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生まれ変わったけど期限付き!?〜家族との再起をかけた奮戦記〜  作者: 石田あやね
第2章 友達をつくれ!
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39話 打ち明ける準備

 あの日以来、俺は落ち着かない日々を送っている。

 原田に正体がバレてしまったのか、それとも単純に似ていると思っただけなのか分からないからこそ、今後の対応に悩んでいた。

 もしも、正体がバレていたとしたら、正直に話すべきなのか、それとも誤魔化して知らぬ存ぜぬを貫くのか。これが生まれ変わりという現象だとしたら、それを他言しても問題ないのかが不安だった。他人に打ち明けた瞬間、この体から強制的に引き離されてしまうなんてことになれば、俺がやろうとしていることが何もできずに終わってしまう。直子と恵美に償うという願いが叶わなければ、悔いが残って成仏もできずにこの世を彷徨う霊となってしまうのだろうか。それを考えると、話すのには躊躇いが生じる。


(けど、バレた方が俺にとっては都合がいいのも確かなんだが……)


 他言することが許されるのであれば、原田はかなり有力な協力者になってくれるのは間違いなかった。

 そして、俺が死んだ日に何が起きたのか直接聞けることになる。ずっと疑問に思っていた俺の死の真相がようやく聞けるかもしれない最大のチャンス。逃すのは惜しい。


(これは思い切って話してみるか?)


 しかし、そこでまた最初の懸念へと戻った。いくら悩んでも、この体を失うリスクは拭い切れない。


(どうしたらいいだろうか)


「颯太? 大丈夫?」


 俺が我に返ると、向かい側の椅子に座っている恵美が心配そうに覗き込んでいた。

 今は夕食の時間。箸の進んでいない様子を見て、具合が悪いとでも思ったのか熱の確認のため、額に手を伸ばした。


「熱くはないね。お腹痛い?」


 俺は首を振り、心配かけまいと笑顔をつくる。


「どこも痛くないよ! 考え事してただけ!」


「そうか。なら良いけど……ご飯の時はしっかり食べようね」


「はい」


 恵美に注意をされ、食卓に目を向ける。今日の献立は、肉じゃがと具だくさんのお味噌汁と、ほうれん草ともやしのおかか和えだ。考え事をしていたせいで、箸を付けていたのに味わっていなかった。改めて肉じゃがを口にする。


「美味しい」


「良かった。なら、たくさん食べようね! しっかり食べないと大きくなれないよ?」


 食べないと大きくなれないは直子が恵美によく言っていた言葉だった。

 恵美は幼い頃は好き嫌いが多くて、直子はかなり手を焼いていた記憶がある。だが、大人になった恵美は自分でしっかりと料理をし、なんでも食べれるようになっていた。


(俺が知らないうちに恵美もしっかりとした大人になったものだ)


 そして、もうひとつ驚いたことがある。肉じゃがの味付けが直子にそっくりだった。

 きっと俺が見ていないところで直子に教えてもらったのだろう。直子と過ごしてきた時間は俺の方が確実に長い。それなのに、俺は直子のしてきたことをこれぽっちも真似できないことを今更ながら痛感していた。


(もしもの時に料理のひとつもできないような夫なんて離婚されても仕方ないな。こんなどうしようもない俺と定年まで付き合ってくれた直子は本当に素晴らしい女性だったんだ……俺には勿体無い女だ)


 俺は直子の存在の大きさを噛み締めるように、肉じゃがを味わった。


「そうだ、颯太。原田お兄ちゃんのこと覚えてる?」


 夕食が終わり、ソファでテレビを見ていた俺に直子が唐突に尋ねる。次に会う日が決まったのだと、話を聞く前に俺は確信した。


「覚えてる」


「次の日曜日にばあばの家で一緒にお昼ごはん食べることになったからね……その時に奇怪レンジャーのおもちゃも持って行きますだって」


 片手にスマホを持ちながら笑顔で話す恵美に俺も笑顔で返す。


「わーい! おもちゃ楽しみ!!」


 子供らしい反応を見たせいか、恵美はふっと笑みを漏らした。そして、スマホへと視線を落とす。


(ついに会うのか……それまでに決断しないといけないな)


 ふっと、最初にパソコンで俺の状況を調べた時のことを思い出した。前世の記憶を話す子供は周りの大人にそれを話しても特に何か起きたという記載はなかった。だとすれば、期限が来るまでは誰かに話しても急に体から引き離される恐れは少ないと言える。


(確定ではないが、この望みに賭けてみるしかないか)


 だが、ネットの情報が誤っていないか、そうでないかは確かめようがない。不確かなものを素直に信じるほど俺は単純ではない。


(もしもに備えて準備しよう)


 正体を話した瞬間にこの体から離れることになっても、俺の意思を原田に伝える必要がある。俺が居なくなった後、恵美を大事にし、生涯寄り添ってくれる相手は原田しかいないという変な確信を抱いているからだ。俺の死んだ原因を追求するよりも、妻と娘の未来の方が大切に決まっている。


(よし!)


 俺は決意し、やる気に満ちたように立ち上がった。


「颯太、どうしたの?」


 いきなり動き出した俺に恵美が気が付き声を掛ける。


「お風呂の時間までお絵描きしてくる!」


「わかった。あんまりお部屋散らかしたらダメだよ」


「はーい」


 テレビに飽きただけだと思われたようで、恵美は目線をまたスマホに向けた。

 難なく子供部屋へと行き、玩具箱から画用紙とクレヨンを取り出す。


(本当はしっかりした紙とペンが欲しいところだが贅沢は言っていられないな)


 そもそも子供の小さな手で細長いボールペンを扱うのは難しいだろう。短くて程よく太さのあるクレヨンを俺はしっかりと握り締めた。

 数十分掛かり、完成した物を俺は満足げに眺める。


「クレヨンの扱いには慣れたからな……なかなか良い出来だ」


 そこでもうひとつ必要な物があると気がつく。


「何か封筒はないだろうか」


 恵美に封筒と聞きたいところだが、画用紙を折り畳むとかなりの厚さになる。それを普通サイズの便箋に入れるのは無理があった。


「仕方がない。封筒も作るか」


 今度はテレビドラマに夢中になっている恵美の目を盗み、こっそりリビングの棚からセロハンテープとのりを拝借した。そして恵美に気付かれることなく、それは完成した。


「後は当日を迎えるだけだ!」


 程よい達成感に浸る俺に恵美の声が掛かる。


「颯太、そろそろお風呂に入るよ」


「は、はーい」


 俺は手紙を玩具箱の奥に隠し、リビングへと走った。


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