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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 女王エリザベータの帰還
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-30話 少年と剣士-

 マルは、お菊さんとその仲間たちに呼び出されていた。

 ちっこい子と大人のお姉さん方という構図だ。

 囲まれて、上からまじまじと見られている。


 短髪シャギーの髪を指で絡められて、そのサラッとした質感や2本のアホ毛を弄られる。

「あ、あのー?」

 不安そうに見上げ、お菊さんが悪戯っぽく微笑む。

「あなたが何の変獣者シェイプシフターか分からないけど...」

 お菊さんの手は、マルのミニスカートの裾にあった。

 ふわっと捲られ『にゃー』って変な声を発して、マルは座り込んでいる。

「まあ、インナーが丸見えで動けなくなるようじゃ忍者くのいちは無理よ!」

 これは悪戯だ。

 忍者装束には、ちゃんと短パンもある。

 が、それ以前に装束を捲ってくるような友人・知人がマルには居なかった。

 かつて、魔王軍では怖れられた魔法詠唱者マジックキャスターであり、こんなにフレンドリーに接してくれようとは。

 今が、なんとなく充実してて楽しい。

「あんた、もともと何の職よ?」


「魔法...」


「じゃ、魔法詠唱者マジックキャスターでこのイベント乗り切りな! てか、得意な職業で挑まないと、イベント中何回も脱出ベイルアウトさせられるかもよ」

 最後のトーンは冗談が抜けていた。

 確かにマルのインナーは柄ものパンツだ。

 課金アイテムと交換して手に入れたお気に入りで、その種類ばかり交換している。

 結局、ブラジャーまで手が回らなくなってシャツしか着ていない。

 まー本人もがっかりなぺたん子なので、シャツで擦れるとか、悪目立ちするとか気にしなければ――まあ、別段、問題は無かった。ただし、ベック・パパの過保護さえどうにかなれば尚、良しといったところか。

 彼は、マルがノーブラだと知ってからは、オスの視線が愛娘の胸元に行かない様、ブロックするウザい行動に走っている。

「もう、ローブ着てるから大丈夫だよ~」

 マルのローブ姿は、珍しい。

 初心者支援プログラムで指導官以来の姿になる。

 流石にフードまで被ると、光って見えるのは紅いだけになる。

 これはちょっと怖い。

「うむ! お父さんもちょっと安心」


「もう、パパったらー」

 仲のいいタダの親子だ。



 騎士6人のうち、4人は村を出たすぐ先の森で絶命し、残りのふたりも重症だ。

 従者3人は、応援を呼びに走ってこの場には居ない。

「っう...」


「大丈夫か?!」

 気を失いかけた仲間に声を掛けた。

「ああ、肩から下の感覚が冷たくてな」


「その腕はもう、死んでいる」

 ゆらっと立つ少年の目は冷たいものだった。

「3年、静かに暮らしてたのに...」


「この15を何事も無く乗り切れれば――」


「お前たち...来たせいで...来た? ...いや、どこから」

 少年の声が震える。

 紫と黒のもやが少年から染み出してきた。

 尋常ならざる悪寒、重圧プレッシャーに殺気が放たれる。

 小剣が異常な形の大剣に変わり、少女っぽい雰囲気のあった少年が青年に変わっていた。

変獣者シェイプシフターか?!」

 騎士の首が飛ぶ。

「?!」

 動きが早すぎてではなく、飛んで転がっていく首と揺らめく蜃気楼の向こう側から、こちら側に会話を続ける仲間の姿があったからだ。

「こ、これは」


「あっはー、残念だったなー賢者の奴ら! てか、俺を閉じ込めた娘も...はっ、無駄死にじゃねえか!!」

 雰囲気が確かに違う。

 長髪で、髪はボサボサであり寝ぐせの類もありそうだ。

 身体は成長して剣士という雰囲気だが。

「っおいおい、胸あるぞ? 賢者の奴ら魂を抜きやがったのか!?」


「なあ、女王ババア、生きてっか?」

 剣士の問いに騎士は、目を白黒させている。

 意味がよく分からない。

「っち、トロいなー。エリザベータの婆さんだよ!」

 悪魔っぽい雰囲気だ。

 いや、天上宮の主と同じ雰囲気だろう。

 騎士は、咄嗟に空を見上げている。

「あー、はいはい。そこか、んじゃ、勇者さまのご帰還って教えてこねえとなー」


「なあ、騎士さんよー」

 転がってる首を蹴り飛ばし、その対で膝を屈した躯にも声を掛けている。

「あー、やっべ...こいつもう死んでんだな。わりぃーな...」

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