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心が読める薬剤師、異世界で騎士と宮廷薬師と傭兵に奪い合われています  作者: 優涼


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第28話 傭兵の手と、妹が見つけた安心の影

第28話 傭兵の手と、妹が見つけた安心の影


1 研究所の前で


夕方。雪菜は研究所の前で深呼吸をしていた。

胸の奥がまだざわついている。

レオンの言葉、アーヴィンの言葉──

どちらも心に残っていて、答えが出せないままだった。


「雪菜」


背後から聞き慣れた声がした。

振り返ると、ガルドが立っていた。


「……顔色悪いぞ。大丈夫か?」


雪菜は少し驚いた。


「ガルド……どうしてここに?」


「ユナの様子を見に来たんだよ。あいつ、まだ不安定だろ」


ガルドは雪菜の横に立ち、研究所の扉を見つめた。


「……それに、お前の顔が気になった」


雪菜は胸が少しだけ熱くなった。


2 ガルドの不器用な気遣い


ガルドは雪菜の肩を軽く叩いた。


「雪菜。何かあったんだろ。

 お前、悩んでる時は目が揺れるんだよ」


雪菜は驚いた。


「え……そんなの、分かるの?」


「分かるに決まってんだろ。

 ずっと見てきたんだからな」


ガルドは雪菜の横顔を見つめた。


「レオンか……アーヴィンか……どっちかに何か言われたんだろ」


雪菜は目を伏せた。


「……うん。

 どっちも……私を大切に思ってくれてるって言ってくれて……

 嬉しいけど、迷ってて……」


ガルドは頭をかいた。


「そりゃ迷うだろ。

 あいつら、どっちも真面目で、雪菜のこと本気で守ろうとしてるしな」


雪菜は小さく頷いた。


「ガルドは……何も言わないの?」


ガルドは少しだけ目をそらした。


「言うのが苦手なんだよ、こういうのは」


3 ガルドの告白未満の言葉


ガルドは雪菜の手をそっと取った。

その手は大きくて、温かかった。


「雪菜。

 俺も……お前を大事に思ってる」


雪菜は息を呑んだ。


「ガルド……」


「ただ……言葉にするのが下手でな。

 レオンみたいに綺麗に言えねえし、

 アーヴィンみたいに頭良く説明もできねえ」


ガルドは雪菜の手を握り直した。


「でも……お前が泣いたら嫌だし、

 怖がったら駆けつけたいし、

 笑ってたら嬉しい」


雪菜の胸が静かに揺れた。


「ガルド……それって……」


「分かんねえけど……

 たぶん、そういう気持ちなんだと思う」


4 ユナが現れる


その時、研究所の扉が開いた。


「……雪菜……?」


ユナが眠そうな目で雪菜を探していた。

雪菜はすぐに駆け寄った。


「ユナ、起きたの? 大丈夫?」


ユナは雪菜の手を握りながら、ガルドを見た。


「……ガルド……」


ガルドは少し照れたように頭をかいた。


「おう。ユナ、調子はどうだ?」


ユナは雪菜の後ろに隠れながらも、

ガルドの服をそっと掴んだ。


「……こわくない……

 ガルド、いるから……」


雪菜は驚いた。


「ユナ……ガルドのこと、怖くないの?」


ユナは小さく頷いた。


「……ガルド、あったかい……

 雪菜と……にてる……」


ガルドは目を丸くした。


「お、おい……俺が雪菜に似てるってのはどういう意味だ?」


ユナは雪菜の服を握りながら言った。


「……やさしい……

 まもってくれる……

 だから……すき……」


雪菜は思わず笑った。


「ユナ……ガルドのこと好きなの?」


ユナはこくりと頷いた。


「……すき……

 ガルド、こわくない……

 あんしんする……」


ガルドは耳まで赤くなった。


「お、おい……そんなこと言われたら……どうすりゃいいんだよ……」


5 雪菜の胸の揺れ


雪菜はユナの頭を撫でながら、ガルドを見た。


「ガルド……ユナ、あなたのこと安心できるみたい」


ガルドは照れながらも、ユナの頭を軽く撫でた。


「ユナ。怖い時は雪菜のそばにいろ。

 それと……俺もいるからな」


ユナは嬉しそうに笑った。


「……うん……」


雪菜はその光景を見つめながら、胸が静かに揺れた。


(ガルド……ユナにも優しいんだ)


レオンの言葉。

アーヴィンの言葉。

そしてガルドの不器用な優しさ。


雪菜の心は、さらに迷いを深めていった。


6 帰り道


研究所を出る頃には、夕暮れが夜に溶けていた。


ガルドは雪菜とユナの歩幅に合わせてゆっくり歩いた。


「雪菜。

 迷ってるなら、それでいい。

 答えなんてすぐ出すもんじゃねえ」


雪菜はガルドを見た。


「ガルド……ありがとう」


ガルドは照れたように笑った。


「おう。

 雪菜が困ってたら、俺はいつでも来るからな」


ユナは雪菜の手を握りながら、ガルドの服をそっと掴んだ。


「……ガルド、いっしょ……」


ガルドは少しだけ目を伏せた。


「……ああ。いるよ」


雪菜はその二人を見つめながら、

胸の奥が静かに熱くなるのを感じていた。


「……どうしよう……」


雪菜の迷いは、また一つ深くなった。

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