- C 816話 王都の戦い 6 -
泉州府軍を率いた将は若い。
外見からパッと見で、20前。
摂州王と比較すると、同じように見なくはないけど。
軍の学校へ行ったようには見えない。
いあ、そもそも。
陸軍相が素性を知らないというのだ。
「皆様方もお初に目にかかります」
ああ、お初か。
「――寧景が養子、寧懿と申します。この度の戦に、遅参しましたこと申し訳ありません」
寧景はボクの脇を嗅ぐ、この泉州王のことだ。
偽名なのか、名をころころ変える癖がある。
少し前までは寧孝だったようだし、その前は寧巴とか。
1年しか使わなかった名だと、寧桔なんてのもあったようだ。
で、当然。
寧景と言われて皆が困惑してた。
あ、届け出も出してないのか。
「分からなくも仕方ありませんね。元帥府の任が解かれて直ぐに解明したと...便りがありましたし」
察しのいい河州王が、
「叔父の泉州王殿か?!」
マジで飛んでた。
いや、軍旗を見てもピンと来なかった。
軍旗に府旗、仕える主人のを掲げるのはわりと戦場では当たり前で。
東洋王国では家の名より、主人への戦功が第一になってたから。
「と、すると...」
皇位継承権がちょっと増えた気がする。
養子とはいえ、王族の末席にある泉州府は開かれて千年以上の家だという。
いい加減、ボクを嗅ぐのやめて欲しい。
「いえ、家督は継ぎますが。王家に加えられるような、身分でもありません」
養子縁組の元の家格が探られたとこ。
寧懿はやんわりと、これをいなしたとこ。
探られて困ると言えば、困る。
素性がバレる可能性があったし、大切に育ててくれた身内にも。
「だが、親王はここに君を遣わせた?」
「(少し沈黙してた)無理を言って、兵を集めさせましたが。その通りです、殿下の読みに合わせて...家の者をかき集めた次第です」
泉州王が密かに鍛えた将器ってことだが。
那岐将軍に知られていない、若い将はこのあたり切り札にもなる。
「で、あるか」
◆
布哇浮島の反乱だが。
ハナ姉とモルドレッド卿の鬼神がごとく暴れっぷりで――鎮圧された。
自軍の死者は20名弱、負傷者は3桁を越えたけど大事にならず。
ネームドである、熾天騎士のふたりも治療中で。
モルドレッドは、無事に魔術師の腕の中にある。
ハナ姉の方はもう、返り血を浴びまくってて――風呂、どうです?
なんて勧められてるさまが滑稽というか。
「ハナ姉、暴れすぎ」
淡白な彼女は、冷めた視線でボクを見据えて。
「マルは、お姉ちゃんが居ぬ間にずいぶんと乱れた生活だったようだねえ?」
そう。
泉州王さんがマル吸いを覚えてしまったんで、その。
服装の乱れが半端ない。
で、その泉州王さんの察する力により、大事な成る前に撤収してて。
やだー!!
ボクが怒られ損じゃないかー!!!




