表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハイファンタジー・オンライン  作者: さんぜん円ねこ
陽炎戦記
1220/2517

白地に十字架を、その左上に三本の百合が描かれ

 私はフィズ・アーチペラゴーニュ。

 職業はスカイトバーク王国王位継承11番目、末姫だった流浪の要人。

 いやあ、自分で言っててもかっこいいと思う。


 でも、文無しなのは内緒。


 だって、これがバレたら――(ちらっと、周囲を見る。

 だって、バレたら求心力なんてなくなるよ。

 こんな小娘に何が?!


 まあ、人に害をなす程度の魔法(=数が限られてるから、タゲを見誤ると...)と、齧ったていどのナイフ術くらいしか取り柄がない。一緒についてきた侍従長が頼みの綱ではあるけど、結局はおじいちゃんだから...寄る年波には勝てぬなんて言い出したら、私の命運も尽きるわけで。

 ちらりと、侍従長へ視線を向けた。

 彼は優しく微笑みで返してくれた。


 今でこそ侍従長って言ってるけど。

 王国では指折りの戦士だった。

 誰を基準にすればいいだろう。

 頭髪は今でも十分なほどあって、魅惑的な真っ白い長髪。

 左右の側頭部は短く刈り上げ、頭頂部から背中まで長い髪を...私のあげたリボンで結いている。

 なんというか律儀なひと。


 見た目は、お世辞にもイケメンとは、ね。

 ただ、背筋を伸ばして立つと――騎士をもたじろかせるだけの風格がある。

 これが歴戦の戦士然とした佇まいなのだろう。

 侍従長としての獲物は仕込みの直刀・レイピア。

 刺突剣だ。

「如何なさいました? 姫さま」

 ずっと見てたからかもしれない。

 片膝を突き、私の目線にまで体をくずしてきた。

「ううん、ちょっと不安に」


「やはりご家族のことを?」


「ま、それもある。でも、今の状況...これ、本当に上手くいくのかな?」

 資金力だ。

 今は、逃げる時の持ち出した()()で食いついないでいる。

 ほとんどの宝石は質に流れたし、王族という身分証明だって身体に浮かぶ紋様というだけで、実のところ真贋に必要だったハズの装飾類も売却済みである。()()を使って偽の皇女だって名乗れるだろう。

「そんなご心配ですか」

 彼は微笑み、目端の涙を指で拭った。

 それって涙流してまで笑うこと?

「たとえ偽物が現れたとしても、恥をかくのは騙る方なのです。着飾る者は外面だけを偽ることしかできないものです。しかし、姫さまの内側、ペンドラゴンの血統は身の奥にある皇族の証。これを偽ることなどこの世におりませぬ。いかに皮をぶっていようとも...です」

 皮か。

 確かに魔族たちも私を無傷で手に入れたがってた感じだし。

「故に、ご心配なさらぬよう...この“白ヤギ”めが姫さまを護り抜きましょう!!」

 って、私を安心させてくれる。

 心の平安は、父のように広い背中と母のような深い愛だ。

「それと、わたくしは...王国では3番目の戦士。冒険者のレベルであれば金色ゴールド・首輪チョーカー程度ですので、大船に乗った気分でハメを外すなんてことはしないでください」

 って最後にくぎ刺された。



 隠れてる地に船がきた。

 高台の屋敷?いや、ボロい灯台なんだけど。

 そこから見える海に軍艦が艦隊を組んでた。

「和洋折衷、まったく美しくありませんね」

 侍従長だ。

 背後に立って、私を守るような位置。

「和洋?」


「ええ、方々の利害が一致しているだけなので、それぞれの脅威度が低くなれば次点を争うことになるでしょう。それゆえに組織としての統一よりも、それぞれが表に出いるのです」

 老紳士の指が艦隊の中心をさす。

 見れば、船体後部に広い甲板があった。

「航空戦艦という新種です...水上器こと、フロート付き魔法の箒に跨った魔法使いたちを、航空戦力として利用する...グラスノザルツの新戦術から生まれた軍艦のひとつの姿です」

 戦艦の主砲は、艦首に集中配備させて砲撃力の低下を抑えたらしい。

 その分、船首側に重心がずれぬよう船体は長めとか、いろいろ問題はありそうだが。

 侍従長の指は、船じゃなくてそれが掲げる旗をさしてた。

「え?!」


「殿下が落書きされてたデザインを採用しました!」

 ペンドラゴンの血統を継ぐ、アーチペラゴーニュ家の新しい家紋。

 いや、この場合は王国に叛旗を翻した、抵抗勢力の旗だ。

 真っ白で純白。

 それはまるで汚れを知らぬ乙女のような――白地に十字架を掲げ、四等分された空間の左上に“三本の百合”が描かれてた。

 私は薔薇を書いてたつもりなのだが。

「フルール・ド・リス...です」

 意味は、王権らしい。

 王国はないけど姫だというのなら、()()()表現だ。

 ただ、ちょっと皮肉っぽいのは私だけだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ