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ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1464/2524

- C 339話 侵略者たち 14 -

 ベックとヤウ公爵夫人の一軍は、連戦連勝だった。

 北方戦線で戦ってた有力な豪族たちが、ベックの調略によりごっそり引っこ抜かれたのが大きい。

「今でも分からぬ、何故、豪族かれらは味方したのだ?」

 この話は、夕餉を共にするたびに話してたものだが。

 やや、頭を抱え...


「彼らが本当に欲しい()()であったから成立したんだ。...そうだなあ、この世界での収入源って何だと思う?」

 公爵という身分かたがきに問う内容でもない。

 ただし、彼女が身分相応の本当の貴族ならば、この講釈そのものが茶番でしかない。


 彼女の出自はジンの姉という立場だけだ。

 確かにある有力な族長の娘だ。

 が、それ以上ではない。

 貴族教育されてきた訳でも、特別な身分制度の人じゃないから、感覚的には村長の娘的な域を出ない。難しい料地経営や、借財とか財産なんかも他人ひと任せだったところがある。

 それで損したとは、本人は思っていない。

 考えたことも無かった。


 しかし、ベックはそれを知っている。

「そこで頭を抱えられると、俺の方も困る」


「むむ~う、うん?」

 子供っぽく唸って、毛皮の敷布の上に転がった。

 今は野営の天幕にある。

「土地だよ、正確に言えば“耕作地”だ! 麦や米でもいい兎に角、口に入る食料ものを作ることがひとつ。他にも豊かな草原、豊かな水源、豊かな森に山などがあれば、肉や毛皮が手に入るから、これもそれぞれに財源となる!!」


「水とはなんだ?」

 金の盃の中を見る。

 水が入ってる。

 飲み干せば無くなるけど...

「それはな、酒に変わるんだ。果実酒や、蒸留酒なんかも水の質で、随分と変わるものでな...作り手の者たちは“水”にこだわりがあると聞く。できれば、豪族たちの中で酒造りに精を出す者があれば、だ。水源のある土地をエサに働かせるというのも...手段のひとつなんだ」

 ベックのは受け売り。

 だけど、モノにはしてた。

 獣王は、彼に領地経営と人の動かし方を伝授させた。

 いずれ必要になるだろうって。


 まあ、それは――愛娘の婿といういう意味だったのだけど。


「じゃ、じゃあ」


「有力かつ仁に篤く、義理堅い豪族だけを引き抜いてる。差別は、恨みを買うから...すべての豪族たちには親書を送り誘っておいたけど、真に欲しかった()には、最も具体的な条件で調略した。靡くか靡かないかなんて賽を投げるような、確率ではなく...確実に手に入るよう仕向けて、引き込んでおいた」

 十全なる諜報活動。

 および工作活動にも、気を配った。

 攻略する貴族たちの領地も、予めランク付けしておいてある。

 有力豪族が、子飼いの従士に成るよう手配までもした。


 ヤウ夫人の周囲は驚嘆と怖れを抱く。

 ベックの手腕と行動力に、だ。

「それでは...お前が私の部下に」


「ああ、気分のいいものではないだろう。今のところ、表立って排除してこないのは――君の寵愛を一心に受けているからだろうな。で、ここまで説明されて...君はどう思った?」

 ナイフは坐しているヤウの真横にある。

 一度は転がり、

 再び、上体を起こしてベックと相対してた。

 胡坐をかいた膝に肘突きながら、

「お前は、如何して欲しい」


「参ったな、君は公爵の()も出来るのか!!」

 彼女はやや困っているけど。

 ベックは、

「君が抱きたい」



 六領軍の引き際が読みづらかった。

 明らかに指揮官が変わった、という瞬間はあった――斥候で潜ってた者たちが、元帥が逃げていく姿を目撃したからだ。これで瓦解すると、誰もが予測し、枢機卿でさえ警戒心を解いたのだ。

 全軍を以て、ガリム城塞を襲撃した。


 全く抵抗が無かったのは、外堀の深い第一防御陣地まで。

 気をよくして突っ込んだでは、良かった。

 第一防御陣地から、第二防御陣地までは緩やかな坂になってた。

 盛り土がしてあって...

 中腰にさせられる造りだ。

 上体を起こすと、途端に尻もちをつく。

「深く掘り下げた堀の土砂で、盛り土か...小癪な!!!」

 慎重な枢機卿から、この言葉を引き出すだけでも値千金。

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