一枚の毛布と、甘い心音
「ひゃあ……っ、急に冷え込んできましたねぇ……。ご主人様、お風邪、引いてませんかぁ?」
夜が更けるにつれ、部屋の空気はしんしんと冷え切っていく。
鬼宮さんは心配そうに、自分の宝物である厚手の毛布を抱えてご主人様の隣にやってきた。
「あのぉ……ご主人様ぁ。もしよろしければ……この毛布、一緒に使いませんかぁ? 一人より、二人の方が……きっと、あったかいですよぉ……」
おずおずと差し出された毛布の中に、ご主人様が招き入れる。
「……失礼しますぅ」と小さく呟いて、彼女は隣に滑り込んできた。
最初は遠慮して、拳一つ分ほど開けて座っていた鬼宮さん。けれど、肩が触れ合うたびに「あぅ……」と小さく声を漏らし、顔を赤らめている。
「……あのぉ、ご主人様ぁ。……もっと、近くに行っても……いいですかぁ? その、寒いのは……身体に悪いですからぁ……」
もっともらしい理由をつけながら、彼女は少しずつ、少しずつ距離を詰めてくる。
やがて、彼女の細い肩がご主人様の腕にぴったりと密着した。
「……ふふ、あったかいですぅ……。ご主人様の匂い、すっごく落ち着きますぅ……」
毛布の中は、二人の体温でみるみるうちに熱を帯びていく。
鬼宮さんは我慢できなくなったのか、ご主人様の腕をぎゅっと抱きしめ、そのまま肩に頭を預けてきた。
「……ねぇ、ご主人様。聞こえますかぁ……? 私の心臓、さっきから……すっごく、トクトク言ってるんですぅ……」
至近距離で見上げる彼女の瞳は、潤んでいて、熱っぽい。
「ふわふわ〜」とした吐息が首筋をかすめるたび、ご主人様の心音も彼女に呼応するように速くなっていく。
「……私、ご主人様とこうしているだけで……胸がいっぱいになっちゃいますぅ。……あのぉ、明日も、明後日も……ずっとこうして、温めてくれますかぁ……?」
毛布の端をぎゅっと握りしめた彼女は、幸せの余韻に浸るように、トロンとした目でご主人様を真っ直ぐに見つめ続けるのだった。




