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第七十四話 パーティー結成?


 フウがケインに冒険者パーティーを組みたいと話した瞬間。


 ヒュッ!


 パシッ!


「…………危ねぇな、嬢ちゃん」


 フウは、飛んできたフォークを目前で掴んでいた。


 クエルが手にしていたフォークを、フウに向かって投げつけたのだ。


 フォークを掴んでいなければ、大怪我をしていたところである。


「わたしのケインに手を出すなんて、良い度胸してるじゃない」


 もともとケインが絡む話にはキレやすいクエルであったが、今はその眼光からして理性が欠如しているような狂気を感じさせた。


 以前よりも、ケインへの独占欲が増しているのは明らかである。


「言ったわよね、事と次第によっては容赦しないって」


「落ち着けよ嬢ちゃん、別に坊やを取って食おうって訳じゃねぇんだ。 それと、その物騒な手刀を引っ込めてくれないか?」


 いつの間にか、フウの首筋にはセリカの手刀が突き付けられていた。


 クエルの命令ひとつで、フウの首を切り裂く事が出来る。


 沈黙と緊張感が場を支配する。


 それを破ったのはケインであった。


「クエル、これじゃフウさんの話が聞けないよ」


 ケインに言われ、クエルはセリカに目配せを送る。


 クエルの合図に、セリカはフウに突き付けていた手刀を戻した。


「助かったぜ坊や、これで話が進められるな」


 手刀を突き付けられていた首筋を擦りながら、フウは手に持ったフォークを回転させるとクエルの目の前にあるパンケーキに投げ返した。


「それでフウさん、ボクと冒険者パーティーを組みたいと言うのは、どういう事なんでしょうか?」


「坊や、わたしと初めて冒険者ギルドで会った時の事を覚えているか?」


「はい、確かあの時はサブギルドマスターのトバルさんに紹介されて、魔獣活性化対策の為にAランク冒険者のフウさんが呼ばれたと」


「表向きは……でしょ」


 クエルがつけ足しフウを見る。


 実際、フウの本来の目的は女神教の排除であった。


「その表向きの仕事が来たんだよ」


「仕事が来たって、どういう事ですかフウさん?」


「冒険者ギルド本部に、魔獣活性化の予兆よちょうがあると連絡が入ったんだ」


「魔獣活性化の予兆!?」


「まだ予兆って段階だが、連絡が来た以上わたしが調査に動かない訳にはいかないからな」


「魔獣退治はあなたの仕事でしょ、ケインを巻き込まないで」


 ケインを助けるために共闘したが、クエルは目の前のフウに対して不信感を抱いている。


 それを知ってか知らずか、フウはおどけたように肩をすくめてかぶりを振った。


「それが、坊やにも無関係って訳じゃないんだ」


「ボクに無関係じゃないって、どういう事ですか?」


「連絡をしてきた冒険者ギルド支部なんだがな、それがシルフィード領からなんだ」


「シルフィード領って、ケインの故郷!?」


「魔獣活性の予兆があるなんて、知りませんでした」


「坊やが知らなくても当然だろう、連絡が来たのは今日の昼過ぎだぜ」


 通常、他の街への連絡手段は人力での郵便や、鳩便はとびんでの手紙が普通である。


 情報伝達という事に関しては、魔道通信石まどうつうしんせきを持つ冒険者ギルドが圧倒的であった。


 その事から、魔獣活性の予兆の情報は速報という事になる。


「私ひとりで行っても良かったんだが坊やの故郷だろ、一声かけておこうと思ってな」


「声をかけるにしても、何でケインを冒険者パーティーに誘うんですか」


「坊やなら実力的に十分だ、それにシルフィード領の地理にも詳しいからな」


 紅茶をひと口すすり、フウはリラックスしたように椅子にもたれ掛かかった。


「……っで、どうする坊や? 一緒にパーティー組んで調査に行ってみるかい?」


 顎に指を当て、何ごとか考え始めたケインにクエルは嫌な予感がした。


 そして、それは的中する。


「フウさん、その調査にボクも同行どうこうさせてください」


「坊やなら、そう言うと思ったぜ」


「ケイン!?」


 胸の中でぎゅっと握り拳を固め、クエルは身を乗り出す。


「ケインが行く必要ありません」


「ごめんクエル、でも気になるんだ。 ボクの故郷でもあるし」


「その調査とやらに、わたしも同行させてもらっても良いかしら?」


「えっ!?」


 クエルたちの会話に突如とつじょ割り込むように少女の声が飛んできた。


 声のした方を見れば、口の周りをホイップクリームで汚したミレーヌの姿があった。


「剣聖ちゃん、申し出は嬉しいが、こいつは冒険者の仕事だぜ」


 パーティーを組むのならば、冒険者ギルドで登録をした冒険者でなければならない。


 忘れがちだがケインは、Dランク冒険者である。


「冒険者であれば良いのね。 なら問題ないわ」


 口元を汚すホイップクリームをテーブルナプキンで拭うと、ミレーヌは一枚のカードを取り出す。


 カードには、氏名『ミレーヌ=ソレイユ』 職業『剣士』


 そして、Fランク冒険者のマークが刻まれていた。


「まさか、冒険者用のギルドカード!? ミレーヌ、貴女いつの間に?」


「学園対抗戦が終わった後に作ったのよ」


 ミレーヌは女神教の神官ジヴァートとの戦いで、自身の強さが表面的な強さであったことを思い知った。


 型だけ一人前であり、実践不足を痛感する。


 そこで短絡的かもしれないが、実戦経験を積む機会を得るために冒険者登録をしたのであった。


「ランクは低いけれど同行出来る実力は十分あるはずよ、それにフウ殿が了承すればパーティーが組めるのでしょう」


「そりゃ組めるけどよ、剣聖ちゃん学校どうするんだ?」


「そうですよケイン、学校はどうするんですか?」


 フウの尻馬に乗るように、クエルがケインに詰め寄る。


「明日、ルシア先生に事情を話して休ませてもらうよ」


「わたしも休みをもらうわ、それに魔獣が本当に活性化して氾濫ともなれば一大事、ソレイユ家の令嬢として見過ごせん」


「それじゃ明日、二人とも学校が終わったら冒険者ギルドへ来てくれ。 そこで冒険者パーティーのメンバー登録をするから」


 フウが段取りを話している所に、クエルが割り込む。


「わたしも付いて行きます!」


「付いて来るって、嬢ちゃん冒険者じゃねえだろ」


「誰があなたのパーティーに入ると言いました!」


 フウを一喝すると、クエルはケインの腕に抱きつく。


「わたしはケインに付いて行くんです!」


「おいおい、ピクニックに行くわけじゃないんだぜ」


「そうだよクエル、危険かもしれない」


 クエルは瞳を潤ませると、ケインを上目づかいに見つめる。


「ケイン、わたしを守ってくれると言ったのは、ウソだったのですか?」


「ウソじゃないよ、でも……」


 ケインの言葉が口の中で立ち往生してしまう。


 その様子に見かねたフウが、助け舟を出す。


「坊やが困ってるじゃねえか、セリカお前の所のお嬢様だろ、止めてくれよ」


「お嬢様、あのような事が起きた後で、まだ病み上がりなのですから無茶な事はお控えください。 ソフィア様が心配いたします」


 いままで黙っていたセリカが、やんわりとクエルを説得する。


 だが、一度火がついたクエルは止められない。


 ケインに抱きついていたクエルは、ゆっくりとセリカに顔を向けた。


「……セリカ、お前に学園対抗戦での汚名返上のチャンスを与えよう。 旅に同行し、我を護衛せよ」


 クエルの言葉に、セリカは席を立つと姿勢を正し片手を胸に当て頭を下げる。


「かしこまりました。 クエルお嬢様」


「おい、お前が止めないでどうすんだよ」


「クエルお嬢様が汚名返上の機会を与えてくださったのだ。 ガーランド家に仕える使用人、いや、組織を上げて護衛をする」


「勘弁してくれよ、戦争しに行くわけじゃねえんだぞ」


 ガーランド家の使用人は、全てソフィア=ガーランドの私兵であり魔族である。


 その戦力は、一国に戦争を仕掛けられるほどであった。


 無論、セリカたちが魔族という事をフウが知るよしも無いが、その実力は見抜いていた。


「セリカ、必要最低限の少数精鋭のメンバーを選びなさい。 それと学園長にわたしとケインの休学申請、移動用の馬車と道具を手配しろ」


「かしこまりました」


 クエルの命令に、セリカが指をパチンッと鳴らすと、どこからともなくメイドたちが現れた。


「聞いての通りだ、学園に連絡を取れ、旅の馬車と道具を用意しろ」


 メイドたちはセリカの号令を受け、即座に行動を開始する。


「それじゃ私も屋敷に戻って旅の準備をするわ。 クエル、ケイン殿また明日、学園で会いましょう」


 ミレーヌは軽く手を振り、クエルたちを残して店を出て行く。


「はぁ、もう勝手にしてくれ」


 フウは、お手上げといった状態で額に手を当てると宙を振り仰いだ。


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