- C 485話 陽炎の帝国 4 -
平甲板に整列する少女たちがある。
そうだなあ、歳の頃は10歳から12歳くらい?
“魔法少女”だと言って憚れない年ごろだと思ってくれてもいい。
ただし、カラフルなステッキは持っていない。
箒は東洋王国から支給の官品だ。
箒の房が細くなったら、変え時なので“申請書”を出して認可されれば、魔力測定時に新品が支給される。んだけど、房が細くなる前に欠員になるか、引退するかで。
最後までひとり1本というペースであるという。
ただし、壊した子はわりと多い。
「箒、壊すってどういう扱いだよ?」
12歳には見えない巨乳ちゃんが、補給庫の前で立たされてた。
艦内の通路は狭い。
すれ違う時には、片方が壁にへばりつく様にして譲らないといけないんだけど...
その肉塊は異常だった。
突き出された“若者の主張”は主語が大きかった。
そんな雰囲気。
「おーい!!」
通路側からの声。
補給庫にある士官が戸口から顔を出す。
「なに?」
「なに? じゃ、ねえよ!! アホか盆暗、このガキが通路を占有してて“セクハラ”で通れねえんだ。補給庫内に入れちまって通路を開けてくんねえかなあ?」
言い方ってのがある。
これ、艦長が聞いたら泣いちゃうよ。
ま、その艦長は平甲板にて横になって、少女たちの走る姿を愛でているんだけど。
◇
平甲板にあった少女たちは無事、全員が空へと駆け上がっていった。
「ちょっと寂しみ」
艦長が零す台詞じゃない。
甲板にて、整備員たちの目は何を言うでもなく“鬱陶しいなあ”って感じで見つめてた。
「艦長、そろそろブリッジに?」
当直士官が声を掛ける。
「なあ、君」
「はい!!」
身構えながらも、じっと横になってる男を見下ろしてた。
「今、上がった子たちを呼び戻すことは出来るかなあ?」
ちょっと意図が見えない。
「っ、つまり...ぼくはね、降りてくるあの子たちの転びそうになる、あのそわそわする感覚を今!! 体感したいんだよ。いや、その他にも...こうふわっと裾が捲れて、やったぞラッキースケベをゲットーとか、心を躍らせたいってのも欲を言えばあるんだけどさ」
狂ってると、皆が思った。
当直士官だって同じ思いだけど、相槌の打ちようがない。
「いやあ、それは難しいと思います」
「なんで?」
「いえ、これは作戦行動でありますから!!!」
前金で少女たちの装備を充実させた。
さらに勲功を稼げば、東洋王国からは少女たちに“魔術兵装”なるボーナスをちらつかせられた。
ああ、ドレスというよりも...
スク水だわ。
ぽんぽん冷えるから、ピンクの腹巻が付いてくる、とか。
あれね、公式でもアナウンスされて一部の狂信者が、ね。
全裸で土下座した配信動画が流れたもんで。
ちょっと話題になってた。
結局、お騒がせな女うp主なる者は、全身肌色タイツだったって話だけど。
どうも...
TKBは丸見えだったっぽい。
ま、そんな話は良いか。
「えー、一回、一回だけでいいから!!」
食い下がる艦長と、当直士官は首を縦に振らない。
ここで戻ってこさせたら、再び飛び立つまでに約5分ものCTに入ってしまう。
1戦30分の第四次青島城塞対空戦に、後れを取るという事になる。
「無理です!!」
「融通の利かないヤツばかりだ」
上体を起こし、胡坐をかく。
艦長としてひな鳥を見送ったんだから、あとは無事に帰ってくることを...
願えばいいのにって思うんだけど。




