表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/49

異世界料理


「うおぉぉーーーー!!!!

 お見事!! お見事です!!!

 ノザキヒロト。ロックベアーを一発で斬り伏せました!!

 ロックベアーはダウンだーーーーーーー!!!!!」


 観客は歓声を上げる。歓声は鳴り止まなかった。

 俺は今まで張っていた気が切れてその場に膝をついた。


「拍手を! 勇敢なる剣闘士、ノザキヒロトに盛大な拍手を!!」


 観客達は惜しみない拍手を送った。

 俺は手を振り返す。

 気がつくと後ろにシャルルが立っていた。


「やるじゃない!」


「惚れただろ?」


「それはこの後しだいね」


 え!? これは脈あり??


「さあ、出るわよ!」


 そう言うとシャルルは赤ゲートに向かった。

 俺は立ち上がりシャルルの後をついて行った。


「もう一度、ノザキヒロトに盛大な拍手を!!」


 俺は堂々とゲートを通った。



・・・・・・



 よっしゃーーーー!!!!

 なんとか生き延びた!! 今回こそはもう駄目かと思った。武器は半信半疑だったが、ちゃんと効いてくれてよかった。

 

 それにしてもシャルルはどこに向かっているのだろう?

 俺たちは闘技場を出て、街の大通りに来ていた。

 締罰隊とは逆の方向だし、裁判所に行く様子でもない。

 俺はどこに連れて行かれるんだ?


 その答えはすぐに出た。

 シャルルは大通りにあった宿屋の前で止まったのだ。


 おいおい、マジかよ!

 やっぱりそういうパターンですか!?


 シャルルが宿屋に入った。俺もその後についていった。

 受付の人に何かの紙を渡した後、シャルルは1番手前の部屋に入っていった。


 俺は1つ深呼吸をした。

 やばい。ロックベアーと戦うのと同じくらい緊張する。

 いや、俺はロックベアーを倒したんだ!

 今回もいけるはず!!


 俺は勢いよく扉を開けた。



 シャルルは椅子に座って、ナイフとフォークを持っていた。

 

「じゃあ、よろしくね!」


 笑顔で言うシャルル。

 あれ? どういうこと??


「あなた、異世界から来たんでしょ。

 早く異世界の料理、作ってよ!」


 あっ、そういう落ちですか。

 分かってましたよ、それぐらい。

 別に期待なんかしてなかったし!


 待てよ。ということは・・・


「俺の試合を今日にしたのって、終わった後に料理を作らせる為とかじゃないよな?」


「そ、そうよ。

 あのままじゃ1週間程、締罰隊で生活しなくちゃいけなさそうだったから。

 当たり前じゃない!


 まさか、嘘でしたとかはないでしょうね」


 シャルルの睨みつけるが発動する。

 シャルルさん、殺気が漏れてますよ。


「そのかわり、私を満足させることができたら、なんでもひとつ言うことを聞いてあげるわ!」


 まるで私は偉いとでも言わんばかりに、シャルルは胸を張った。


 はぁ。なんで俺の人生はいつもこうなんだ。

 俺に選択肢はないのか?

 

 シャルルの睨みつけるがまた発動する。

 はいはい、作ればいいんでしょ。作れば。


 俺は台所の横にあった箱を開けた。

 中には野菜と肉が入っていた。隙間には氷がびっしりと詰め込まれている。

 この肉、ロックベアーの肉かな。

 台所には塩、胡椒、そして片栗粉のようなものがあった。


 よし、あれにしよう。


 俺は料理にとりかかった。



・・・・・・



 この部屋にはフライパンがあるのにコンロがなかった。

 IHのようになっているがスイッチがないのだ。


「なぁ、火ってどうやってつけるんだ」


「そうだった。あなた魔力還元できないのよね」


 ため息を吐きながらシャルルは言った。

 なんかムカつくな!

 

 シャルルは俺のことを全く気にすることなく、指先から火を出した。その火は台所のIHのようなところで留まった。

 なるほど! 魔法で料理するのか。

 俺が感心しているとシャルルが話しかけてきた。


「あなたって戦いなれしてるのね。

 結構やるじゃない」


「いやー、さっきのは偶然だよ」


 急に褒めるなよ。照れるじゃないか。

 まあ、こっちの世界に来る前は、暴走族のやつらからあの手この手で逃げ回っていたからな。

 もちろん殴り合いになったこともある。多勢に無勢でいつも負けていたが。

 それに比べれば、準備万端で一対一の戦いはまだやりやすかった。相手のことも知っていたし。


「しかも私が決めたことに一切反抗しないし。

 あなたってやっぱり変わってるわよね」


 確かに! 俺、こいつに振り回されてばっかりだな!

 死闘の直後に料理作っちゃってるよ!!


「ま、まあ。一応、命の恩人だしな」


 シャルルはそれを聞くとまた笑い始めた。

 俺の顔が赤くなるのを感じた。


「ほら、できたぞ!!」


 俺は完成した料理を皿に盛り付け、シャルルの前に運んだ。


「何これ?」


「揚げずに簡単フライドポテトだ!」


「フライドポテト?

 毒は入ってないわよね?」


 殺気のこもった視線がまた俺を貫く。


「入ってねぇよ!」


「まあ、毒になるようなものはそこにないしね。

 問題は味よ!」


 そう言うとシャルルはフォークを使ってフライドポテトを食べ始めた。途端にシャルルの目が輝いた。シャルルのフォークは止まらなかった。


「弟もこれ作ってやると、そんなふうに喜んで食ってたなぁ。

 いつもは揚げてるんだが、この世界での油の処理の仕方が分からなかったから今日は揚げ焼きにしてみた。これなら油も少なくて済むからな!」


 シャルルを見るとフォークが止まっていた。

 どうしたんだろう。

 顔が真っ赤だった。


「別に喜んでないし」


「なんだって?」


「別に喜んでないって言ってるの!」


 シャルルは怒っていたが先程のような殺気は感じられなかった。


「じゃあいらないのか?」


「いる」


「なんだよ、もっと大きな声で言えよ」


「いるって言ってるでしょ!」


 そう言うと、シャルルは残りのフライドポテトを一気に食べ尽くした。幸せそうな顔は隠せていなかった。


「ごちそうさまでした」


「ごちそうさまは言うんだな」


 俺は空になった皿をさげた。

 発言は素直じゃなかったが、美味しそうに食べてくれると、作ったかいがあったなと思ってしまう。

 こういうところが駄目なんだろうな、俺。


「いいわよ」


 シャルルが突然、許可を出した。


「何がだよ?」


「なんでもひとつ言うことを聞いてあげるって言ってるの!」


 シャルルは悔しそうに言った。


 マジか!?

 こいつのことだから、てっきり「満足しなかった」とか言って誤魔化すのかと思ってた。

 予想外の反応に少し驚いてしまったが願い事はもう決めていた。

 シャルルがこれを提案してくれたときに、真っ先に思いついていたのだ。


「それじゃあこの世界について教えてくれ!」


 シャルルはこの質問がくることが分かっていたようだった。


「やっぱりそれを聞くのね」


 そう呟くと、シャルルは考えるように数秒、目を閉じていたが、


「分かったわ。なんでも聞いて頂戴」


 と、今まで見せたことがないような真剣な表情で答えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ