- C 498話 カラクム塹壕戦 2 -
細長い幅広な笹の葉のような皿に、得体の知れない魚が載っていた。
これがワニのような風貌を持つ魚で、この地方では有名な辛味噌で煮込んだ郷土料理とのこと。
キレのある発泡酒にはよくあった。
「現場が駄々を捏ねる理由は確かに良くわかる。俺でも、全体が見えてなかったら単純な方法で、迎合するように身を寄せておきたいと考えるだろう。が、これだけ補給線が長くなっては、仮にそう、仮にだ...単なる配達ミスってだけでもそれを正常に戻すだけで、無駄に時間を取られて、反転攻勢をモロに受けるかもしれない!!」
「ああ、その話を現場に言えばいい」
ちょっと無責任にも聞こえる。
東洋陸軍の将校たち。
方面軍として展開しているのは、3個の旅団レベルに相当してた。
本国から持ってきた戦車なんだけども。
「虎の子だと言われて機械化部隊から分捕ったとはいえだ...流石に仕事をさせないのも、どうかと思うんだが。そのあたりは司令部付の阿武隈大佐どのは、如何、お考えかお聞きしたいところですなあ」
ワニ面の白身魚に箸が伸びる。
対岸の相手は阿武隈の話し相手だ。
同司令部麾下の車両部隊に所属している中尉さんだ。
「ため口...。っ、まあいいか」
阿武隈大佐は、額に小さな角の痕がある。
子供の頃に疱瘡を患って以降、成長期で消えるはずの角が残ってしまった鬼人だった。
「使えるものならば使ってるだろうさ」
「その謂れは?」
「まずは地形に即していない。そもそも大地の少ない我が国だ。最初の軽戦車が傑作機だったというのも、設計の方を見直すことが無かった...およそ、自分たちの技術を過信したことが敗因だと言える。バカのひとつ覚えのように、白服の口車に乗せられて...」
傑作軽戦車というのは、例の“白服”からの技術提供も受けて開発に成功した、無限軌道の2名載り装甲車のことである。魔界の現代的なものと比較すると、火砲の貧弱さ以外にも目立ってしまっていいところは無いんだけど。
ナーロッパでも配備が進んでいる戦車と比較すると...
なかなかいい勝負が出来そうだ。
ただし、
「蜀公の領地、その大半が砂地というのは、予想できなかったのかとか。或いは、敵が塹壕に隠れて“もぐら”よろしく徹底抗戦の構えとなると途端に使い道に困る! これがまあ、大きな要因だろうなあ。北天側にも似た戦力があれば、戦車戦なんてのも出来たかも知れない」
が、それでも。
そう、それでも補給線が細くなっている今じゃあ、ない。
「この魚、ほんとうに旨いですね!」
阿武隈の前で箸が止まらない様子。
「君は暢気でいいな?」
「そうでもありませんよ。伏せておいた狙撃手トリックですけど...新着したというかの魔女にあっさりとバレた様子で、情報部の皆さんが血相を変えておりました。大佐、いや...先輩ならこの場合、どう手を打ちますか?」
司令部の上司たちからは問われない質問を問う。
やっかみ柄れているのは確かで。
白服批判をするのだから、当然と言えば当然かもしれない。
「魔女...か、ウォルフ・スノー王国からの来賓とも聞いてたが、その実は...」
ため息が漏れる。
「なるほど、引き受けたってことか」
「何をです?」
「ま、普通に考えればわかる。ナーロッパ連合軍の切り札さ」




