↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化】白い結婚、最高です。  作者: 火野村志紀


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
59/82

59.過労

 煌びやかなダンスホール。

 周囲からの視線を浴びながら、ユリウスと向かい合って、手を握り合う。

 その握力の強さに思わず「痛いです」と文句を言うと、彼は「すまない」とすぐに力を緩めた。


「君と踊れるのが嬉しくて、舞い上がってしまったようだ」


 そう言って微笑む姿に、私も釣られて笑みを零す。

 そして、どこからか流れるピアノの甘い音色に合わせて踊り始める。

 失敗しないように、失敗しないように。

 緊張しながら踊っていると、ユリウスが穏やかな表情で私を見詰めていた。

 胸の辺りがじくじくと疼くような不思議な感覚。

 照れるから、私をそんなに見ないで欲しい。嬉しいから、私からこのまま目を逸らさないで欲しい。

 相反する二つの感情が、心の中でせめぎ合う。

 これは、この感情は何なのだろう……


「…………」


 私は目を覚まして、天井をぼんやりと見上げていた。

 どうやら夢を見ていたらしい。女性恐怖症ではないユリウスと踊る夢だ。

 あのまま覚めなければよかったのにと、何故か一瞬思ってしまった。


「アニス様、何か召し上がりたいものはありますか?」


 ずっと私の傍にいたらしいマリーに聞かれて、私は暫し悩んだ。

 頭痛は治まったものの、体は気怠くて食欲もあまりなかった。

 だが薬を飲む前に、何か食べた方がいいだろう。


「あ……」


 ユリウスの姿が、ふと脳裏に浮かんだ。

 記憶の中の彼は、私と一緒に何かを食べていて……

 私はそれを思い返しながら、ゆっくりと言葉を発した。


「スープ……」

「何のスープがよろしいでしょうか?」

「オニオングラタンスープが……食べたいです……」


 夜会の後、ユリウスと語らい合いながら食べたあの味が恋しくなった。


「かしこまりました。暫しの間お待ちください」

「ありがとうございます、マリーさん」

「……このようなことを言っては、いけないのかもしれませんが」

「?」

「アニス様をめいっぱい甘やかすチャンスが到来して、少しワクワクしております」


 マリーは椅子から立ち上がりながら、表情を変えずに言った。

 だが心なしか、その声は弾んでいるように聞こえる。

 マリーは「それでは、失礼します」と部屋から出て行った。

 ……本でも読んで待っていようかな。


「私としたことが、大事なことを忘れていました」


 マリーが部屋に戻って来た。

 そして本棚から本を数冊引き抜いて、ベッド脇のナイトテーブルに載せる。

 しかも私が読みたいと思っていた本ばかりだった。

 マリー、私の心を読んだ……?


「スープが出来上がるまで、こちらをお読みください」


 そう言い残して、再び部屋から出て行くマリー。

 メイド長ってすごい……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。