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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1951/2519

- C 824話 皇太后の戦い 4 -

 王都で最初の戦闘は、後宮軍と城州府軍の衝突からだ。

 王城から打って出ることは無い。

 仮にそんな数百程度の兵が飛び出してきても、焼け石に水だった可能性も。

 なにせ。


 後宮軍の敷いた1枚目の横列が速攻で溶けたからだ。

 兵数は3万以上。

 厚みは横列の組が、盤上の道幅一杯までで4組あって。

 ひと組で約500人ほどが隊となっていた。


 故に、横列が2千。さらに奥へもう2隊分――6千の横陣。


 その後ろには縦に厚くなった隊が構えた布陣。

 皇太后の本陣はやや後ろ寄りの構えだった。

「溶けるの早っ!!?」

 城壁の縁からこっそり覗いてた寧懿がある。

 心の声も、驚きのあまり口に出てた。

 ま、一緒に城壁へ上がった副官も似た心境だ。

「あれっ...、て?」


「宦官兵が当たったのでは無いのでしょう」

 那岐が市中に潜伏させてた、子飼いの兵といったところだろう。

 少なくとも、両軍にとっての衝撃的な溶け具合は、ごく一部のようだ。

 そのごく一部でも、戦績は戦績だし。

 隣の活躍を見て「俺にも出来るんじゃ?」と錯覚させることは十分に可能だ。

 地力では分が悪いけど。

「景気付けって、あれ?」


「寧景さまの鼓舞ですよ、あれでスイッチが入る者と...そうでない者があるように。っすー、後宮軍には陸軍と海軍からいい将が選抜されていますが、ことエリート意識が抜けきれていません。衝突する直前まで、奢ってたから」

 副官からの有難い甘言に耳を傾ける、寧懿。

 陽だまりの猫のようにころっと...

 寝転がりそうになった。


 いかん、いかん...作戦行動中だった。


 自制心が勝る瞬間。

 ただバツが悪かったようで、頬が赤い。

「じゃ、さ。じゃあさ、私たちだったら?」

 城壁の縁にへばりつく私兵を見渡す。

 寧懿とともに家長にしごかれた、戦友たちに向ける――わくわくな表情。

寧懿あるじと同じく、我々はそうですなあ、愉しむでしょうなあ。寧懿さまは如何です?」

 両手で顔を覆って、デレを見せ。

 恥ずかしそうに、

「私も、愉しんじゃう!!」

 城壁って壁で隔てた、ふたつの世界。

 王城側の方は守戦なんだけど、どこか及び腰な雰囲気があって――寧懿いわく、戦えば負けると見ている。市中で挙がった河州王府の旗は未だ遠く、1万にという兵にではなく、女王の()に包囲されたことによる精神攻撃は、肉体にも影響を与えると軍医の見立てでもある。

 癇癪で反乱している兄ってイメージから。

 脱却した、いあ脱皮かも。

「タネを知ってるから、いまいち王宮勢力に肩入れしなくなってる...そんなとこかな?」

 城壁の外では楽しそうな玉砕戦がある。

 城を枕に守戦で没するよりも、多少は楽しめそうな。

 いあ、激しく燃やした命だ。

 もっと楽しいはずである。

「女王は急性で倒れ、御隠れになられた――そんな事実げんじつ、ただの減点でしかありませんし。この2年間の執政が、双子の河州王おとうと君で行われてたのも...逆効果です。寧景さまから事前に知らされてた我々でも」

 心に小さな孔がある。

 空いたような気がする小さな孔だ。


 これを空しさといふ。

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