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馬鹿野郎の華麗なる日々  作者: ギャバン
プロローグ
2/6

そして転生へ

さて、話は少し前に遡ったりします。


転んで頭をぶつけた後、目が覚めるとそこは、真っ白な世界でした。


天井が無く、先もわからない。とにかく、見渡す限り真っ白な世界。そこに自分一人だけ座っていたのです。


「…ふむ」


柱の角に頭をぶつける。気を失う。目が覚めたら見たこともない場所。手の甲をつねってみる。


「…痛くないな」


結論として、これは…。


「夢だな!」

「違いますよ?」

「!?」


背後から、聞き覚えの無い女性の声が、自分の答えを否定する。びっくりして振り返ってみると、そこには、これまでの人生で見たこともないレベルの美女が立っていた。


立って…いた…ん?…立って…浮いてる…?浮いて…。


「浮いてる!?」

「驚くところはそこですか?甲斐性なし」

「そして脈絡もなく罵倒された!?」

初対面ですよね?何があったの?アノ日なの?

「…どちら様で?」

「ああ、申し遅れましたね。私は、あなた方の世界でいう女神で、ラーメルと申します」

「これはご丁寧に。俺、いや、自分は坂下雄一といいます」

「知ってます」

「…そうっすか」

「…ところで…」

ラーメル様はじろじろと俺を見る。何?惚れちゃった?

「神が目の前に居るというのに、何なのですかその姿勢は?」

違った。クレームだ。

俺はすぐに正座になり、姿勢を正した。

ラーメル様は満足げに頷き、説明を始めた。

「さて、貴方のミジンコにも劣る脳みそでは理解出来ないみたいですが、坂下雄一さん、貴方は死んでしまいました。享年三十五歳です」

「…はあ」

「死因は頭部による打撲。貴方のご両親もさぞや悲しんでおられるでしょう。ご自身の息子がバナナの皮とこんにゃくが原因で死んでしまったなんて。ご近所のいい笑い者でしょうね」

「すいませんでした」

「この親不孝者」

「死んでしまってすみませんでした!!」

もう、土下座する勢いですわ。

まあねえ、結婚もしないで、孝行らしい孝行もしてやってないし、せめて孫でも抱かせてやりたかったとは思っていたのだけども…。


それから暫く、この女神様に罵倒混じりのお説教を受けて現在に繋がるって事なんだけど、わからない事が一つある。


「あの…ラーメル様」

「…何ですか?汚物」

「何で俺、いや、自分はここまで責められているんですかね?」

現にこの女神様、俺の太ももを踵でグリグリと踏みつけてるし。

「わからないのですか?」

「わかりません」

わかるのは、俺がマゾではないということだけです。

「…そうですね。説明がまだでしたか…では」

ラーメル様は何やら呪文らしき言葉を紡ぐと、何もない空間に突然、液晶テレビが出現した。

「映像で見せた方が理解しやすいでしょう?」

そう言って指をならすと、テレビの電源がついた。そこには…。

「俺?」

生前の俺の姿が映っていた。

「貴方は三十五歳より後、七十五歳迄生きる予定でした」

って事は、後四十年は生きていけたのか。

あ、俺が五十の時に親父とお袋が死んだ。…んー…ん?あれ?

「俺って、結婚…」

「しませんよ?というか、出来ません。死ぬまで」

「…まじで?」

それからずっと、俺が死ぬまで見続けた。

結婚もせず、彼女もおらず、たった一人で朝起きて、ご飯食べて、夜寝る。

平和な人生であるけども、何と言うか…。

「寂しい人生だなおい」

いや、こんなのごまんとある人生の一つなんだろうけど、何と言うか自分がそうだとは思わなんだ。

「人の生から死迄、この神界で管理されています。誰が産まれ、どの様にして生き、誰と結ばれ、どの様にして死ぬか。あらかじめ決められています」


そして、ラーメル様は死んだ魂を振り分けたりする仕事を担っているとのこと。

しかも俺がいたらしい世界だけではなく、他の世界の魂も面倒見ているらしい。

そんな膨大な、想像できない程の数の魂を管理している中、俺みたいな予定外の魂が出現すると、恐ろしい程の年月練り上げた予定が大きく狂うそうで、神界に存在する作業が滅茶苦茶になってしまうそうな。


因みに、異世界転移とか、異世界転生とかは、予め他の神様と擦り合わせて行っているそう。俺のパターンは確率的に数千京分の一あるか無いからしい。


理不尽な気がしないでもないが、折角長い時間をかけて組んだ計画が、俺の存在一つで滅茶苦茶になってしまったら、罵倒の一つ位はしたくもなろう。甘んじて受けてやろうって気にもなる。あ、嘘です。踵に力を入れないで下さいませんか?


「問題なのは、貴方の今後の処遇なのですが…」

「はい」

「丁度ある世界に、存在しなければならない筈の魂があったのですが、どういう訳か出現が確認できないのです」

「産まれてなきゃいけないのに、産まれてないって事ですか?」

「その通り。恐らくは、貴方が予定外の死を迎えたせいで、神界のシステムがダウンしたのでしょうね…本当にこの…」

「本当に死んでしまってすみませんでした!!」

どこかの誰かに迷惑をかけてしまったらしい。

「…そこで、貴方はその魂の替わりに、そこの世界へと転生してもらいます。そこで…」

ラーメル様は穴の空いた箱をどこからか取り出した。

「一応決まり事で、こちらの都合で転生や転移をさせる際に、能力を与えるという決まりがあります。さあ、引きなさい」

箱をズイッと差し出してくるのだが…。

「座りながらだと、引きづらいんですけど?」

「座りながら引きなさい」

まじか…。

「…じゃあ…」

何とか座りながら箱に手を入れようとしたその時、

「!?」

目の前の箱がどういう理由か、突然爆発した。

そして、箱の中にあったのであろう様々な能力が書かれていたくじが、全て俺の身体に吸い込まれていった。

「……」

「……」

気まずい空気が流れる。え、どうなんのこれ?

「…では、転生を行います」

スルー!?まさかのスルーっすか!?



そして俺は、眩しい光に包まれていった。



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