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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 異世界の章 大魔法大戦
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-383話 エルザン統一戦争 ④-

 斥候部隊は1000人を用意した。

 これを、4人で一組、250組もの班をつくっている。

 斥候部隊には、上級将校がいないことも特徴だ。

 それぞれが各豪族からの選抜斥候兵であり、それらを1000人集めて組み分けを行いシルナクから、シズレ方面に放っている。

 1000人を隈なく利用するエサ子の運用法といったところだろうか。

「時に...援軍...ですが」

 ハティ将軍が心配そうな瞳で、じぃっと見つめてきている。

 エサ子らが用意した兵力は1万2千。

 シルナクの防衛に加担するのは銃士隊の2千人だけである。


「来ないよ、あ! 違うか...来るんだけど、マルちゃんが指揮するスライムナイト騎兵が100匹くらい。いや、もっと少ないかも...で、シズレからは先遣で5千が出てくる。多分、これを救出できるか否かで、今後の展開が苦しくなると思うわけ..で」

 ちょっとここら辺が怪しさを匂わせているのは、それ以上の神託めいた予知夢を見ていないからだ。

 エサ子はシルナクの騒動を少し前に察知した。

 夢で――この頃は、意識が勝手に飛ぶことが多くなった。

 これが温室の台座から転げ落ちる、あれらに繋がっている。


 夢を夢で片づけていないのが――湯船で戯れた結果、マルが瀕死になるという神託であった。

 これが無ければ、エサ子は1万以上の兵を出していない。

「でも逆に、シズレの兵5千を強襲する大公軍の背後をつければ、この戦闘は伯爵軍の勝ち目を引けるはずなんだ。ちょっとチートっぽく聞こえるかもしれないけど...ボクも細部まで教えてもらってないしね」

 と、エサ子は微笑んでいる。


 教えて貰えてないというのが神託らしさがある。

 エサ子の夢の中では、色白の線の細い女の子が登場する。

 華冠のような飾りの類を身に着け、裸体の上に薄い絹の衣を羽織っているような雰囲気がある。

 黒髪、ロングで艶のある姿であるから少女と認識しているが、実際に性別が容姿がといった観測はあいまいだ。

 それは、エサ子がそのあたりを全く覚えていな為である。

 トーキ映画のように無音の世界であるのだが、透き通った声のようなものが錯覚として聞こえ、イカ墨色のような映像の向うから、少女が話しかけてくる。

 右端、縦書きの字幕が上下に揺れながら映る世界。


「どうしました?」

 ハティが問う。

 静止画像のように動かなくなったエサ子を気遣った。

 意識が飛んだのではなく、以前見た神託を思い出そうとしていただけだ。


「だ、大丈夫...ちょっと、眩暈めまいが」

 エサ子自身も重要な戦力である。

 この神託で離脱するのでは、シルナクまで出向いた甲斐が無い。

 獲物である大戦斧を担いだまま、城塞の中で迷子にはなりたくない。

「無理はなさらないで...」

 と、声を掛け合っているところ、“メッセージ”の魔法を通じて“埋伏の軍を発見せり”の一報を得た。

 丁度、シズレ要塞から5千人が進発する時期と重なって、エサ子の不安もひとつ解消した。

《ここまでは夢見の巫女さんが献じてきた話と一緒だ。...あとは、100騎のスライムナイト騎兵か、3騎のゴーレムファイターか...どっち? どっちを送ってくるのマルちゃん...》



 マルの屋敷は、獣王街の水辺に建てられている。

 その水辺から水路と、堀を用意して人工的につくった島の上に二階建ての館が建っていた。

 マルとメグミさん(仮2)以外は、スライムしか住んでいない家屋。

 人の姿を殆ど見ない屋敷から、只ならぬ気配が迸っている。

 幸い、人の住む圏外であったというのも助かって、街が混乱することも、ニーズヘッグ卿が警戒することもない。

 が、マルの身支度を手伝うメグミさんは別である。

「本当に行くの?」

 と、告げる――私が、粘土巨兵ゴーレムファイターで出た方がインパクトは小さくて済むんじゃない?という献策だが、マルの首は左右に振られた。

「ボクの護衛も務める騎士たちだし、そろそろ世に出る頃なんだよ...たぶん」

 “はじまりの街”に残してきたクランの事も気がかりだ。

 エルザン周辺でも戦争の兆しがあり、ベック・パパとの連絡手段が見つからない。

 しかし、吟遊詩人に詩が運ばれるようなデビューを飾れば、或いはクランのみんなと合流できるかもしれない。

 そんな些細な希望が湧いたのも嘘ではない。

 この話に耳を傾けていたメグミさんは、優しく微笑み、マルを抱きしめてくれた。

 マルの鼻は、メグミさんの甘い香りを感じている。

「暫く離れるんだし、この香りを忘れないでね...」


「大丈夫! きっとエサちゃんがあっちで待ってるし。そんなに時間もかからないよ」

 照れながら、メグミさんの身体をぎゅっと抱き着いた。

 “待っている”という確証は、厳密にはない。ただ、感覚的ないや、直感的なもので繋がっている話だ。

 メグミさんにとっては、少しだけこの関係が羨ましいと思って居る。

 魔法使いであるマルに対し、ミスリル銀製甲冑(籠手、脚鎧、胸当てなど)を身に着ける意味が少しだけ不安を感じている。二、三日前に“キュアしの大聖堂カセドラル”を使用したばかりであるから、猶更に不安がよぎって仕方ない。


「...おまじない。無事に戻ってきてね」

 本当は一緒に行くつもりで、厩舎には馬も用意して鞍と剣を宛がえていた。

 しかし、マルはこれを認めなかった。とても頑なに、そして険しい表情でメグミさんを諫めた。

 “ボクが還る場所は、メグミさんの居るところだよ”と。

 だから、ここは涙を呑んでマルを見送ることにした。

 そして熱い抱擁とともにディープキスで送りだす。

「行ってらっしゃい!」

 背中を叩かれた、マルは屋敷の外に出る。

 かつて魔王軍には、番外というみっつの席が用意され、凶悪な遊撃軍を指揮する将帥があった。

 その一つに、スライムナイトを主軸とする魔法使いが指揮した軍がある。

 魔法使いは“紅玉姫レッドアイ”と呼ばれていた――屋敷の外には200を超えるスライムナイトがフルスペックな装備で林立していた。

 これが異様な空気を放っている。

「...はっ。集まり過ぎ...」

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