- C 503話 カラクム塹壕戦 8 -
一方、
ナーロッパ連合軍の方もだけど。
勢いよく飛び出したら、戦車の砲撃により期待値の半分も進めずに、23日を追えてしまってた。
隠者による提案で、対空砲用に持ってきた火砲で精密射撃に挑戦はしたもんだけど。
「まぐれ当たりとはいえ。首を振られて尚、あの硬さとなると...長距離射撃は難しいのではないでしょうか? 賢者どの」
と、振られたんだけど――
隠者の方は、這い上がるたびに突き飛ばされて塹壕に堕ちてたから。
提案はしたけど、結果に至っては何も見ていなかった状況だ。
歩兵の誰かの、そのまた誰かから伝言レースよろしくで聞かされてもいたもんで、振ってくれたのは有難かったんだけど。
正直どうでも良かった、といえばそれまで。
「方針を変えましょう!」
先遣した部隊は、機械化の混成連隊。
その指揮所からの提案だけど。
「バルカシュ海から渡ってくる、或いは、外縁を通って挟撃してくれるかもしれない友軍を待つという話から? だったら先ず、その他力本願な考えを今、ここで捨てることね」
隠者の言葉に他意は無い。
ただ、素直に口にしているだけで、それが味方を作ったり、敵も作ったりするだけの話。
要は、世渡りが下手なのよ。
ま、ボクも上手い方じゃないけど。
波風は建てないかなあ。
で、カチンと来たんだろう...大人だけど、下でに出ていれば――なんて思われない筈は無い。
「では...?」
「このままで。幸い、カラクムの臆病者たちは兵質はともかく、兵数だけは多い。彼らにも頑張ってもらって24日の早朝から再び、攻勢に入るわ!!」
自分の魔法には全幅の信頼がある。
それらを駆使するんだから、こんな埃っぽいところで空ばかり眺める気はさらさらない。
これが、彼女の心情。
物理的に...
例えば、北方攻略部隊と、中継している補給所との補給線が数百キロメートルも長大化して。
そのスキマを狙う事が可能であるといったことは何も...そう、何も知らないでいる。
それらは指揮所の方も、理解していないけど。
隠者の揺るがない自信に翻弄されるように、彼らも根拠なきものに頼ることになった。
◆
そうなると、北方攻略部隊側で会議は踊った。
いや、攻勢下にあったナーロッパ連合軍を押し戻した“阿武隈戦車大隊長”の勇猛さは、それを実際に行った本人よりも有名となって...残念ながら『このあたりで、撤退することが賢明と判断します』なんてセリフがタブーになってた。
「厄介なことになった」
「愚痴とは、また...先輩らしくないですね?」
神格化もほどほどに。
「後輩の前では、結構な頻度で愚痴ってるつもりだが。まあ、いいや...戦車をトーチカのように使ったら、小煩いジジイどもが“これらの陣地で、何年でも戦い抜けます”なんて事を言いやがってた。司令は、歩兵大隊の連中相手に“如何ほどが健在で、あるか?”って問うたんだけども、あいつらと来たら、負傷者の数を帳消しにして...」
「戦う兵は健在なり!...でしたっけ?」
「なんだ、聞いてたのか?」
戦車掩体壕の中に滑り込む。
それぞれの壕内では、乗務員たちが這い出て、つかぬ間のひと時を過ごしてた。
エンジンの余剰電力で湯を沸かしたりしていた。
「航空科の教官方も愚痴ってましたから」
「航空科か、奇襲が成功しても着弾観測が主の戦場では、俺たちよりも肩身が狭い」
後輩の口がとがってる。
「立役者!」
「そうも如何とし難いところが軍隊だ。あの戦功は、だ...歩兵隊の高度な戦術によるものが“大”であるからして...」
「なんか頭痛くなりました」
阿武隈から『俺もだ』って言葉が重なって聞こえた。




