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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1933/2528

- C 806話 鬼将 河州王の野望 6 -

 マーカスから脱出するには、

 正規のルートである港湾施設から堂々と出る方法と、密かに()()()()()密航する2通りしかない。啄木鳥の治安向上策によって、他の浮島よりも警備レベルがより1段、いあ2段は高い域に達していたからだ。


 前者の堂々とは。

 ふたり増えた同行者の、正統なる理由を用意しなければならない。

 少なくとも、浮島のとくに学園の学生管理局なる部分と、中央の偉い人の許可が必要になるだろう。

 さて、そんなツテもないアテもないのは百も承知で。

「黒蜘蛛をカバンに押し込めば、一人分の枠は確保できると思うのですが」

 なんて、本気の本気、真顔で言う不知火に対し。

 雲雀と啄木鳥は本気で引いた。

「あ、あなた。雀ちゃんを何だと?」


「ま、コンパクトな荷物でしょうか」

 一流のスパイが考えている思考は分からない。

 いあ。

 甲蛾衆だって、そのひとりひとりはかなり優秀な諜報員である。

 その彼らをしても脱出で気なのだから。

「ボクをそこら辺の枕と同義か?!」

 偉くなったものだなと。

 やり合ってはみたけども――状況が好転するとは思えない。


「ダメですか」

 マジで荷物扱いするつもりだった。

 ま、ひとり枠があいたとしても。

「もう一人はどうしようもないぞ?」

 下手な嘘では、関係各所への根回しが必要で。

 かつ緊密な連携と、アップデートが必要になるからだが。


 恐らくは、そうした手でスパイが炙り出されてきたのだろう。

 無線封鎖、外界とのシャットダウン、不定期連絡船もない。

 必要があれば、マーカスから高速艇が出る仕組みだし。


 ま。

 自給自足が出来る時点で、()()()()()の成立だ。

 しかも、マーカスには国家機能さえある。

 自治政府みたいなより簡易的なシステムではあるが。

 王都が陥落した時のバックアップというものだ。

「じゃ、二つ目ですが?」


「ああ、うん」

 不知火に担がれてるズタ袋みたいな、

 黒蜘蛛が目を細くして...

「今、こうして盛大に追われてる状況かな?」

 ひとりが大きな騒ぎを起こす。

 それこそ飛び切り盛大な打ち上げ花火をだ。

 これで3人は顔パスで、島から叩き出されるはずだった――「故に、なぜ逃げなかった。いや、なぜ、脱出せずに戻ってきたんだ!?」――と涙目の暗殺者がある。

 死ぬ気はない。

 逃げ切れる自信はある。


 それでも、不安はあった。


 虚弱体質な不知火は彼女の尻を揉む。

「いつもなら、背中を丸めて本気怒るじゃないですか。それが震えてる...ま、そういう事です!! 甲蛾衆のふたりにも諭されまして、結局、皆で逃げなきゃ作戦成功じゃないって事です」

 みっともないけど。

 涙と鼻水が同時に駄々洩れてる。

 ずび~ってすすってるんだけど、ぜんぜん吸いこめない時があるようで。

「あの精巧な航空写真があるなら大丈夫ですよ!!」


「そうです! 生きましょう」

 背を押されたような珍妙なパーティ。

 みんな、ありがとう。

 黒蜘蛛の心は少し暖かくなった。


 ま、追手の脚は大分早いんだけどね。

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