- C 465話 勇者の備忘録 5 -
ボクに襲い掛かった人虎族のベックはハナ姉の拳で、地中深くめり込んでた。
うっわ~ ハナ姉は怒らせちゃダメな人だ。
「存外、腑抜けになったか」
地中にめり込んで、白目むいてるベックへの言葉。
投げるにしても...
せめて、
「ほかにどんなセリフがある?」
マルを犯そうとしたのだぞ、だって。
いや、犯されそうに見えなかったでしょうに...
いや。いやいや...
ここで彼女に反論しちゃいけない。
そ、そうですね。
「えっと、ベック...さんは、今でも嫌い?」
「逆に問うが。このふたりに好意が持てるか?」
こうい?
「好意だ、行為ではない!」
利き腕の拳をグーパーしてるハナ姉。
殴り倒し足りないのかな?
「うーん、ちょっとムリ。最初は不注意で、死亡させちゃったから負い目があったけど。蘇生させてからの印象は相容れないって感じ...。出会い方が違ってれば、あるい、わ?」
違ってれば、第一印象は変わるのか?
ベックから、舐めまわすような視姦を受けてた時から、彼女はそこにあった訳だし。
同じ幼女属性だからって、彼女も同じって先入観を持っちゃってた?
そうなると。
出会い方だけではなくなるなあ。
仮に、ロリコンのベック...さんは、ボクを見る目が他と違うと、彼女も勘づくのだから。
うん。
やっぱり相容れることはなさそうに、思える。
だって...
『ソレは、あたしのだあ!!!!』
ってゴリラみたいな腕力で、襲われるのはボクの方だし。
結果的にはふたりと決別する道しかない気がする。
「うん! ハナ姉の言うとおりだと思う!!」
これすっごい笑顔だったと思う。
一番いい笑顔。
で、
ハナ姉に平手を貰った。
奥歯が折れた気がするし、鼻血はもちろん、聴覚喪失、視覚の不調が...拡張現実宜しく、目の前の視野内に表示され、強制覚醒させられた。
タンクの中で跳ね起きて、
タンクの天井で頭を打って爆沈。
ボクは再び、仮想現実世界へ戻ってきた。
「バカもんがあ! 他人をその一面だけで判断しちゃだめだ。ベックは確かにデリカシーのかけらもない変態だ。自分が正常であるかを確かめるために、処女だったあたしをレ〇プした男であるけども...それは別の形で始末らせる。が、それはそれ...ギルド長としての責任感や、仲間思い、他人への気配りとかは、また別の話だからな。好き嫌いも見方によるだろう」
え~
「はあ...鼓膜、破れました」
「マルは頑丈だから、大丈夫」
いや、それフォローじゃないです。
聞こえてませ~んってアピールしたんだけど。
この姉も、こん棒で殴ろうかとも考えた。
「なあ、マル」
姉が肩に腕を回してきた。
潰れてない鼓膜へそっと囁く...魔力が籠った言霊で。
「お姉ちゃんに今、何をしようと考えたんだい?」
あ、ダメだ...この人には勝てない法則があるんだ。
今、そういう風に悟った。
◇
深い穴から這い上がってきたベック...さん。
ボクに脅しをかけるハナ姉の背後から――
姉が宙に浮かぶ様、それを目撃した!!
見事なジャーマンスープレックス!?
格闘家出身のベックならではの技。
しかも、ハナ姉の巨乳をまさぐるほどの兇悪さもそこにあった。
やられてる方は...意識が無くても嫌悪。
見てる方も嫌悪。
「やられたら倍返しだあ!!」




