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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-793話 姫巫女降し 67-

 どっちつかず第5皇子は所領の“メンシィル”に引きこもっている。

 単純に引き籠るだけなら可愛いところがあると、6皇子も誘引の手を緩めなかっただろうが。

 彼は明らかに六弟に対して、対立姿勢をみせる軍事行動をとっている。

 名目上は、国境警備――野党や、魔物の出現に住民が怯えているため、急遽軍を派遣して領内の治安を維持しているものである――と、周辺の荘園に促してきた。


 それが半月前だ。

 ちょうど、デモンズレイク城攻防戦の敗戦報告が、エスカリオテ王の耳に入ったころだ。



 第5皇子を焚きつけたのは、中立の立場であるとされたエルフの長老である。

 またもや、こんなところでマルの密命を受けて動いていた。

 帝国兵であれば、エルフのショートカット跳躍を知らぬ者はいない。

「私にメリットがないように思えるが?」


「本当にありませんか? このまま中立を貫くのは並大抵のことではないでしょう」

 という言葉で十分だった。

 六弟は、兄を敬う気持ちが足りないとは常々思っていた。

 その証拠に、誘引の文句が『兄弟がともに手を取り合って』ときた――長兄たる四兄を差し置いて弟自らが皇帝を称している。そこへ手を取り合ってというのは蔑視にちかい文言だと言い放つ。

「ほう、それは誠に由々しきことですね」


「長老殿もそう思うだろう!」

 共感してくれたように解釈した。

 が、長老にしてみれば群雄割拠の中で、兄弟の上下などにこだわる、小さき器の者としか映らない。

 今は、だれが覇を唱えるかという事だ。



 一方、間の悪いことにエスカリオテでは、疫病に国が悩まされている状況にあった。

 これらの疫病は、幸いなことに人への影響は少ない。

 その代わりとして、収穫後の作物と収穫前の田畑に甚大な被害をもたらした。

 つまりは、これらが黒く炭化するという事象に悩まされたのだ。


――デンデデンデー、デデンデデデン...

 小太鼓の妙な節に合わせて、老婆の巫女が奇妙な踊りを街中で披露する――“かの災いは、先帝のお怒りよるもの、この地は祟られた、呪われた!”――と言って、踊り狂っている。


 当然、これらは耳障りである。

 エスカリオテ王は祝福され士、()()()()()()()というプロパガンダによって、国を支えている。

 仮に、彼自身の下で次代皇帝となる子が生まれれば、その子も()()()というラベルで帝国を支えるはずであろう。が、巫女の言葉は、民衆の支持をぐらつかせるに十分な効果があった。

 神の国だと言った誰かが恨まれる事態である。



「捕縛止む無しです!」

 国の決定機関にも空席が目立つ。

 帝国のすぐ東にブルーメル最強とされる獅子の軍団がある。

 遠征第2方面軍だ。

 解散していなければ、その兵数は20万以上の規模を誇り立ち塞がる()()が何であれ悉く破壊し尽くす荒ぶる者たちである。


 数か月前、反旗を翻した衛星国鎮圧に端を発する。

 後日談だが、元摂政の指示ではなく独断専行だったことが公にされた。

 これの操作はわざとである。

「わが陣営もだいぶ風通しがよくなったな」

 王こと六皇子の言葉が虚無を生む。

 ドーナッツ状の円卓を見渡すと、満員御礼で埋まったことはなかったが、首を振らずに頭数を数えることできるほど減ったのは予想外だった。


 確かに十分なほど準備を進め、帝国に敵対できる勢力まで育てることができた。

 仮に転生者なり、召喚者などがいなくても対峙できるという自負もあった――が、今にして思えば、その自信は一体どこから湧いて出たものかを知ることはできない。

 あの時点。

 宰相が暴挙に出た瞬間には確実に追い詰められると確信できた。


 ふと、小首を傾げ。

「そういえば...魔法使じいいはどこへ?」

 六皇子を幼少より導いてきたヘビーメタル・ロックな衣装を身にまとった黒一色の男のことだ。

 魔法使いだと言われると、そういう風にも見えなくもない雰囲気であるが――一部の人間の間では“魂を売った男”と呼ばれていた。

 要するに言動が悪魔っぽいのだ。

 白髪と黒髪のメッシュ、鋭く尖った爪は黒く塗られ、瞳は金色ときた。

 魔に魅入られたものと言われても仕方ない。

「確かに最近はとんと、見ませんね」

 傍を離れることはなかった男だがと、脳裏によぎる。

 耳元にささやく声――魂を揺さぶる甘美な言葉。


 おもむろに席を立ち。

「全軍に招集をかけよ! 第2軍をここ帝都で迎え撃つ!!!」



 魔法使いという名の小さな会合。

 帝都マハシト・イェレク城塞都市に聳える()()()()殿()に彼らは集まっている。

「これからこの国としては、思いもよらない数の魂が彷徨いだす手筈だ」

 例の黒革のボディースーツを纏った魔法使いが皆を代表して口を開く。

 舌なめずりをして、恍惚に瞳を歪ませた。

「漸くか、時間を掛けすぎだろ?」


「いや、すんなり狩れては、こちらとしても旨味が少ない」

 目玉の辺りにボタンを縫い付けたような、フードとワンピースの者がある。

 魔法使いの会話というより、死神のそれだ。

「うーん、ただ、どこまで上手くいくと思う?」

 正直という条件のセリフが聞こえた。

 黒革の方はわりと乗り気だが、

「聖属性魔法の行使者が生まれたぞ!」


「そうだ、悠長なことはしていられん」


「邪竜復活には、膨大な魂が必要になる...ドラゴンスレイヤーの正当なる血統も未だ存命とくる、あの男は何一つとして成果を上げていない!」

 六皇子担当者へのしっ責も兼ねている。

 黒革の魔法使いも他人事のように首を傾げた。

「われらの存在が公になっては意味がない...」


「いや、やる気を買って...坊よ、お前があの皇子を動かすか? 代わってやるぞ」

 なんて道化のような話をしていた。

 この戦争の裏ではこういう流れがあったようだ。


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