- C 469話 いざ、外洋へ 3 -
ノワールさんと、三白眼エルフの副長はボクたちの帰りを格納庫で待ってた。
いや、本当は格納されてた軍艦を見に来たら、艦艇が格納されてたスペースがすっかりなくなってたことに唖然としてただけの話。それで、この糞だだ広いスペースと飛行ゴーレムの建造した、ボクの帰りを首長竜よろしく待っていたというわけだ。
《左舷よりアプローチを開始! ガイドビーコンに沿って着艦を挑まれたし...》
アナウンスが響く。
艦内放送だけど。
艦の外にあるペンギンにも届いてる。
パイロットの腕の見せ所は、実はこの時である。
さあさあ、さあって。
固唾をのむ...っていうか。
誘導灯と、光のラインは斜め下に伸びていて、目視でわかるだけでも数百メートルはある。
エイ型のフリッパ下には、機体を固定する補助具も飛び出してて...
乱れた気流をモロに機体に受けて近寄るよりも、幾分か安全にドッキングできるようなアプローチ方法となっている。ま、それでも機体を水平に保つのは...難しいらしい。
《あああ、ちょっとみ、いや、ひだ...あああ~》
艦内放送の入力が生きてた。
航空管制用ブリッジは、フリッパ下に左右で2基ある。
格納されてある、ウイッチキャリアの発艦と着艦誘導を行うための指揮所なんだけど。
この時は、左舷ブリッジにすべてのクルーが集まって...
《いやあ、惜しい。今のは実に惜しい...》
って、つぶやいてた。
いや、いやいや、マジでマイクのスイッチ切れてないし。
◆
エイ型飛行ゴーレムの顎下っぽいところに、操艦・作戦用ブリッジがある。
本艦が巨大なので、ぱっと見だとまったく分からないようだけど。
よーく目を細めると...なんとなく見えてくる、らしい。
この“コウテイマンタ”級が建造される以前だと、最大級と呼ばれる飛行ゴーレムは“カイザー・ヴィルト”しかなかった。聖櫃の連中のソレでも、エイ型の作戦高度を飛び越えることは、おそらく不可能であると仮定して...。
艦上部(背部)の武装は、ささやかな程度しか配置してない。
ノワールさんたちのクルーは、操艦に携われない場合...この、背部・腹部に配置された機銃座へと動員される兵士となってた。
うん。
それが嫌で、ボクの存在が必要だったのだろう。
いま、ウナちゃんの前に差し出されるような形で、ボクが対峙してる...わけで。
「何?」
「えっと...」
神様でも拝むようにノワールさんが柏手をすり合わせて...
「あ~ ノワールさんたちは船乗りな訳で...彼女たちにも、軍艦が割り当てられると...そのぉ~ いいと思います!!!」
言っちまった。
仕事を割り振る上司と、抱え込む上司がある。
前者は、適材に敏いんだけど。
終わった端から仕事が降られるので、その終わりというのが見えない。
後者の抱える上司は、割り振りが苦手。
人材も、個人の親しい人間がターゲットに成り易くて、決して適材とは言い難いものになり...結果的に全体のパフォーマンスが損なわれる。いや、機を見逃すといった方がいいか。
ウナちゃんは、前者にちかい。
魔王としての仕事もそれなりに熟しているようだけど...。
忙しそうには見えないし。
「ま、分かった。いや、ちょっと...わかった」
首を捻ってるけど。
多分、伝わったと思う。
ただ、考えてみる――みたいな言葉は効けなかった。




