- C 496話 広州攻防戦 5 -
一旦、広州に戻る。
“斉”国の管理下に入った広州は、港湾都市としての整備は遅れた方だけど。
それは、同国にはそれ以前に多くの港があったからだ。
これらの港だって、台州と比較すると特区として、自治権がある訳じゃないから。
国をあげて整備された記録は少なかった。
ただ、それでも広州よりかはマシという見方はあったかな。
シティカーストとでも言うべきレベルの話。
◇
斉国絶対防衛ラインとか。
まあ、終末論みたいな切迫した中で、急ピッチも急ピッチ。
突貫工事の賜物で、広州は貿易港から堅牢な城塞都市になってた――これ、戦争が終わったら街としてOUTな気がするんだけど。
そう。
市民が住めるような状況じゃない。
広州にいた市民は“蘇”王国へ逃がしている。
難民指定された人々は100万人以上であるとか。
それでも、斉の規模からすると...1割にもみたない数だ。
幸いという言葉がふさわしいかどうかは、アレだけど。
国境の町だったから、市民を逃がすことが出来たという裏事情がある。
「そんなのまでガイドブックに載ってるの?」
ボクはエサちゃんとともに靴下の匂いを確かめてた。
彼女の癖一覧から、足の匂いを直接嗅ぐという行為は消えたんだけど。
靴下の匂いを嗅いで、また履きなおすというのが追加された。
その癖がボクにも伝染した...ってのは話したっけ?
「いや、これは国境をまたいだ時に関所の役人に聞いた」
ドライバーのアロガンスと、助手席に座るハナ姉。
ふたりのコミュニケーション能力は高い。
「そこ、今...私の性能について考えたんじゃないだろうなあ?!」
ハナ姉が割り込んで、
「この姿だから、人前で話せるだけだ。まあ、人前っても私からしたら全部、NPCにしか見えないし。現実世界の他人よりかは、何つうか...マシみたいな?」
無関心になれる分、楽って話だろう。
ここに知り合いが来てるよと、なるとハナ姉はどう感じるだろうか。
知り合いが親戚という家族だと。
「――城塞化した広州の“都市機能”は市民生活の営み優先ではなく、国を外敵から守るための物しかないらしいな。東洋軍の攻城部隊が舌を巻くシーンが来たって話だったよ」
アロガンスは、国境兵の話を続けてくれてた。
数キロも離れた地から、野戦砲による爆撃をするも有効打になっていないという。
ま、それは個人的に解せないことではあるんだけど...
◆
バルカシュ城塞から送り出される第一陣には、北天の残骸が多く含まれてた。
国土は自分たちで取り返すという気概は必要だ。
ただし、その軍の中に。
着任したばかりの“隠者”の姿もあった。
「あれ? 賢者どのは」
饗応役の武官がひとり取り残されてた。
彼女、何も告げずに乗り込んだっぽい。
「北天の状況はどんな感じ?」
揚陸舟艇にあるのは、千人を超える重武装の兵士と数両の戦車、或いは装甲車で――。
空を仰ぐと、複葉機たちが先行して飛んで行った。
「対岸には辛うじて踏ん張っている、友軍があります」
それでも兵力はギリギリで、塹壕要塞戦といったところだろうか。
1.5メートル程度でいい塹壕が、2メートル以上も掘らなければ狙撃されるような状況下で。
兵士の士気を保持するのは苦難である。
「ほう、狙撃か」
そんなチート張りの者が敵さんにあるんかねえって、隠者は物思いにふける。
彼女の感じた通り、それはチートプログラムが使われてた。
障害物越しに標的を見ることが出来るもの。
あるいは、障害物を見たままの平坦とするものとか...。
《さて、アンチプログラムは正常に動いてくれるか》




