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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-773話 姫巫女降し ㊾-

「ああ、いかにも“シャフティ”だが...こっちはこっちで、依頼を受けてここにいる。んーまあ、冒険者のその辺のと一緒だと思って聞いてくれ!」

 こぶしで眉間を押さえながら、返答を待っていた。

「我々も、まあ、そういう事なら」


「ありがてえ、話がこれで進みそうだ」

 “シャフティ”族は、やや、おおらかに接してきている。

「まあ、内容というのは依頼主の名を先に伝えておく――」


「それは、ボクから伝えるよ」

 と、林立していた人垣の向こうから、少年が這い出てきた。

 這い出るくらいしか隙間がなかったからだが、4歳には見えないほど凛とした表情かおをしていた。

「えっと?」


「ボクは、幼帝イングヴルム...この国の現国家元首だ」

 いつの間にか“シャフティ”族は片膝をついて礼を尽くしていた。

 とんでもない珍客である。



 幼帝と名乗った少年の行動が変だった。

 ラインベルクを値踏みするように、腕を組みながら彼の周りを歩いてみている。

 落ち着きのない少年というイメージなど微塵も感じられない。

 よく言えば、マセガキであろうか。


「なるほど...君は転生者ではなく召喚者ってことか」

 ラインベルクをドキッとさせただけでなく、薄ら寒いものを感じさせたのだ。

 幼帝と呼ばれた少年の醜い笑い方でだ。

《これは、似た者どおしの既視感》

「ボク...いや、俺は引きこもりニートの“童貞だいけんじゃ”転生者だ」

 自慢するようなものじゃないのに、この手合いのはどっちがマウントを取るかが必至なのだ。ま、ラインベルクも嫌いなことではない。が、今は()()よりも、転生者という単語があることに驚きがあった。

 目を白黒させている伯爵も、オウルが置いてかれているのが不憫で仕方ない。

「いや、転生...ってのはね」


「あ、いや、理屈じゃないが知っている。が、幼帝陛下がそう...転生者の方だとは」

 オウルの言葉に疑問を持つ。

「え、知ってるの?」


「子爵のケースの方が稀なんだ。転生者というのは、この世界ではわりと多い。かの摂政殿も転生者だしな...なんと言ったか、どこぞの国に仕えていた、国防いや自衛軍とか...いや、仔細は忘れたが...その軍の()()()()()だというのであったというのだ」

 ラインベルクは小首を傾げ、

《それは、兵学校の生徒さんっていう設定なんだろうか...いや、召喚の方がレアケースで、転生が多い世界ってことは...魂ってのが不変なものになりやしませんかね? 仮に天国という妄想の類が、実は現実的なもので、精神体の魂はその高次元世界に行き着く...恐らくはその過程で、どこかに流されちゃう? みたいな...わっかんねえ~》

 難しいことを考えると、オーバーヒートするラインベルクの脳がある。

 案の上、フリーズした体が皆の目の前にあった。

「この者、どうかしたのか?」

 転生者だと分かると、4歳の癖に、流暢な言葉を紡ぐ少年を勘繰らなくても済むのだから不思議だ。

「いえ、陛下...これは今、フリーズ中です」


「うむ、そうか...難儀だな、コミュ障を抱えたままの召喚者というのは」

 コミュ障ではない。

 考えすぎたから冷却期間中のだが、これを伝えるのも伯爵には億劫に思えた。

 むしろ、彼を呼び題した真意に興味がある。

「貴殿は、エセクター伯だよな?」


「御意」

 貴族の資料、報告の類は目の前にある傭兵、シャフティ族に依頼して集めさせた。

 その彼らを見つけてくれたのは、教会である――教会が幼帝を支えるのは、ひとつに“独立”を勝ち得るためだが、摂政とも仲が悪い。表向きは、金銭間で繋がっているように見られているが、教会も一枚岩ではないという理由でしかない。

「招集したのは至極簡単な話だ。余に仕えぬか?!」



 すごく単純な話だが、極めて危険な話でもある。

 幼帝という人畜無害っぽい者を寄越して見せて、今、戦力をかき集めている摂政サイドとしては、宙ぶらりんな子爵領と三皇子領の中立姿勢、と軍事経済は喉から手が出るほどに、必要な戦力である。

 少なくとも、三皇子領には3万という纏まった兵が眠っているのは、調査済みだ。

 その背後を支える子爵領の生産力も侮ることはできない。

 ちかい将来は、必ず、爵位を上回る経済力を手にするだろう。


 そういう未来のある地域だ。


「ボクには、力がない」

 どこかで聞いたセリフだ。

「相対する者は強大な実力者で、おおよそだが、この動きも察知されている可能性がある。辺境にて、帝国の拡大路線――事業の遂行に尽力してくれた、四大将軍にも必ず報いたい。だが、目下の敵が強大過ぎてこれもほとんど口約束で終わるだろう...」

 幼年王の言葉、これも似たニュアンスをどこかで聞いた。

 フリーズから帰ってきたラインベルクは片膝を突いていた。

「もとより、幼年の皇子殿下を守るために召喚されました...」

 そんな殊勝なこと言えるようなものじゃなかったはずだ。

 いや、そうじゃない。

 彼自身が、幼年王に自分を重ねたのだ。

 結局のところ、摂政をいや、宰相だった男と対峙するには“()”がない。

 力がないと何もできないし、誰も守れないと知っている。

「我は、カルス・ヴァン・ラインベルク=ドメル子爵は、貴族である前に騎士を得た、もののふでございます。武人とは、守るべき矜持と主人を得ておりますれば――」

 その肩を伯爵が引く。

「いいのか?! その言葉を吐けば()()()国が興せなくなるぞ?!」


「リフルを守るために国が必要なら、時など待たずに実行して見せます。が、それが夢であることは確かです...ならば、幼年王かれに賭けるのも同じ事ではないでしょうか? 敵が同じであるというのなら、ここは共闘すべきです」

 伯爵は口を閉じる――ラインベルクの意志は固いと悟ったからだ。

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