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VSログ・ホライズン  作者: 『ログ・ホライズン』の作者さんとは関係ありません。
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2つめ

「篠原さん!僕と一緒にネトゲ作ってください!」

「何を言ってるんだ君は」

 篠原さんは、職場の先輩だ。いや、もう既に僕は退職してしまっているから、元先輩とでも言えばいいのだろうか?歳が一回り以上離れているし、人生の先輩とでも言っておけばいいだろう。

 篠原さんは、こう見えても前職はネットワークエンジニアだ。サーバ構築とやらが得意技らしい。簡単なプログラムなら作れるって話も聞いた事がある。だが、前職を離れてからしばらく経つせいか、最近の技術には疎いとの事だ。

「君は、ネトゲを作るために仕事をやめたのか」

「はいっ、そうです!」

 篠原さんと僕は、いわゆる飲み仲間というものに近いだろう。先輩とはいえ、部署が違うおかげか直接的な上下関係になったことはない。ただ、酒好きという点が共通していたせいか、とても懇意にして頂いている。

「へぇ、ちょっと面白そうだな」

(……!)

 なんと意外にもちょっと乗り気だ。普通は、即効で断るか、説教が始まるか、話題をそらされるかのどれかだろう。何度も確認するが、僕はもう退職しているのである。今は、個人的に篠原さんと飲んでいるだけだ。深夜3時半、テレビではワールドカップの日本戦が流れて始めた。日本対デンマーク、正直引き分けがいいところだろう。負けても驚きはしない。先日行われた、初戦のカメルーン戦では、運良く勝つことが出来た。運良く。今、日本全体は勢いづいている。本戦出場の希望が見えており、開始5分ミスらしいミスはしていない。僕もこの流れに乗り、篠原さんの口説き落とすつもりだった。

「一緒にやるか?」

 篠原さんは、にやにやしながら、注がれた日本酒をくいくいと飲んでいく。

「俺もちょっと勉強しなおさないとな」

 そして、またくいくいと飲んでいく。前半17分、テレビでは日本が先制したようだ。

(……スルーされると思ってたんだけどな……)

 篠原さんは酒に強い。しかも何でも飲む。今日は、元の職場の飲み会にお呼ばれされ、その帰り、二次会を篠原さん宅で二人で飲んでいる。今日の篠原さんは、最初のビールの次は日本酒ばかりだった。もう5合ぐらいだろう。日本がまた1点いれたようだ。

「んわ。入った?んー」

 篠原さんは、完全に寝る体制に入った。

(……やっぱり酔ってたか)


 試合は、3体1で日本が勝った。こうして勝ちきる試合は最近では珍しい。僕の今日の感触も上々だったように思える。篠原さんがちゃんと覚えていれば。

 明け方、眠る篠原さんに声をかけ、家を出た。


 外は、もう明るく、通学する子ども達の声が朝を実感させてくれる。まだ涼しい時間帯であるが、今日もこれからぐんぐん気温が上がっていくことだろう。

 6月、梅雨まっただ中というのに、そこまで雨は多くない。なんとなく、今年の夏は暑くなるような気がする。


 貯金はまだ手を付けてない。時間もある。どこまでやってくれるかわかんないけど、とりあえず協力者もいる。勢いだけで退職した割に、順調に事が進んでいるように思える。


(……今年の夏は、忘れられない夏にしてやろう)


 退職直後の開放感は、何でも出来るような気がする。


 だが。この時にはもう既にいくつもの問題の影がちらついているのだった。

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