ様を倒すべく現れた次期勇者。その実力を見る事が出来ようとは。ふふ。せいぜい私に満足のいく戦いをさせていただきたいものですな」
「ゴタクはいい。テメェを潰してこの奇襲部隊、瓦解させてやンぜ。ビ・ハ!」
言葉と共にあたしは魔法を紡ぎだす。
いきなり目の前に出現した光球に、ハルマスは思わず目を瞑り、剣を掴んでいた手の力が緩まる。
あたしはその好機を見逃すことなく剣に力を入れて拘束から逃れる。
一気に距離を取り、後方に居たゴブリンに肘鉄喰らわせつつ、自分の安全地帯を作りだす。
さらに帯電したままの剣を一周させて周りの敵を麻痺させておいた。
「やってくれますね。光の魔法を目くらましに使うとは」
「この程度初歩の初歩だろ? 行くぜ?」
エクセルカリバーを構え、あたしは再びハルマスへと飛びかかる。
頭上からの一撃。しかしハルマスは難なく避ける。
まるで風圧を避けるように半歩右にずれただけで躱しやがった。
「袈裟掛け!」
しかし、そのくらいはあたしだって予想済み。
刃が落ち切る前にスキルを使用し強制的に切りあげる。
さすがにこれは避けれなかったらしく、ハルマスは左手で剣先を逸らす。
まただ。触れてないのにまるでそこに何かがあるように剣が逸れていく。
常時アビリティか? それとも魔法か?
常時アビリティならマズいが魔法なら切れるまで粘れば剣が通る。
けど、それまで待ってなどいられない。
「ビ・ハ! スラッシュ!」
光球で敵の目を欺きつつスラッシュで切りつける。
「同じ手は食いませんよ」
ハルマスは眼を瞑ったままあたしの攻撃を避けて見せた。
どうやら眼を瞑ったままでも周囲の状況が分かるらしい。
これは……予想以上に長い戦いになりそうだ。
人物紹介(仮)
手塚至宝
勇者
部隊構成(仮)
魔王軍
第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅
第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 壊滅
第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万 残り約6千
第六部隊 巨人部隊 約84体
第八部隊 南方奇襲部隊 約2万5千 残り約6千
第九部隊 西方奇襲部隊 約2万5千 竜巻により壊滅
第十部隊 東方奇襲部隊 約2万5千 残り約1万9千
第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約98体
第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約2千6百体
第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名
フルテガント王国軍
第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約5千名
第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約9百名
魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約7百名
負傷者 約2千名
死者 約3千名
完全死 685名
医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約5百名
南方防衛部隊(魔法・医療部隊混合) 約5百名
遊撃部隊25名
竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名
伏兵部隊・西 970名
伏兵部隊・東 610名 + 4名
行方不明 1名
魔王軍戦経過報告(仮)
・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。
・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に嵌める。
・魔法部隊による追い打ち。
・機動部隊壊滅。
・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。
・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。
・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。
・綾嶺の自業自得な危機で超幸運効果発動により大井手が助っ人に入る。
・重圧魔法が無くなり騎馬部隊が本格的な行動を開始。
・大井手が持ち場に戻り魔法再開。
・騎馬部隊と歩兵部隊の一部が左右の森へと侵入。遊撃部隊が迎撃。
・巨人部隊最前線に出現。
・巨人部隊一つ目兄貴たちによる一斉射。
・増渕により一斉射の防衛成功。体力が尽き増渕死亡(仮死)。
・巨人族対巨大宇宙人&竜族
・南方防衛戦
・西東より新たな奇襲部隊出現
・伏兵出現
・西方防衛戦
・東方防衛戦
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