東方防衛戦1
「あ、あの、僕……」
「気を引き締めなさい。そろそろ、衝突するわ」
エスメラルダさんの声に僕はハッとした。
すぐに魔物の群れへと視線を向けると、丁度オルトロスを含む魔物の群れが魔王軍と戦い始めた所だった。
魔物同士が闘っている? と思ったものの、よくよく見れば元魔王の城で見かけたことのある魔物たちだ。おそらくあの城から連れて来たんだろう。
あの強力な魔物たちが来てくれたならこれ程心強いことはない。
でも、その数は魔王軍の10分の1、いやもっと少ない。
一体一体の力は強くとも、数の多さで負けているエスメラルダさんが率いる魔物たちは、最初こそ優勢だったけど、次第数に押され始めた。
「やはり……このままではマズいわね」
「エスメラルダさん?」
「私の名前、長くて言いにくいでしょう? エメラでいいわ」
そう言って、右手を魔物の群れに向けるエメラさん。
「見て。あの魔物の群れ、ただ群れているにしては随分と統率された動きに見えない?」
言われて僕は魔物を見る。
確かに、無数の魔物が一体のオルトロス、あるいはダゴンへと群がっている。
さらに気付いた。
数体はオルトロスの攻撃を防ぎ、その周囲から他の魔物が攻撃を加える。
それはまさにパーティー戦闘の様相だった。
盾役と攻撃役に分かれ、あるいは遠距離からの魔法役にも分かれている。
もともと数が少ないのに連携を取られれば、勝てなくなるのは道理である。
これではこちらの魔物の方が駆逐されてしまう。
「本当に、これは大ピンチね。西の魔物たちは大丈夫かしら」
「西にも魔物がフォローに?」
「ええ。こちらと同じ1000体よ。とにかく、こちらはこちらで食い留めないと。そろそろ、私も出ざるを得ないわね」
「あ、その……手伝います。いえ、手伝わせてください!」
恥ずかしいけど、僕は彼女の目に視線を合わせて言っていた。
「あら? フォローはしないわよ? それでも、やるの?」
「はいっ」
僕が決意を込めて言うと、エメラさんは薄く微笑んだ。
ゴブリンの顔なのであまり表情は分からないはずなんだけど、なんとなく、笑ったように見えた。
「じゃあ、行きましょうか」
「はい!」
僕は呆気に取られたままのカスティラとトルーアに気付く。
これから突撃するっていうのに、どうしたんだろう?
なんだか信じたくないような顔をしてるんだけど。
「カスティラ、トルーア、行くよ?」
「……っへ、あ、ああ」
「……っは!? あ、そうね」
二人は我に返ると、被りを振って準備を整える。
全員の準備が終わると、僕たちは魔物の群れへ向けて駆け寄った。
デミウルゴスが斧を振う横を駆け抜け、魔王軍へと肉薄する。
接敵直後に一撃。
ゴブリンソルジャーと切り結ぶ。
さすが魔王軍というべきか、僕の攻撃がいなされ、代わりの斬撃が飛んで来た。
慌てて避けて、再度剣を打ち込む。
くそっ。やっぱり強い。ゴブリンなんて雑魚だと言っていた昔の自分を締め殺してやりたい。
ゴブリンソルジャーは自分の1・5倍はある巨大な剣を振りまわし、僕を押し潰さんとしてくる。
まともに受けると防御してても殺されかねないので、剣を斜めにして相手の攻撃を逸らすことに専念する。
さすがにキツい。と思った次の瞬間、エメラさんによる一撃で、ゴブリンソルジャーからの圧力が無くなった。
次いで木にぶち当たり、ゴブリンソルジャーは吐血しながら息絶えていた。
すごいや……たった一撃で倒すなんて。
でも、いいのかな? 同じゴブリンな気がするんだけど。
まぁ、本人が嫌がっていないんだから同士討ちという訳もないんだろう。
僕も頑張れば一撃で倒す事もできるのだろうか?
当分は出来うることは限られているので、その中で行動を起こすだけだ。
今の時期では一撃で倒そうなんて思った所で僕の力が弱すぎる。
気持ち的に焦るけど、無難に行こう。エメラさんのフォロー、つまり横から敵の体勢を崩したりすることに専念しよう。
気合いを新たに僕は剣を握りやってきたスケルトンナイトを切りつける。
よし、今の一撃は急所に入ったな。
思わずガッツポーズ。
「ダメっ避けて!」
途端、エメラさんの声が響く。
声に従いすぅっと上半身を捻ると、僕の目の前を通り過ぎる一本の矢。
なんだ? と思った次の瞬間、さらに僕へ殺到する矢の嵐。
マズい。と思った刹那、僕の襟首が誰かに引っ張られた。
そのままぽすりとエメラさんの元へとやってくる。
まるでお姫様のように抱きとめられている自分に気付き、困惑しながらも押し付けられる弾力のある双丘の感触に、耳まで真っ赤になってしまった。
「よかったわ。もう少しで矢に射抜かれていたわよ」
「え? あ……」
言われて気付いた。
自分は随分と考えこんでいたようでそのうちに集中砲火を味合う可能性があったのだ。
それにしても……この状況はどういえばいいのだろう。
お姫様抱っこで抱かれる僕はついついエメラさんを見る。
なぜだろう。すごく、カッコイイ顔をしている。
そう思った瞬間、僕は勢いで口を滑らせていた。
「エメラさん……僕あなたが好きになりました」
その瞬間、味方ばかりか、敵の魔物まで動きが止まった……そんな気がした。
人物紹介(仮)
アルテイン・プロテイン
イシナキ村の自称英雄
カスティラ・エーデルハント
イシナキ村の冒険者
トルーア・トルクスタ・トゥルフーカス
カトナの森のダークエルフ
エスメラルダ・エルミット・エーデルワイス
ゴブリンメイド
部隊構成(仮)
魔王軍
第一部隊 機動部隊(魔獣のみの構成)約2万 壊滅
第二部隊 騎馬部隊(魔獣に騎乗した魔族)約2万 壊滅
第三部隊 歩兵部隊(魔族のみの構成)約4万 残り約6千
第六部隊 巨人部隊 約84体
第八部隊 南方奇襲部隊 約2万5千 残り約6千
第九部隊 西方奇襲部隊 約2万5千 竜巻により壊滅
第十部隊 東方奇襲部隊 約2万5千 残り約2万3千
第四部隊 重歩兵部隊(高ランク魔族のみ)約1万 残り約98体
第五部隊 巨大獣部隊(攻城用・魔獣魔族混合) 約2千6百体
第七部隊 精鋭兵・魔王 約百名
フルテガント王国軍
第一部隊(王国軍冒険者人猫族混合) 約5千名
第二部隊(勇者王国近衛兵暗部精鋭兵等)約9百名
魔法部隊(王国軍冒険者エルフ族混合) 約7百名
負傷者 約2千名
死者 約3千名
完全死 549名
医療部隊(王国軍冒険者妖精族混合) 約5百名
南方防衛部隊(魔法・医療部隊混合) 約5百名
遊撃部隊25名
竜部隊(赤龍王と黒竜は含まず)13名
伏兵部隊・西 970名
伏兵部隊・東 746名 + 3名
行方不明 1名
魔王軍戦経過報告(仮)
・大井手真希巴、ヌェルティス、増渕菜七による広範囲魔法での先制攻撃。
・三人の退却後、魔王軍機動部隊(獣部隊)を罠に嵌める。
・魔法部隊による追い打ち。
・機動部隊壊滅。
・龍華出陣。敵軍中央(重歩兵部隊)にて無双開始。
・機動部隊の後詰、騎馬部隊と第一部隊が激突。
・騎馬とさらに後詰の歩兵部隊が合流。
・綾嶺の自業自得な危機で超幸運効果発動により大井手が助っ人に入る。
・重圧魔法が無くなり騎馬部隊が本格的な行動を開始。
・大井手が持ち場に戻り魔法再開。
・騎馬部隊と歩兵部隊の一部が左右の森へと侵入。遊撃部隊が迎撃。
・巨人部隊最前線に出現。
・巨人部隊一つ目兄貴たちによる一斉射。
・増渕により一斉射の防衛成功。体力が尽き増渕死亡(仮死)。
・巨人族対巨大宇宙人&竜族
・南方防衛戦
・西東より新たな奇襲部隊出現
・伏兵出現
・西方防衛戦
・東方防衛戦
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