- C 486話 陽炎の帝国 5 -
人工島“倭島”にて、造船所から進水する船たちの殆どは、軽空母ばかりである。
人工島は、外側にある半月型の島と内側の満月型の島で構成されてた。
半月型では大型の軍艦が建造され。
満月型では中型、小型の軍艦が作られてた――軽空母は、この満月型の島から進水したのだ。
「ケースメイト式を採用した軽空母か」
設計局の何某が線引きしているものがあって、それらの新型軍艦がぞくぞくと建造されてた。
とはいっても、最近の東洋艦隊は損失らしい損失が無い。
でも...建艦バブルは、ただ今真っ最中なのである。
「まったく、こんなに作ってどうしようというのだ?!」
「それはまた、厳しいご発言ですなあ? 陸軍の...」
平甲板が艤装されるだろう船を前にしてた男は、振り返ると...
「少佐だよ、君は設計局の方だね?」
噂の人物とは違うようだけども。
建艦の進捗度合いを見に来てた、役人のひとりだろう。
「これからは飛行ゴーレムの時代!!」
「ああ、少女や少年たちが弾丸の矢面に立たんようにするのが、大人の役目だというのであれば...確かに陸軍でも、飛行ゴーレムの導入が叫ばれてはいるね。ただし、こんなマナがほぼ枯渇しているような空では、如何に有能だというゴーレムも、飛ばすだけで一苦労だ。陸軍の双発“ライコウ”の滑走距離はご存じか?!」
踵を返し、相対する少佐。
東洋王国では陸軍は肩身が狭い。
だって、あっちこっち海ばかりなのに、陸の一つもなくて“陸軍”だというのだから滑稽なものはない。
その陸軍少佐も、相対する設計局の役人からすれば、だ。
《どうせ、予算の使われ方でも視察に来た...田舎者、いな陸軍省のコケみたいな方なのでしょう?》
って、バカにしてた。
「...ふふ、まあ、せいぜいバカにしていてくれ。我らの“ライコウ”の滑走距離は400メートルを超える」
「それは双発ゆえの機体重量のせいでは?」
海軍のは単発式。
きりたんぽみたいなのに翼を生やさせて飛んでる感じ。
それでも嵩張るので、せいぜい10数機くらいしか積めてないし、格納庫も小さいから平甲板に置き積で8機、格納庫に+αなんて状態らしい。海軍では、建艦工程の少ない軽空母を大量に作り少ない航空兵力の暈増しに躍起になってるという事だ。
そこら中が海という立地故の苦肉の策とでもいうか。
ウイッチキャリアが無くならないのは、飛行ゴーレムが少ないからである。
「戦艦作らなくなった理由は、まあ...わかる。そんな鉄があれば、空母に回したい理由もな」
「なんだかカチンと来る物言いですね?」
戦艦が要らないわけじゃない。
が、前ド級以降は、空母機動部隊に追従できる高速戦艦なるものが設計されている。
380ミリの主砲口径を持つタイプが多い。
陸軍省が煩いので、額面は“重巡洋艦”ってことにされてた。
「陸軍たちの目を欺いてるんだろうから、もうちっと上手く立ち回れ、な。それと、だ...海軍さんには行っておきたいことがある!! 北天戦線に目途をつける前に南方作戦ってのはナシだ」
丁度、海軍の関係者だったので愚痴を告げた。
ちょっとは気分がいいけど。
畑違いな気もした。
「な、南方?!」
「おっと、知らなかったか」




