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第七十九話 作戦会議


 冒険者ギルドをあとにしたクエルたち一行は、そのシルフィード領都内でも最高級の宿へと移動していた。


「へぇ、良い部屋じゃねえか」


 自分たちに用意された部屋へと入った時のフウの第一声はそれだった。


 滞在型の宿の客室は、四人で泊まるには十分すぎる広さがあった。


「さすがは、シルフィード領都でも高級な宿なだけの事はあるわね」


 フウに続いて客室へと入って来たミレーヌは、広いリビングを見回すとすべての部屋を覗きまわる。


「ケイン、本当に家に帰らなくて良かったんですか?」


「うん、実家に帰ると、気が緩みそうだから」


「そう……ですか、わたしはケインのご両親に挨拶をしても良かったのですが……」


「そ……そうだね、今度時間があればね……」


 腕を組みながら、クエルとケインがリビングへとやってくると大きなロングソファに腰を降ろす。


「クエルお嬢様、荷物をお持ちいたしました」


 セリカとメイドたちが、複数の大きなカバンを持ってやってきた。


 カバンの中は、各自の着替えや武器防具が入っている。


「ご苦労、荷物はそこに置いておいて」


「すみません、ボクたちの荷物まで運んでもらって」


「ケイン様お気になさらず、これも我々の務めですので」


 荷物をリビングに置くと、セリカを残し他のメイドたちは部屋から出て行く。


「失礼いたします。 お茶をお持ちいたしました」


 メイドたちと入れ違うように、エリスがティーセットを手に客室へと入って来た。


 エリスがテーブルの上に紅茶の入ったティーカップを並べると、リビングに独特の香りがふわりと広がる。


「あら、良い香りじゃない」


 紅茶の香りに誘われ、寝室を確認していたミレーヌもソファに腰かける。


 湯気の立つティーカップを片手に、クエルは一息つく。


「くつろいでいる所悪いが、みんな明日の作戦会議だ」


 自分の荷物を漁っていたフウが、テーブルの上に巻物を広げる。


 それは、シルフィード領の地図であった。


 ティーカップを皿に置くと、クエルたちは地図を囲むように覗き込む。


「ここが領都、それでこっちが魔獣の森と呼ばれている森だ」


 そう言うと、フウは指先で地図に円を描く。


「想像していたよりも、広い森だわ」


 ミレーヌは地図を見ると、ポツリと呟く。


 地図に描かれている森は、領都の何倍も広い面積を持っている。


 寸法など精確ではないだろうが、それでも広い事に変わりはない。


「それでフウ殿、我々はどこで何を調べれば?」


「坊や、森に入った事あると言ってたが、どの辺りまで行った事がある?」


「えっと……この辺りですかね」


 フウに尋ねられ、ケインは地図を領都から森の中程なかほど辺りまでなぞると指を止めた。


「結構、森の奥深くまで行った事があるんだな」


「この辺りに開けた場所があるんです」


 ケインの説明では、そこに魔獣がよく集落を作るとの事。


 そのため、鍛錬の為に定期的に訪れ魔獣を狩っていたらしい。


「ほう、そりゃ大したもんだ」


「ケイン殿は幼い頃から、そうやって実戦経験を積んだのね」


 フウとミレーヌが感心する。


「よし、明日はその場所まで行ってみるか」


「フウ殿、その場所に何かあると?」


「わかんねえが闇雲に森の中を歩くより、目的地を決めた方が動きやすい。 あとは森に行ってみてからのお楽しみだな」


 結局のところ魔獣の種類や数など、現地に行ってみないとわからない。


 Aランク冒険者ではあるが、フウはあれこれ小難しいことを考えるより身体を動かす方が性に合っているのである。


「意外といい加減なのね」


「そう言うわけだ、坊や、明日は森の中の道案内を頼むぜ」


「わかりました」


 フウの頼みに、ケインは任せてくれと言わんばかりに自分の胸を叩く。


「ケイン、話は終わりましたか?」


 作戦会議とも呼べない話し合いを黙って聞いていたクエルが、ケインの腕を取る。


「話が終わったのでしたら、ふたりで何か食べに行きましょう」


「お、いいね嬢ちゃん、それじゃ飯食って明日の為に早く寝るか」


 ケインが返事をするよりも早く、フウが賛同する。


「何であなたも一緒に、食事に来るのよ!」


「坊やと同じパーティー組んでるんだから当然だろ」


「わたしは、ケインと二人で行きたいの!」


「クエルもフウ殿も、ケンカせず落ち着いて」


「そうだよクエル、みんなで一緒に食事をしよう」


 クエルをなだめるようにケインが割って入る。


「ケインがそう言うのでしたら……」


「領都の名物料理を出してくれる美味しいお店があるんだ、クエルを連れて行ってあげるよ」


「本当ですか、わぁ嬉しいです」


 不機嫌であったクエルの顔が、パァッと明るくなる。


「セリカ、馬車を回して」


「かしこまりました」


 ケインがクエルの手を取り席を立つと、二人はリビングを後にする。


 後に続くフウに、ミレーヌが小声で声をかけた。


「フウ殿、何故ふたりの仲を邪魔したのだ?」


「嬢ちゃんと坊やを二人っきりにすると、色々とヤルだろ?」


「ヤルって、何をです?」


「そりゃお前、交尾に決まってんだろ」


「こっ……!?」


 ミレーヌは慌てて自分の口を押える。


 幸い、ケインに夢中のクエルには気づかれなかった。


「何のために私が、こんな家族で泊まるようなデカい部屋を取ったと思ってんだ」


「え? どういう事で?」


「坊やが嬢ちゃんに搾り取られないよう、配慮したんだよ」


 フウの説明にミレーヌは、ミイラのようになったケインを想像する。


 そして、クエルならやりかねないとミレーヌも思った。


「何してるの? 来ないのなら置いて行くわよ」


 部屋の外から嫌そうな顔をしたクエルが、フウとミレーヌを呼ぶ。


「ほれいくぞ剣聖ちゃん、ちゃんと見張ってないと坊やが嬢ちゃんに食われちまうぞ」


 フウはミレーヌを促すと、部屋を後にした。



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