事の顛末と叱られる男
やあ、俺の名前は坂下雄一。中小企業で働くしがない三十五歳のサラリーマンだ。
突然だけど、実は私、死んでしまいました。
ここで誰かを助けるために、身代わりになって死んだとか、不治の病を患って御臨終とかならまあ、自慢といかないまでも説明がしやすい死に方ではあるよね?
死亡原因は多分事故死だと思うけど、その死に方が何と言うか、まあ、間抜け以外の何物でもない。
その日は部屋の片付けをしていたんですよ。
部屋に散乱していたゴミを後ろ向きの姿勢で拾っていたところ、偶然足元にバナナの皮が落ちてまして、お約束通りに踏んでしまって、体勢を崩してしまいました。
あわや柱の角に頭をぶつけるってところで何とか踏ん張ったのですよ。反対の足で。それがいけなかった。
反対の足元には、何故かこんにゃくの欠片があったのですよ。多分、晩ごはんの食いかけだったかもしれません。まあ、そんな事はどうでもいいのですが。
で、全体重の乗った勢いで柱の角に後頭部を強打し、そこから記憶がございません。
ところで、何故私が死んだとか、こんな説明をしているのかと言うと…。
「聞いているのですか?この唐変木」
目の前にいらっしゃる透き通る様に美しい女性が、よく通る声で、丁寧に罵倒して下さってます。
私はそれを粛々と拝聴している訳です。正座で。あ、足が痺れて来た。
「あの…」
「何ですか?」
「足が痺れて来たので、崩していいっすか?」
「…殺しますよ?」
死んでますけど?




