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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1465/2523

- C 340話 侵略者たち 15 -

 馬を走らせ、盛り土を上る騎士らを待っていたのが銃弾の雨だった。

 深い堀からは、その上にある陣地が見えにくい。

 もって、ガリムの城さえも見えないのだ。


 堀に入るまでには、目視で目標を定めてたはずだ。

 が、いざその時となると如何だろう。

 覆い被さるような土壁の前に、集団心理で方向感覚が欠如する。

 あれ、俺たちは今どっち向いてるんだっけ?ってな、アレだ。



 枢機卿は、馬上から指示してるけど。

 兵たちが上手く動かない。

 攻撃してくる兵が、その堀の近くに居ないから...

 とにかく這い出して見たら、落とし穴に堕ちたみたいな()()も散見された。

 それは本当に、事故なのだろうか。


 暫くすると、最前線から逃げかえってくる雑兵たちが出る。

 戦う事が俺たちの本望みたいな、狂戦士たちが逃げてくるのだ。

 異常でしかない。



「それでおめおめと...枢機卿あなたも逃げ帰ってきたと?」

 ちょっとキツイ言い方だったけど。

 モル陛下の言葉には逆らえない。

 事実、枢機卿は逃げかえってきた――損失の兵は全体の1割にも至って無い。


 それでも...兵士が逃げ出したのだ。

「ガリムを、半円形に囲んだ長大な堀切。其処からそびえる巨大な壁...俺たちの領国に入り込んだ()ってのは、他人の土地に飛んでもない要塞を残していきやがったな」

 陣屋の中の全てが『へ?』なんてマヌケな声を出す。

 だって、ジンは..

 いや、魔王はもう、敵がいないようなことを呟いたからだ。

「最後の残り香をお前らは嗅いだんだろ? どんだけ臭い屁をかまされたかは想像に難くない。いやいや、枢機卿おまえら付き合いいいよな」

 魔王ジンの高笑い。

 豪快に唾飛ばして笑ってた。

「旦那さま?」


「あ、わりぃ...六領の奴らはもういねえだろ。モルのヤツが借りたレンタル砲で、こっちの尻の毛まで毟られた砲弾が、ガリムの本丸も直撃させたんだ。でなけりゃあ、死ぬ気で戦うってのは六領あっちも同じさ。あそこの魔王も、いくさと女は大好きだからなあ」

 碌な奴が居ない。

 魔王ってのは、最低ですね。

――なんて呟いたら、ムヒ姐さんから尻を叩かれました。

 彼女曰く、

『魔王とは、統一王朝を守護する各地の藩主、太守なのです!』

 だって。

 王さまじゃないんだ...


「ただなあ、如何っすかなあ...」

 ジンがもじもじ、くねくね動く。

 こうキモイというか。

「煮え切らないですわね!!」

 あ、やっぱりモル陛下がキレた。

 バシバシ背を叩く。

 怯える枢機卿。

「ぶほぉ、...いや、要塞残してったろ。攻略しなくちゃダメかな? アレ...」

 要は、ジンの勘では()()()()()()()()()なのだそうな。

 ただし放置するのも障りが悪い。

 パンツの中でイチモツが、普段より左へ鎌首を擡げてるような、おさまりの悪さがあるらしい。


 そうですか...

 ボクには分かりません。

「枢機卿どの?」

 モル陛下が振る。

 難しい顔で...

「なんで私が、女王に()()の話をせねば成らんのですか!!!」

 ごもっとも。

 部下にと、振り返ると――「枢機卿しか残ってませんもの」――と、女王は告げた。

 この天幕には3人しか居なかった。

 従者や奴隷は、ノーカンである。

「そんなあ~」



 六領軍リンクス殿下御一行とは言っても、敗軍である。

 ガリム城からけが人を、運び出すのに難儀したような軍にも見えない。

 征伐にかこつけて絞り出された農兵にしては、精悍な顔つきにもなっただろう。

「アニキ?」

 集まる従弟妹いとこたち。

 リンクスが最年長者であるから、頼られるのも責任と義務の一環である。

 そういうものだと理解してた。

「心配するな、王陛下も何もできないさ」

 孫や曾孫を罰すれば、その父や母が敵に回る。

 まして総司令官であるパブロンの逃亡は、すでに軍務相の耳に入ってる頃合いだ。

軍務相あのひとは、元帥が失脚することに喜びを感じるタイプ。何も心配することは無い...」

 と、馬上から勇気づけてた。

 ま、遊興中の魔王にも“元帥が陣中より失踪せり”なんて報せが届いてて、王はその場で伝令兵を叩き殺してた。

 六領もちょっときな臭い感じで、ゾッとするんだけど。

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