- C 356話 雨が降る。瞬く間に、洗い流して... -
ボクは、スク水を脱いでた。
脱衣所だからね。
そっと、たたんで籠の中へ。
フェイスタオルを胸と腰に巻いて、浴場へ。
そこには先客である、
エサちゃんと、ウナちゃんがいた。
ふたりは全裸で半身に構え――握ると『ピュムゥ』って鳴くバナナを持ってた。
たぶん、西部劇の一幕みたいなのを、演じてるんだと思う。
「三つ数えたら、振り返るんだ!」
...ぞ!
って言い終えてないところで、ふたりが振り返ろうとした...
ふたりは、お約束の転倒をかましたわけだ。
これがまた、痛そうな。
エサちゃんは、横向きに倒れて右わき腹と、右ひじの殴打。
「ぐぎゃ!」
鳴き声からして悲鳴じゃないし。
ウナちゃんは振り向く前に、滑ってた。
あれは、軸足を完全に石鹸水に取られた感じの...
顔から床のタイルへキスしに行った感じだったから、相当ヤバいと思う。
血がすげぇー、でてる。
「ムヒさーん、ヒールは?」
音信不通。
どうやら、不在のようで。
◇
ウナちゃんの治療は、ボクがやることにした。
彼女の横に膝をついて、手のひらを翳す――「痛いの~ 痛いの~ 飛んでいけぇ~!!!」――てのを呪文の詞としているから。傍目からすると、そんなんで大丈夫?という目で見られる。
勿論、問題はない。
ただし、大勢のけが人をと同時に治す時と比べると、いささか加減が分からない...訳で。
個人相手だと、治癒殴りっていうデバフを与えてしまう。
「ダメ、それ以上は!!!」
カップ麺の出来時間でも図ってたように、
エサちゃんが窮屈そうな声で叫ぶ。
ああ、あの子もけが人だった。
「おっととと...」
ちょっと遅かったというか...
俯せのウナちゃんが急にもがきだし、激しい痙攣に襲われた。
それはもう、身体全体で跳ねるように。
で、
弾けた。
ああ、もう一瞬という外なく。
成す術もない。
脱衣場から、やってきたクロア陛下が悲鳴を挙げて――
キルダ・オリジナルが衛兵と共に現れた時。
ボクは真っ赤に熟れたトマトのように見え、ウナちゃんはズタボロの肉袋のようだったという。
情けない話...
ボクも何が起きたのか放心してて、覚えてないんだわ。
ん...目の前が真っ赤になったのは、ね。
記憶は、そこでストップ。
◆
夜明けとともに凄まじい攻防戦が幕を切った。
四領首都・前衛攻防戦ともいうべき大戦闘だったという――過去形なのは、壮絶だったけどその戦いが天領軍による、一方的な虐殺で幕を閉じたからだ。
第五艦隊が解析と、起動実験の為に格納庫に封じてた、ゴーレムによって一時は危ぶまれてた戦線が好転。狂戦士化した魔狼族を複数も相手にして、一騎当千の大活躍した者がある。
彼女は、ハナ・コメ。
ボクの義姉だ。
「どしゃあああああ!!!!」
粘土巨兵のオリジナル版が、ここ魔界にあった。
しかも、ハナ姉の専用機としてボクが設計し、建造したタイプがだ。
錆びついて動かないものと思ってた、USBランチャーもハナ姉を認識すると、尻尾でも振るかのように動き出したというのだ。
パワードスーツのゴーレムと違い。
全高15メートル前後で、他を圧倒する威圧感が武器のひとつだ。
一領と、二領はこの機体から吸いだしたデータを基にして、パワードスーツへと転換させた。
正当な進化としてはアリだ。
ボクだって、ベック・パパという“オタク”が居なければ、全高15メートルとかいうアホみたいな大きさにはしなかったけど。逆に獣王の叔父さんみたいな、アホほど大きい御仁と戦うなら...これもアリだと思う。
「ど、どうですか?」
パワードスーツらが2、3近寄ってくる。
ハナ姉の活動範囲にまで入ることは無いけど...
どうも、及び腰というか。
彼らにしたら、
『骨董品ですよ?!』
...だった印象だから。
眠ってたゴーレムの意思か、否かの区別に困ってた。
「おう! 問題ない問題ない!!! なんて言うか、調子がいい...誰か愛情込めて手入れしてくれてたのかなあってくらい、ご機嫌なんだわ」
ハナ姉はシートの上で仰け反ってた。
バイクに跨るような、前傾姿勢で操縦するタイプだから、同じ姿勢でいるのは少し疲れる。
仰け反ると、これはこれ背もたれが欲しくなった。
《マルにシート面の改善要求だすかなあ》
だって...




