- C 468話 いざ、外洋へ 2 -
「この世界も、あちらの世界もNPCの癖によく喋る、よく笑うし、よく動く...AIが人間をベースにしたため、数万人の個体が良くも悪くも人間らしく振舞っている。マルが危惧しているのは、どっちか分からないって事だけじゃないのだろう?」
ハナ姉は仰向けになって、ボクの方を下から見上げてた。
難しそうな顔をしてたから...
ついつい、参加してしまったのだという。
「聖櫃の連中が分からなくて」
古代のテクノロジーの押し売りをしている、テロリストというのが“やられた”側の言い分。
やらかしてる連中の言い分は、聞いてみない事には分からないけど...多分、良かれと思ってとか、そういう類の境地だと読み取れた。
いや、やられた側が... そういう認識にあるって事なのだろう。
「元運営側だったマルに聞くけど」
「何?」
「人口の増加について...」
最初は、テスターさん2万人からスタートした。
AIによる試行錯誤を経て、環境に即した人々が誕生する――シミュレーション内部時間で、2回はミレニアムを迎えたころの話だ。
この時期が第一文明時代。
ブレーメル・イス第一帝国っていう広大な支配領域を持った国が興されたころ。
うん。
いろいろあったなあと。
世界人口はこの時点で“さいしょの人々”(=テスターさんたちのこと)2万人から約100万人へと増えてた。
そして戦争が起こって、人口は激減。
見えてた世界も狭かったし、そんなに広く分布してなかったしねえ。
帝国の版図が分裂し、各々が独立していく中で、より広範囲に人々は増えていった――「増加はするんだ?! なら、より人間らしいNPCたちの中から聖櫃のような、考え方を持った自己中心的な人々だって...」
ハナ姉の手が、ボクの頬を挟み込む。
ぷにぷにした頬が楽しいようだ。
「増加と半減を交互に繰り返すようにして、人々は営み続けてきているはず。国家の単位が都市だったところに、人口爆発が生じれば、食糧問題や上下水道による不備によって、疫病や戦争が生じて増えた人口がナリを潜めるとか... 他にも天変地異で灰の中に没した地域も、たぶん...聖櫃たちは、そんな形で終わる都市に技術を伝えて回避する力、抗う力なんか授けようとしたんじゃないのかなあって...思うんだけど」
ハナ姉は肩を揺らしながら、
「人口爆発するはずだった地域が、仮にだけど計画的に人口調整を行い...第一次産業の生産力を上げながら都市国家の運営が出来たとしたら?」
それは理想的な夢だ。
けども、そんなにうまいことは行かない。
単位は、城塞都市ごとに国家がある。
一方が豊かで、ある一方が貧しいのであれば“争い”が生じることになる。
戦争で養える数を調整できるうちは、
「いや、ないか...聖櫃が世界の救世主を気取るのであれば、救済すべきは人々が争わない選択肢!!」
ハナ姉はボクの回答を待たずして、解決に至る。
そう。
聖櫃は壮大なる実験をしていることになる。
その実験は、片方に与えた技術は独占傾向になるという、回答の統計でも取っているようなもの。
今のところ...
十中八九で、独り占めに張りが触れてた。
ま、これをして彼らはテロリストだというのだ。




