- C 499話 カラクム塹壕戦 3 -
塹壕の中は、ただの通路の他に地下へ続く部屋割がなされてた。
隠者も幹部の一人のように個室へ通されて。
「まあ、ちょっと土壁とか、女性の方にはいささかデリカシーに欠ける要素があるでしょうけども」
「気にすることはありません」
案内人である兵士が彼女を見る。
説明の途中だったんだけど、
「何か?」
「いえ、こういうワイルドなつくりを見たら」
ああって、半分納得はした。
けど、彼女の方はアウトドア派でもある。
陰キャのボクとはつくりが違う。
「個室である必要は無いんですけどね。私、将軍でも無いんで」
将校待遇ではあるんだけど。
この辺りはざっくりしてた。
それは、かつての世界線でも似た。
面倒なのだ。
こう“女の子”扱いってのがだ。
いや、いやいや。
彼女の上には姉がいるし、下にも男の子はいない。
けども、だ。
本名...王 真魚は変わり者...じゃなかった。
弟弟子たちの面倒をよくみれるいい子だった。
いあ、変な意味はない。
学校でも、ボクと違って教室だけではない男の子たちと、輪を作って遊ぶワイルドな子だった。
うん、真逆だな。
ハナ姉ともだいぶ違う毛色だわ。
「と、いいますと...大部屋、とか?」
「そうそう、そういうのでも良かったんだけど。やっぱり間違いが起きるとか、そんなんが心配?」
あって当然の配慮。
兵士でも細い男、大柄な男で千差万別だけど。
やっぱり総じて言えることは、男の力は強いってことだ。
人類最強のメスでも、メスはメス。
下腹に力が入らない時だって...たぶんある。
「そっか、まあ、着いた矢先に狙撃もされたもんね」
微笑んでた。
可笑しくて笑ったに過ぎないんだけど、
相手の案内役には、苦笑したようにも思われた。
その差がある。
《こりゃ、驚かせ具合が...たまらんなあ》
◆
蜂の巣をつつくとは――阿武隈は傍目からそう考えてた。
自分の裁量で軍を動かせるならば...
「即、撤退だ」
「その心というのが、昨日の補給線ですか?」
角のなごりを指の腹でなぞりながら、
「そればかりでもない。機械化から引っこ抜いた大隊規模の戦車部隊、これがネックなのは混成とはいえ、歩兵中心の我々にはいささか過ぎたる。いや、無用とも言うべき厄介者だ!! 貴重な化石燃料200リットルのドラム缶1本を平気で消費する底なしの胃袋に、われわれはまだ対処しきれていない。確かに画期的ではあるさ、マナとのハイブリッド機関というのは、な」
問題点も多い。
どっちかというと、軍艦も同じような問題点があった。
マナ鉱石と重油、或いはガソリンのエネルギー交換率が比例していない。
マナこと魔力量の方が環境にやさしく、かつ1MPで数メガワットに匹敵する。
故に鉱石の流通は、少ないのが頭の痛いところだ。
潤沢にあれば――戦争さえも変わる。
「まあ、確かに」
後輩が苦笑した。
理由、前途したように流通量は極めて厳しく。
東洋王国内でも産出量は流通量の3割程度であること。
「南方作戦の本来の目的は、地表あるいは海中内にあるマナ溜まりの調査であると、主計局の知り合いが答えてくれたよ。じゃ、何で未だ陸軍は頑なに大陸で燻っているのか...これは」
「当てつけですよね?」
ふたりの苦笑。
司令部の上司たちが咳払いするまで、然程、時間はかからなかった。




