- C 1312話 伯爵令嬢と魔女の、 2 -
第二都市・ポートリー。
かつて領都だった街だが、美しい大聖堂を置く『乙女神信仰』のメッカ。
領主の城はなく、小さな佇まいの屋敷があるのみだ。
まあ、申し訳なさそうな低い城壁はある。
初代領主から連綿と受け継がれてきた年代物の屋敷で。
それぞれの時代の子供たちが足跡を残してきた――いわゆる歴史そのものだ。
これ、博物館にでも出来るような。
そんなつくり。
いあ。
まだ使用している人が居ましたね。
小王国・初代女王エリベートそのひと。
マーガレットの傍で侍女に扮するという遊びに興じている女性である。
さすが長命種。
女王に戴冠したその時から、精霊と契約して長命種となった。
先祖帰りしたってわけだ。
「その行動不思議、思いませんでしたか?」
同じ姓を持つマーガレットは、エリザベートの白い手を取る。
女王は払うでもなく。
自由に、魔女にゆだねて。
マーガレットはその真っ白な手の甲にキスを贈る。
「精霊石の万能感と不完全さを?」
魔女は続ける...
「これは呪いです! 縛りを与えて、強制的に長命種であることを放棄させる呪いなのです。しかし、陛下は今、そのくびきから解き放たれました。精霊石とは魂を書き換える装置なのです!!!」
歴代の王族たちに誕生と、別れの際に現れる精霊はそもそも半身だという。
精霊石によって強制的に分離させられたものだ。
分離させられた半身を取り戻す儀式が、戴冠式に組み込まれている。
「では、皆、戻れるのか?」
「無理でしょうな。先人が試行していない筈はありません...儀式もその方々の苦肉の策でしょうし。この術式も完全ではありません」
半身は守護霊のような形で本人の周囲に存在し続ける。
これをプロテクトされてた魂に刻み直す行為なので、誕生時に枕元に立つ行為が無ければ。
そもそも臣民の半身は何処にあるのやら、だ。
「なぜだ?」
王族の血統の問題だろう。
万が一、不具合が起きた時。
王族の決断が尊重されるようなつくりだったのかも知れない。
エルフ最後の王国の終焉。
いや、これは欲望だな。
支配欲が不平等を捻じ曲げた。
「聡明な陛下はどう思われますか?」
「わたしか? 退屈しのぎにはなるのかえ」
マーガレットは二度目のキスを贈る。
ならば...
「エリザベート・イクリンガスはここに精霊石の破棄を宣言する!!」
ま、内輪だけのものだけど。
この時、均衡が崩れたと言っても過言じゃない。
三つの始祖王家が破棄を宣言すれば術が停止し、石は砕け、島の結界が消える。
魔女曰く――始祖王家、ちょろいん。




