22話 私の可愛いルーパーとはどこへ?(ヴィクトル視点)
「マリアベル!!」
「母上!!」
「母さん!!」
「あなた!! 2人も来てくれたのね!!」
「当たり前じゃないか!!」
「ルーパートのことで、私が来ないわけはない」
「それで、ルーパートは?」
マリアベル、そして他の者達は、それぞれ魔法や道具を使い、地面を掘り返していた。しかし私達が連絡を受け、すぐに駆けつけたとはいえ、あまり地面を掘る事ができていない。
「状況説明を」
「私達はもう少し向こうで、ルーパートの練習をしていたのよ。それで……」
私やレオンハルト、エリオットも地面を掘るのに加わりながら、マリアベルにルーパートに何があったのか、急いで確認をする。
数分前、私達がそれに気がついたのはすぐだった。屋敷から雷魔法が打ち上がったのだ。私は急いで鳥に変身すると、後のことをレオンハルトに任せ、屋敷に帰ろうとした。
だが、私よりも先に鳥に変身したレオンハルトが、屋敷へと向かってしまい。仕方なく2人で屋敷へ向かうことに。
またその途中で、何故か屋敷で仕事をしているはずのエリオットと会い。なぜお前がここにいるのかと思いながらも、やはりルーパートの方が問題だったため、何も言わずに屋敷へと向かった。
そうして屋敷へ着き、ササッと服を着て、マリアベルの元へ行けば。マリアベルを中心に、屋敷で働いている者達が集まり、地面を掘り返していた。
私達が見た屋敷から打ち上がった雷魔法は、おそらくマリアベルの魔法だろう。私の屋敷では、もしも屋敷で緊急事態が起きた時、またはルーパートに何か問題が起きた時に。私達が街にいる場合は、雷魔法で伝えるようにと決めていた。
屋敷に問題があった場合は、雷魔法を1度打ち上げる。ルーパートに問題が起きた場合は、2度雷を打ち上げる。それを一定のリズムで何度か繰り返すのだ。今回打ち上がった雷魔法は2回。ルーパートに何かがあったと、私達はすぐに駆けつけた。
そうして話しを聞けば、魔獣がルーパートを連れ去ったというではないか。私の可愛く大切なルーパートを連れ去っただと? いったいどこの不届き者の魔獣が、そんな真似を!!
「骨も残らぬように消してくれる」
「簡単に死ねると思うなよ?」
「私の可愛いルーパート、少しでも怪我をしていたらその時は、消す前に地獄を見せてやる」
「もしもルーパートが泣いていたら、その時はどんな拷問をしてやろうか」
「ルーパート、私がここを離れなければ」
「今日に限って、俺が真面目に仕事をしなければ」
「仕事など、父上に押し付ければ良かった」
「上手く仕事から逃げていれば」
「やはり今度から、可愛いルーパートをポケットに入れて、仕事に行った方が良いだろう」
「そうだな、今度からは、ルーパートのいる所で仕事をして、ついでに仕事を良い感じにサボろう。そしてルーパートと遊ぼう」
などと交互にブツブツ言いながら、地面を掘り返すレオンハルトとエリオット。後半は聞き捨てならんが。連れ去った魔獣を許さないのは私も同じだ。
「あなた達、後半部分は許さないわよ。それと、魔獣なのだけれど。もしかしたら、魔獣が勘違いしている可能性があるのよ」
魔獣が勘違い? その話しを聞きながらも、さらに地面を掘り返す私達。しかし地面は魔獣達がしっかりと巣を作ってしまっているのか、かなりの強度で固められてしまっており。私達が来てからも、たいして掘り返す事ができなかった。
「やはり行った方が早いな。巣ごとなくしてしまえば良いかと思ったが。行ってくる」
「母上、絶対にルーパートを連れ帰ります!!」
「母さん、行ってくる!!」
戻ってきた時と同様、私よりも先に、私に何も言わずに、レオンハルトとエリオットは巣穴へと続いているだろう穴に入って行って。
「あなた、頼むわね!!」
「ああ、外のことは任せる。もしもルーパートが戻ってきたら伝えてくれ」
「ええ!!」
地面を振動させる魔法を使える者がいて、地面の中にいる場合は、それで連絡を取り合うようにしている。探している物、者が見つかった場合などだ。
こうして私もレオンハルトとエリオットを追う形で、穴の中へと入った。が、この先で、まさかあのような光景を見るとは、私は思ってもみなかった。




