26.救助は続く
ひと段落着いたことを報告するために、探索者病院へと来ていた。気を使ってくれているのか、黄虎、空野、蝶子は同じ部屋だった。
「蝶子、意識が戻ってよかったよ」
頭に包帯を巻いている状態は痛々しいが、微笑む蝶子を見て安堵の溜め息を漏らす。一時は生死を彷徨ったのだから、生きて頂け儲けものだろう。
「……生きてた」
「ありがとな。生きててくれて」
「……まだ死ねない」
何か強い思いがあるらしいから、よかった。
向かいに寝ている空野も意識が戻っていたのだ。
「空野も、よくぞ無事だったな」
「申し訳ありませんでした。私のミスでこんなことに。異黒隊長には、追うなと言われていたのに追ってしまいました……」
「いや、よくやったと思う。生きて来てくれて嬉しいぞ」
肩を叩いて労う。
空野は俯いて涙ぐんでいた。
「オレぁ。絶対復帰しますよ?」
「あぁ。東北の完全回復魔法を使える人にお願いしてある。そのうち戻れるさ」
「……っ! すんません! あざます!」
肩に手を載せて擦る。
黄虎も珍しく目に涙を溜めていた。
感極まっている様子。
「みんな、復帰待ってるからな」
その言葉に笑顔で皆が頷いてくれた。
今回のことで救助隊を辞める人がいるかもしれないと思ったが、そんなことはなかったみたいだ。
本部へと戻ると桃瀬に声を掛けれられた。
「おかえりなさーい。どーでしたぁ?」
「あぁ。三人とも回復に向かっているらしい。あと二週間くらい休めば動けそうだ」
「それなら、よかったですぅ」
みんな手持無沙汰って感じで端末へ向かって報告書を作っている。
今回のことの報告書を作るように言われているからなぁ。
「若葉は、報告書できたか?」
「できました。お願いします」
渡された報告書へ目を通して頷く。
「うん。ちゃんとまとまっていて読みやすいな。ありがとう」
若葉は笑顔を見せると自分の席へと戻っていく。
続いて、桃瀬がやってきた。
「できましたぁ」
報告書は問題ない。
いつものことだが、主観をちゃんといれてくるあたりが凄いな。
「おう。いつも通りだな」
「なんか、救助要請がないと暇ですねぇ」
気持ちがわかるが、出動はない方がいい。
みんなが安全にダンジョンを攻略で来ているってことなんだからな。
「そんなこというな。安全になったってことだ」
「まぁ、そうですけどぉ」
口を尖らせている桃瀬。
暇なのはいいことなのにな。
空いている机を見ると、早く戻ってきて欲しいなと思ってしまう。
今回の騒動で分かった。
まだまだ体制が脆弱だ。
改善できるところを考えて報告書にあげないとな。
俺も報告書と戦うことになる。
やつらはまだ黒幕が捕まったわけではない。
俺達があったやつらは、ただの幹部だったらしいからな。
まぁ、つかの間の平穏を満喫して、いざという時に備えることにしよう。
──ウゥゥゥゥゥ
『大手町ダンジョンにて救難信号』
『場所は十八階層』
『転送可能』
『生存時間三時間程度』
「桃瀬!」
「余裕でーす! 行ってきまーす!」
今日も、ダンジョンで救難信号を出す人を助け出す。




