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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
本編 ゲームの章 若葉マークの冒険者
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-06話 勧誘-

 チュートリアルを終えた、マルは冒険宿に戻っていた。

 疲れたのでひと眠りする予定だったが、まさかの来客に少し取り乱した様子で戸口に立ってしまった。

 部屋の外で立っていたのは、昼間の指導官だ。

「いや、夜分に申し訳ない」

 と、部屋の灯りに照らされたマルの姿は、下着姿で半泣き状態の少女だった。

 まさか、就寝前に邪魔が入るとは思っていなかったので、『もう寝かせてよ~』という意思表示なのだが、指導官は部屋に賊が押し入ったのではと、咄嗟に抜刀して入室している。

 事態を把握した後、マルに対し床に額を擦るように下げまくった。

「申し訳ない! 私が邪魔ものだったようだな」

 と。

 そんな生真面目な指導官に対し、マルは――。

「じゃ、ボクのゆび舐めたら赦しちゃおうかなー」

 意地悪な赤い瞳を細めて誘う。

 指導官も『それでいいのなら』、そっと白くて小さな足を両手で抱える。

 口元にまで運ぶと、膝の奥を見て顔を赤くしている。

「はい、ご褒美タイム終了!」


「思い出して、おかずにしないでね」

 指導官の耳元でささやいてみた。

 からから笑って、笑いつかれて、マルはベッドの上で正座。

「昼間は大はしゃぎして、邪魔してごめんなさい」

 深々と陳謝した。

 一応、元の世界の上司からは『謝る』って事は大事だからなって教わってきた。

 だから指導官にはちゃんと謝ろうと思ってたと告げている。


「いや、それは気にしないで。それよりも重要な――」



 マルは、正座したまま指導官の話に耳を傾けている。

「マルちゃんを勧誘しに来た」

 指導官はクラン勧誘メッセージを彼女に送る。

 マルは、それを『ナビゲータ』に促されて開き、招待状の内容を確認している。

「今のは、ひとりごと?」


「ああ、ナビゲータ・システムって...知ってる?」

 マルの愛玩動物のような表情に惹かれつつ、指導官は――。

「滅多にお目にかかれないパーソナル・ガイドだな。ランダム発生故に、未だに発動条件が分からないでいる非常に珍しい初心者支援プログラムのひとつと聞いている」

 ちょっと小難しくてマルには理解できなかったが、『そう、それ!』といった風な応答に留めている。

 指導官はますますマルに興味を深めている。

「なるほど、かなりユニークな冒険者プレイヤーだとは思ったが...」


「ユニーク?」

 マルが傾げる。

「何れはどこぞのワールドからの転向コンバート者といったところか...いや、これは失敬。昔語(身バレ)りはマナー違反でしたね」

 とまた、深々と陳謝した。

 マルには『転向コンバート』とか『昔語(身バレ)り』なんて言葉の意味が分かる筈も無く、不思議そうに目を白黒させている。

「時に、返事を」


「いあ、その前に...もうちょっと詳しく」

 冒険者の集団といえば、元の世界では『緋色』や『黄昏の』とか、『疾風の』なんてのが有名どころだった。それぞれが魔王軍に立ち塞がって、局地戦において五分にも匹敵する強敵たちだった。が、この世界はまだ来て日も浅く、元のクランとはどうも雰囲気というのが違うような気がしていた。


「詳しくですか...」


「クラン名は『ザボンの騎士』といい、検索して貰うと我がクランの意匠が見れます」

 言われるがまま、クラン検索をかける。

 似たような名前で十数のクランが表示されたが、1ページ目上位に表示されたのが『ザボンの騎士』だ。意匠のフラッグには柑橘系の頭にタワーシールドとフランベルジュを掲げた騎士が描かれている。

 しかし、これはまるで――。

「カボチャの首なし騎士みたい」

 イメージに対して率直な感想を口に出して、マルは『ごめんなさい』と謝った。

 が、指導官は軽やかに笑った。

「いや、正にその通りです。クラン長の趣味でカボチャの騎士を選択したんですが、それでは芸が無いので『ザボンの騎士』と名乗るようにしています。まあ、他にも我々は皆、シェイプ・シフターの種族選択をしています...」

 と、打ち明けている。

 人豹ワーパンサー人狼ワーウルフ人虎ワータイガーなどの人型と獣型に変身できる種族の総称でもある。

 獣人という種族とは完全に別種で、案外、魔王側に多く参加してた。

 こちらでは冒険者としてクランというコミュニティを作って、人間社会にて逞しく生きているといった感じだろうか。

「マルちゃんにも似た雰囲気を感じたので、声を掛けました」

 指導官は、人犬ワードックの出自。

 今は、尻尾は見当たらない。

「特にどんな方向性?」


「方向性は『エンジョイ歓迎』ってとこですかね」

 マルの目がくるっと光る。

 いや、指導官のぱっと明るくなった表情に将来を感じた。

 そんな感覚だ。

「うん、いいよ! ボク、入ってみるよ!!」

 って、返事してた。


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