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VSログ・ホライズン  作者: 『ログ・ホライズン』の作者さんとは関係ありません。
3/3

3つめ

(……もう6月も終わるな)


 僕がログ・ホライズンに出会い、もう2ヶ月が経ち、退職してから2週間が経とうとしていた。

 この2ヶ月は、本当にあっという間に過ぎていった。退職を申し出て退職するまでの間に、4月に入社した新入社員も配属され、季節も暑い季節へと変わり、職場は四六時中バタバタしていた。僕は、その間通常の営業に加え、新入社員の教育、仕事の引き継ぎをこなし、残りはのんびり過ごそうという僕の希望は一欠片も叶う事は無かった。


 今は有給消化中であり、時間だけはたっぷりある。貯金もほどほどにある。


 時間が無い時は喉から手が出るほど時間が欲しいものだが、いざその時間を手にしてしまうと持て余してしまうものだ。僕がログ・ホライズンを作ろうと決心してから、丸2ヶ月。事態は一歩も進んでいなかった。収入が無くなった分、後退しているとさえ言えるかもしれない。


(……参ったなぁ。何から手をつけようか)


 都内の大きい本屋を周り、技術書を立ち読みして周り、自宅のパソコンの前に書籍を山積みにしても状況は何もかわらない。


(……自分をバカだと思ってはいたが、これは手遅れみたいだな)


 僕は焦ってはいなかったが、自分でも何がしたいのか、はっきりとわかってはいなかった。当たり前だ、計画も無く、勢いで仕事を辞めただけで、オンラインゲームが作れるほど、世の中イージーモードではない。そうなると自然と、だらだら過ごして仕舞うことになる。僕の毎日は、滝のような勢いで消費され、無職、いやニートに相応しい生活を送るようになっていた。

 そうなると、うるさいのは親である。


 僕の親は放任主義であった。大学を選んだ時も、就職先を選んだ時も、退職した時も全て事後報告だ。小言を言われないわけではないが、「お前の人生だからな」の一言で、わがままな僕の決定を黙認してくれていた。退職した時もそうだった。

 だが、自堕落な生活を送っている事がどこからか親に漏れたのか、珍しく親に呼び出しをくらうことになった。


(……今更何をいうわけもないけど、ログ・ホライズンを作りたいって言っても通じないよな)


 僕の親は、ゲームに理解が無い。両親とも、テレビゲームに触った事が無いぐらいのレベルであり、何も言わないまでも僕がゲームをするのに良い顔をしたことがない。今回ばかりは、少し大きい小言を覚悟した方が良さそうである。


 電車を乗り継ぎ、久しぶりに実家のドアの前に立つ。数カ月に一回は帰ってきているし、何も感じるものはない。寒がりの僕はこの時期でもまだ長袖であり、駅から少しあるこの家まで歩いて来ると、軽く汗をかく。その影響か、脇の下もじっとりと湿っている。寒くはない、暑いのだが、なんとなく自分が冷えているように感じる。


「ただいまー」


 玄関の戸を開け、靴を脱ぎ、リビングへ向かう。父親が、いつものように洋画を観ている。トランクスに、ランニングシャツを来た中年の父親は最近少し痩せたようだ。


「おぅ、呼んじゃって悪いな」


 語り口から、父親の機嫌は良さそうに思える。椅子に座りながらこちらに振り向き、自分の向かいにある椅子に座るように促してくる。僕は、荷物を下ろしながら、椅子に腰掛け、カバンから取り出したペットボトルのお茶を飲み、口を湿らせた。父親は、唐突に話しだした。


「お前に話があるんだけど、お父さん癌なんだ」


「え?」

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