第14話「守りたい理由と、触れた鼓動の行き先」
1 傭兵団の夜
傭兵団の拠点は、夜になってもざわついていた。仲間の症状が悪化したせいで、誰も落ち着いていない。
「雪菜、来てくれ」
ガルドが迎えに来た。いつもより声が低く、焦りが滲んでいる。
「仲間の状態が……また悪くなった。黒い靄が……もう人間の形じゃねえ」
雪菜は胸を押さえた。
ガルドは雪菜の肩に手を置いた。
「頼む……雪菜」
雪菜は頷いた。
「行くよ。ガルドと一緒なら大丈夫」
2 黒い靄の変質
医療室に入ると、昨日救った傭兵が黒い靄に完全に包まれていた。靄は脈打ち、まるで生き物のように形を変えている。
「こんなの……初めて見る……」
ガルドは歯を食いしばった。
「昨日より……悪い。雪菜、頼む」
雪菜は傭兵の手に触れた。
黒い靄とともに、傭兵の苦しむ声が雪菜の胸に響く。
「……修復するよ。昨日より深い。精神層の奥、“記憶の層”まで裂けてる」
ガルドは息を呑んだ。
3 記憶の層へ
雪菜は傭兵の精神層に意識を集中した。
黒い靄が記憶の奥まで入り込んでいる。
「閉じる……!」
雪菜が叫ぶと、記憶の層がふっと閉じた。黒い靄が消え、傭兵の呼吸が落ち着く。
ガルドは雪菜を抱き寄せた。
「雪菜……! 本当に……ありがとう……!」
4 傭兵の記憶が流れ込む
その瞬間、雪菜の脳に映像が流れ込んだ。
暗い村。
泣いている子供。
「助けて……」という声。
雪菜は息を呑んだ。
「この人……昔、村で子供を守れなかった……その記憶が黒い靄に侵されてた……」
ガルドは目をそらした。
「……ああ。あの子は……俺が守れなかった子だ」
5 ガルドの過去の核心
ガルドは深く息を吐いた。
「雪菜……俺の過去を話す。聞いてくれ」
雪菜は頷いた。
ガルドは語り始めた。
「昔、傭兵団に入ったばかりの頃、ある村の護衛をしてた。そこに……小さな子がいたんだ」
「その子は病の初期症状が出てた。でも当時は病の存在を知らなかった。疲れだと思ってた」
ガルドは拳を握りしめた。
「気づけてたら……あの子は死なずに済んだ。俺は……弱かった」
雪菜は胸が痛くなる。
「雪菜。お前が仲間を助けてくれた時……あの時の後悔が少しだけ消えた」
6 深層の声が近づく
雪菜の胸に冷たい風が吹いた。
「……また聞こえる……深層の声……」
雪菜は震えた。
ガルドは雪菜の肩を抱いた。
「雪菜、聞くな! 危ねえ!」
7 精神層の進化
雪菜は深呼吸した。
「深層の声……昨日より強い……私の精神層が反応してる……」
ガルドは雪菜の手を握った。
「雪菜……大丈夫か?」
「うん……ガルドがいるから」
8 ガルドの決断
ガルドは雪菜の手を離さず、真剣な表情で言った。
「雪菜……お前を守るためなら……俺はなんだってする」
雪菜は息を呑んだ。
ガルドは続けた。
「命だって惜しくねえ。お前が……大事だ」
雪菜は胸が熱くなる。
「ガルド……ありがとう。あなたがいてくれて……よかった」
ガルドは雪菜を抱きしめた。
「雪菜……離れんな……頼むから……」
雪菜はガルドの胸に手を添えた。
「離れないよ。ガルドが守ってくれるなら……大丈夫」
9 レオンとアーヴィンの影
拠点を出ると、レオンとアーヴィンが待っていた。
レオンは雪菜の手を取った。
「雪菜。無事か?」
アーヴィンは雪菜の肩に手を置いた。
「精神層が揺れている。休ませるべきだ」
ガルドは二人を睨む。
「雪菜は疲れてる。今日は休ませる」
レオンは静かに返す。
「雪菜は私が送る」
アーヴィンは冷静に言う。
「研究所で休ませる」
雪菜は三人の間に立った。
「ありがとう。でも私は大丈夫だよ」
10 静かな夜
雪菜は騎士団本部へ戻り、自室のベッドに座った。
深層の声がまた響く。
「……雪菜……来て……ここに……」
雪菜は胸を押さえた。
誰が呼んでいるのか分からないまま、
その声は静かに雪菜の心に残った。




